木曜ミステリー『科捜研の女』(テレビ朝日)と言えば、言わずと知れた人気長寿ドラマシリーズ。20周年を迎えた昨年4月からは1年間にわたる通年放送がされており、今年1月からその締めくくりとなる「冬シーズン」が始まっている。シリーズ19作目を重ねて安定の視聴率をキープしている同作だが、ここ最近Twitterユーザーを賑わせているのがそのエッジの効いた脚本。主演の沢口靖子が演じるマリコの、時として「どうかしている」動向がトレンド入りする事態になっているのだ。

【写真】カツオを抱えて番組をアピールするマリコ

■沢口靖子が被り物で「おかかマリコ」に変身 Twitterで歓喜するファン

 1月23日放送の「科捜研の女」第27話のサブタイトルは「マリコの動画チャンネル」。YouTubeならぬ「PyuuTube」(ピューチューブ)をテーマにした内容で、容疑者のアリバイは"カメラを止めない"料理動画だった。

 そこで実際にアリバイが成立するかを検証するため、「私もやってみる」とPyuuTuberデビューを決めるマリコ。1時間の"カメラを止めない"料理に挑戦するが、科捜研ファンの間ではマリコの料理ド下手ぶりは有名なため、ヒヤヒヤする視聴者が続出。さらになんでもおかかを振りかけるという設定のPyuuTuberにカツオぶしの被り物をさせられ、"おかかマリコ"に変身するシーンでは「おかかマリコwww 大草原不可避」「おかかマリコにご飯吹いた」とTwitterユーザーも爆笑が止まらなかったようだ。

 一方、同話ではマリコが信頼を寄せる土門刑事(内藤剛志)が3話ぶりに復帰するというファンを歓喜させるエピソードも。こうした盛りだくさんの内容に加え、YouTubeや映画『カメラを止めるな』をイジりつつ、殺人事件の謎を解明していくという見事な演出と脚本は視聴者を大いに沸かせ、放送中またたく間にTwitterトレンド入りする注目を集めた。

 実はここ最近、話題が絶えない『科捜研の女』。その翌週の28話「筋肉は嘘をつかない/マリコVSダイエット達人!! 10キロ減量法が暴く殺人犯」も、なかやまきんに君がまさかの役どころを演じたコメディ色が強い回でTwitterを大いに沸かせた。

 ここ1年のシーズン19だけでも、バンクシーをパロった回で"マリコ画伯"の壊滅的な芸術センスが披露された第2話や、テレビ東京の人気番組を想起させる「マリコ、池の水を全て抜く!?」という予告からの「抜かないのかよ!」というオチの第9話、ぬか床をお散歩させてしまう謎のマリコワールドが全開となった第15話などなど、ツッコミどころ満載のエピソードは枚挙にいとまがない。想定を超える内容とマリコの動向に視聴者は目が離せないようだ。
 もちろん視聴率はどの放送回も安定の10%超えをキープしている。

■時事ネタをうまく盛り込んだ脚本力、安定視聴率におごることなく「新しさ」に挑戦

 現行のドラマシリーズとしては最長寿の「科捜研の女」だが、もともとテレビ朝日はシリーズものを得意としている。その人気を支えている重要なポイントが、時事ネタを巧みに盛り込んだ脚本力にある。

 通年放送中のシーズン19では、「マリコの相棒に殺人容疑!? 神出鬼没の爆弾ドローン」(第8話)、「マリコの爆弾大捜索…犯人が観光案内するアプリの謎」(第9話)、「人質マリコ救出作戦~銃撃戦に携帯ゲーム機で応戦!?~」(18話)などスマホアプリや携帯ゲーム、ドローンを盛り込んだエピソードが放送されている。

 またシーズン18の第5話「フリマアプリの達人/凶器をフリマアプリで売る女!? マリコ決死の爆買い!!」は、「何を買うんだ、マリコ!」とそのサブタイトルだけでもTwitterで大きな話題に。以前より『科捜研の女』の爆発力あるサブタイトルに夢中になるファンは多く、放送日にはラテ欄の画像がTwitterを賑わせることもしばしばある。

 そもそも刑事ものや医療ものといったシリーズドラマに強いテレビ朝日は、脚本に時事ネタを盛り込むことを得意としている。昨年放送された『ドクターX ~外科医・大門未知子~』(2019年10-12月)のシリーズ6作目でも、AIを軸にさまざまなエピソードが展開された。

 時事ネタは幅広い世代の視聴者の関心事であり、事実、沢口も昨年のインタビューで「最近、小中学生からファンレターをいただくなど、若いファンの方が増えている実感がありました」と語っている。

“テレビ朝日の刑事もの"というと中高年の視聴者をイメージしがちだが、たしかな脚本力と話題性のあるテーマで見応えのあるストーリーを紡いできた『科捜研の女』は、若者にもしっかり訴求している全世代網羅型のドラマと言えるだろう。

■沢口靖子の「画面映え」する美貌、番組を支える女優としての力量と存在感

 もちろん20年以上の人気を支え続けているのが、マリコを演じる沢口靖子の女優としての力量だ。

 主人公・榊マリコは仕事一筋の法医学研究員。上司に媚びず、部下を甘やかさず、事件の真相に近づくと周囲の会話をガン無視するほどまっしぐらに。少々常識外れなところがあるものの、仕事は完璧。そして前述のように料理下手、芸術オンチといった面が愛らしいキャラクターでもある。

 ちなみに沢口はシーズン16の放送直前インタビューで、「初期は科学を盲信していましたが、最近は人を優しく見つめるようになりました」と、長きにわたって演じ続けてきたマリコの成長を語っている。

 一方で20年にわたって一向に変わらないのが、マリコ=沢口靖子の美貌だ。各放送回に必ずといっていいほど組み込まれる目線ありの「マリコカット」は画面映えも十分で、Twitterでは毎週といっていいほど「相変わらず美しい…」というため息混じりの投稿が相次ぐ。現在54歳と聞いて驚く人は多いだろう。

 女優・沢口靖子のもはやミステリアスの域に達している存在性も、どこかマリコとかぶるところがある。プライベートを明かすことは極めて少なく、目立った熱愛報道もない清潔感。それでいて、"お嬢さま女優"のイメージを覆すコミカルな設定も真正面から演じきる。マリコの真面目だからこそ「どうかしている」面白さは、沢口靖子だから成立しうると言っても過言ではない。

■20周年を機に公式Twitterを開設、視聴者目線のプロモーションで若年層も巻き込む

 ここ1年の視聴者のさらなる盛り上がりに一役買っているのが、公式Twitter・科捜研の女(をみる女)の存在だ。20年の歴史を持つ作品ながら、Twitterの開設は昨年4月のシーズン19スタートのタイミング。しかも運営するのは、とある科捜研ファン(=一般視聴者)。その番組への熱狂ぶりに、プロデューサーが依頼した人物であるという。

 名前などは明かされていないが、土門刑事が復帰した瞬間には140字めいっぱいを使って「涙」で溢れさせ感涙し、「帰ってきてくれたことがこんな嬉しいのは何で! この現象はなんて言うの!! (中略)私は公式ですけどガチオタです…いろいろ嬉しい、喋りすぎてごめんなさい」と抑えきれない気持ちをTwitterにぶつけるなど、視聴者と同じ目線で番組愛をつぶさに投稿しているところからも、真の「科捜研オタ」であることは間違いなさそうだ。

 また公式YouTubeでは、目玉企画として沢口靖子のオリジナル動画「沢口サースデー」を毎週木曜に配信。沢口の自撮りご挨拶や、画像加工アプリを使った衝撃動画、正解者に「つまらないもの」をプレゼントするクイズ企画など、真面目な沢口=マリコのキャラクターを活かしたツッコミどころ満載が好評を博している。

 またLINEアカウントではオフショットを配信中。こうしたSNS施策もまた、若者層を取り込む成果となったと言えるだろう。

 20年にわたる長寿ドラマながら、「謎解き+科学捜査」の妙をしっかり抑えつつ、さらに新しい要素を追求して攻めまくっている『科捜研の女』。安定した視聴率の背景には高視聴率におごらず、変化を恐れないチャレンジ精神がある。シーズン19は3月に終了。ファンの間では、長らくつかず離れずの絆で結ばれてきたマリコと土門の関係(どもマリコンビ)が、この1年をかけて進展するのでは!?と注目されてきたが果たして…。これから起こる物語の山場を楽しみにしたい。