福岡県大川市は480年以上続く家具の街。確かな技術でこだわりを持って家具作りを続けている。そんな職人たちの技術とセンスを証明するために、同市では『ネコ家具』プロジェクトを設立。同市の家具店の職人が、すべての技を出して妥協なく『ネコ家具』を作り上げた。現在、世界中から注文が来ている『ネコ家具』の今について、このプロジェクトを立ち上げた同市役所インテリア課の石橋広通氏と、実際に『ネコ家具』を制作している広松木工の北洋平氏に話を聞いた。

【写真】「気持ちいいにゃー」と声が聞こえる…ベッド、ソファーなど『ネコ家具』でくつろぐネコフォトギャラリー

◆プロジェクト設立も、当初職人たちは『猫にも家具は必要なのか?』

 『ネコ家具』プロジェクトは2017年に大川家具を全国に知ってもらうことを目的に設立。だが、プロジェクトを立ち上げた際、同市の家具職人からなかなか理解してもらえなかった。
「『ネコ家具』プロジェクトは、大川家具を日本中に知ってもらうためのプロモーションとしてスタートしました。既存の家具をサイズダウンして作ることで、家具職人の技術の高さを証明することにも繋がると考えました。スタート時点で2社の家具メーカーに打診しましたが、最初は懐疑的でした。ただ、こちらの企画の意図、趣旨をしっかり説明し、ご理解していただき、『ネコ家具』の製作に入ってからは、職人の目の色が変わりましたね」(石橋氏)

「正直なところ、猫にも家具が必要なのかなと思いました。猫アレルギーなので猫に興味はありませんでしたが、今は犬より猫を飼っている人口のほうが多いということに驚きました。そのなかで、全くの特注ではなく弊社で製作している既存の商品をそのままサイズダウンして作るのであれば、会社のPRにもなるので良いかなと思いました。今までも家具を縮小して子供家具にすることなどは、弊社でもやっていたので」(北氏)

◆職人は妥協なく家具製作 市は世界へと発信

『ネコ家具』制作にあたり、人間用のサイズダウンだけでなく、さまざまな工夫が取り入れられた。
「猫のサイズ感を考え、何パーセントに縮小するのが良いか考えました。そこで割り出した数字が「42%」になりました。そして、人間以上に匂いに敏感な猫が嫌がらないようなホルムアルデヒドが少ない天然塗料を使用しました。天然木と帆布の強い生地を使用し、人間サイズをそのまま縮小し、猫用だからといって妥協していない作りの部分がポイントですね。もっとも、猫に聞いてはいませんが…(笑)」(北氏)

 完成した『ネコ家具』の写真と動画を撮影。「撮影は、スタッフがネコじゃらしで懸命に気を引いていましたが、全く思い通りに行きませんでした(笑)」(石橋氏)とハプニングもありながら、それらを発表すると大きな反響があったという。
「YouTubeで話題となり、公開後1ヶ月足らずで40万回弱再生され、現在までに77万回以上の再生されています。自治体のPRは、これまでテレビ・雑誌が主流でしたが、『ネコ家具』に関してはSNSでの話題が世界中に広がり、後追いで既存メディアの取材がどんどん入ってきました。まさにネコの手も借りたいほどです」(石橋氏)

「思った以上の反響で驚きました。12万円の価格にも関わらず、国内外から問い合わせをたくさん頂きました。実際、購入したお客様からも猫がソファの上で寛ぐ様子を動画で撮って送ってもらうな、どお客様にも猫にも満足度は高いようです」(北氏)

◆世界中に『ネコ家具』を広めたい

 この評判もあり、設立から3年目となる現在、11社が参加。CMやYouTube動画を次々とアップする一方、大川市の「ふるさと納税返戻品」に『ネコ家具』をラインアップしたり、『ネコ家具EXPO!』『ネコ家具LAB!!』というイベントの開催、さらに専用ホームページの作成と多言語化対応するなど、大川家具を広めるための取り組みはまだまだ続いている。
「参加企業が増えてきたので、企業に作ってもらうネコ家具のチョイス、カラーリングでは他社とのバランスを心がけています。また、(上記のような取り組みを)計画的にタイミングよくPRできるよう腐心しました。もっともっと、世界中に『ネコ家具』、『大川家具』を広めたいと考えています」(石橋氏)

 この考えは、家具職人も同様だ。
「『ネコ家具』は海外にも送れるサイズなので、世界に『ネコ家具』と『大川』の名前が広まってくれると嬉しいです。ついでに広松木工の名前も(笑)」(北氏)