1月クールの2作品のドラマで存在感を発揮している俳優・柄本佑。これまでどちらかというと異質な役どころを演じることが多かった柄本だが、主演ドラマ『心の傷を癒すということ』(NHK総合)では人情深い医師、吉高由里子主演のドラマ『知らなくていいコト』(日本テレビ系)では大人の色気漂うカメラマンを好演している。そうしたなか、にわかに巻き起こっているのが、これまでの個性派俳優のイメージとは異なる「柄本佑=イケメン」論争だ。

【写真】個性派それともイケメン!? ドラマでの柄本佑 吉高由里子と見つめ合う場面も

◆“癒やし系”と“色男”異質な善人像を同時期に演じわけた今クールのドラマ2作品

 主演ドラマ『心の傷を癒すということ』で柄本が演じたのは、プロ級のジャズピアノの腕前も持つ若手精神科医・安和隆役。阪神淡路大震災で被災者の心のケアに奔走した経歴があり、観えない傷と向き合う姿が観る者の心を揺さぶっている。その繊細な芝居にSNS上では、「佇まいだけであんなに説得力がある、何も語らなくても表情だけで物語っている」「話し方が本当に優しい」「柔らかな存在感がいい」「朴訥としていて口調も性格も穏やかだけど芯の強さ、逞しさを感じる」と絶賛。メガネ姿も相まった知的さと優しい笑顔、そして“はにかみ屋”という性格からにじみ出る人情味から「目にも耳にも優しく、なんだか癒される」と今クールナンバーワンの“癒し系イケメン”として視聴者の心をつかんでいる。

 一方、『知らなくていいコト』では主人公・真壁ケイト(吉高由里子)の元彼である動物カメラマンの尾高由一郎を熱演中。ケイトが殺人犯である乃十阿徹(小林薫)の娘だと知りながらプロポーズした過去があり、傷つくケイトを慰める心までイケメンな尾高に「大人の色気というか、表情とか話し方がツボすぎる」「完全に沼にハマってしまった…今期で一番のキャラだ」「あの雰囲気と優しい声に癒されたい」とすっかりメロメロになっている人が続出している。

 以前より演技力には定評のあった佑だが、「特徴的な顔だと思うのに、2作品でぜんぜん違う。同じ人とは到底信じられない。安らぎと安心感のある優しい声音がいい」「表情の動きが地味でほぼ同じ顔しているのに別人」と“癒し系”と“色男”という2つの異なる“萌え”要素で注目を集めているのが、これまでには見られなかった俳優・柄本佑へのリアクションだ。

◆「怖い」「猟奇的」…異質なイメージが強かった“怪優”のサラブレッド

 偉大なる怪優・柄本明が父親、女優・角替和枝が母親の、言わずと知れた二世俳優である佑。2012年には奥田瑛二・安藤和津夫妻の次女である女優・安藤サクラと結婚したことでもよく知られている。弟の柄本時生も俳優として活躍している芸能一家。兄弟そろって父親にそっくりな顔立ちから、世に出た頃は「DNAの濃さ」をまざまざと感じさせてくれたものだ。

 さらにその遺伝子は芝居にもしっかりと受け継がれており、役者としての強みとも言える個性的な風貌と演技力で、今やヒールからキモ男、コメディリリーフ、はては猟奇犯罪者といった役作りが難しいキャラクターまで違和感なくこなす唯一無二のポジションを確立している。映画『臨場・劇場版』(2012年)では無差別通り魔事件の犯人、映画『GONINサーガ』(2015年)では事件を追う身元不明のルポライターを演じて、父親譲りの怪優ぶりを見せつけた。そして多くの視聴者の目に届いた出演作としてはNHK連続テレビ小説『あさが来た』(2016年)だろうか。はつ(宮崎あおい)の許嫁・惣兵衛役として初登場したシーンでは正座しながら貧乏ゆすりをするといった怪演で強烈なインパクトを残しながら、波瀾万丈な人生の末の夫唱婦随が涙を誘ったことは記憶に新しい。

 17歳でデビュー以来、数多くの作品に出演し、現在33歳。難しい役作りが必要なキャラクターも演じられるその実力から犯罪者役も多く務めている。それだけに「怖い」、「猟奇的」、「気持ち悪い」といった印象を残すことも少なくなかった。ところが今クールで出演中の2つのドラマをきっかけに、「柄本佑=イケメン論争」がネットでにわかに熱を帯びている。特に『知らなくていいコト』では関連ワードに「イケメン」が紐づくほどで、「吉高由里子と付き合う前の車でのキスシーン、佑がイケメン過ぎて惚れた」「大人の色気というか、表情とか話し方とか、ツボすぎる」とその一挙一動に女性視聴者からの歓声が上がっている。

◆瞬時にイケメンかイケメンじゃないかを演じわける凄み

 さらに視聴者の声を追ってみると、「こんなにイケメンなイメージがなかった」「2話でアレ!?と思って3話で確信に変わった。佑ってイケメン」と、ドラマのスタート当初からにはなかったイケメン評価が、回を重ねるごとに上がっているようだ。恋愛にたとえるならば、これまで意識していなかった身近な異性の魅力に「あれっ? なんかカッコいい…」と、ふとした瞬間に気づいてしまったようなものだろうか。また、「決してイケメンじゃないのに、めちゃくちゃかっこよくてキュンとする」「だんだんイケメンにみえてくる不思議」というコメントからも、「柄本佑=イケメン」と安易に結論付けていなかったからこそ、そのギャップや変化を楽しめている様子が伺える。

 福山雅治や木村拓哉といったイケメンを地で行く俳優は、たとえ犯罪者を演じてもカッコいい。しかし作品によってガラリとイメージの違うアプローチをする柄本は、そのルックスの評価さえも演じる役によって覆してしまう。ときには気持ち悪いと拒否反応を起こさせるほどの強烈な役も演じる一方で、今作のように心や振る舞いがイケメンな役どころでは、女性視聴者を萌えさせる。そんな役者としての底知れぬ凄みが、今回の「イケメン論争」を呼んでいるのではないだろうか。

 ちなみに『知らなくていいコト』では、「ケイトに呼ばれたときの『ん?』ていう声の出し方とトーンが好き」「尾高さんに『バカタレ』と言われたい」など、声のイケメンぶりについてのコメントも多い。弟・時生がドキュメンタリー番組『クロスロード』(テレビ東京系)に出演した際に、俳優で身を立てることを決めたときに父親から言われたのは「声を生かせ」のひと言だったと明かしているが、その教えの通り、役によってしっかりと「声」を使い分けてきたことも、このイケメン論争にひと役買っているようだ。

 父親・柄本明もまた好人物から犯罪者までこなす演技派だが、イケメンの側面からの評価は寡聞にして知らない。そんな父親にそっくりな風貌である佑にイケメンというワードが加わったのは、役者としてまさに最強と言えるのではないだろうか。今回の役どころの反響とともに、佑に対する「イケメン論争」がどのように発展していくのか、最終回まで楽しみに見守りたい。

(文/児玉澄子)