40年余の歴史を持つガンダムシリーズにおいて、“ガンダムファン”となる入口はアニメだけでなく“ゲーム”の存在も大きくなっているという。今回、スマホゲーム『ガンダムブレイカーモバイル(以下、ガンブレ)』のPVに触発され、ヴィネット(ミニジオラマ)を制作したトップモデラー・いべまに氏を取材。氏の代名詞ともなっている匠の技術“超遠近法”について詳しく話を聞いた。

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■超遠近法は「だまし絵」の巨匠、マウリッツ・エッシャー氏の作品に起因

――このジオラマを制作した理由を教えてください。

【いべまに】この作品を制作した理由は、YouTubeで『ガンブレ』のPVを見て、ガンダムアルテミスが最後にするキメポーズが“超遠近法”で再現するのにピッタリの題材だと思ったからです。

――まるでアニメシリーズのOPかのようなPVですよね。

【いべまに】PVを見たときは「ガンダムシリーズの新作か?」とまんまと騙され、スマホゲームのPVと知って2度驚きました(笑)。しかも、ラストでガンダムアルテミスとCodeφが対峙するシーンは、モデラー魂を触発されるカッコ良さでした。

――いべまにさんは、本作でも実践されている超遠近法の技法で有名です。これは一体どんな制作法ですか?

【いべまに】超遠近法は、手前に見える部分にスケールの大きいパーツを用い、奥に見える部位ほど小さいスケールのパーツを組み合わせて作ります。私の作品のイメージは、ずっと登っている階段が描かれた建物の絵などで有名な「だまし絵」の巨匠、マウリッツ・エッシャー氏の作品に起因するところがあります。

――未発売キットをどのようにして再現したか教えてください。

【いべまに】ガンブレはゲーム内ガシャでガンプラパーツを集めてミキシングし、自分好みのガンプラを作り上げて戦うゲームです。PVに登場する各機体も部分的に意匠の異なるパーツもありますが、現在発売されているガンプラをミキシングするとほぼカタチになります。ガンダムアルテミスはデスティニーガンダムとガンダムXのパーツミキシングで制作しています。両肩・手甲・足甲等に新規設定パーツが採用されているため、当該部分をプラ板からスクラッチで作り起こしました。CodeφはPVでも強大な力を秘めたライバル機としてイメージ上も大きく描かれているため、模型誌付録の大きなGセルフヘッドディスプレイを改造、プラ板で胸部を制作し背景の引き立て役として配しました。ちなみに、ガンダムアルテミス、Codeφともに発光部分には蛍光塗料を採用しているので、ブラックライトを当てると光る仕組みにしました。

■カッコよく見えれば“何でもあり”なのが超遠近法の面白さ

――来年は「ガンダムゲーム35周年」です。ガンダムゲームはプレイしますか?

【いべまに】普段、ゲーム音痴なのでスマホゲームは全くやりませんが、ガンブレには惹かれるものがあったので、アプリをダウンロードしてやってみました。

――ガンダムワールドの好きな機体を制作できるので自由度がありますね。

【いべまに】とても奥の深いゲームなのに、ド素人の自分でも十分に楽しめますね。ちょうど始めた日が毎日ガシャ10連のイベントの期間にも重なったので、毎日たくさんのパーツを集めることができました。自分のようなミキシングビルダーにとっては、ゲームをしなくてもミキシングのテストパターンがスマホで出来ることはとても有難いです!

――ガンダムアルテミスとCodeφを再現してみて気に入っている点はどこですか?

【いべまに】イメージに近いものが出来たことですね。ガンダムアルテミスのポージングや描かれ方がとても「バリっている」ので、多分アニメーターの大張(正己)さんが携わっていらっしゃるんじゃないかと思いました。大張さんの描かれるポーズは超遠近法と相性が良いと勝手に思っています(後にTwitterで大張さんがPVの監督をなさっていることを知りました(笑))。

――逆に、難しかった部分、こだわった部分はどこですか?

【いべまに】PVのラストシーンをヴィネット仕立てで仕上げるということを決めていたのですが、ガンダムアルテミスが宇宙空間に浮かんでいる感じをどう出していくか、Codeφの強大で妖しい雰囲気をどう出すかに悩みました。アルテミスの浮遊感は、支持棒やスタンドを使わずに、サテライトキャノン端部を直に背景台座に固定することで表現。Codeφの妖しさは、あえて上半身だけを背景に配し、妖炎をイメージした綿で、それぞれ表現できたのではないかと思っています。

――いべまにさんと言えば超遠近法ですが、強調した部分や、独自のテクニックがあれば教えてください。

【いべまに】頭部・上半身胴体・左腕・左足にHGパーツを、右腕・武器・右足・腰部にMGパーツを使用してミキシングし、遠近感を誇張してPVイメージに寄せました。超遠近法の技法は特に難しい独自のテクニックなどは必要としません。2D(平面)で見たままの大きさに見合うパーツを見繕ってミキシングし、3D化(立体化)しているだけです。これが正解というものはありませんし、あえてバランスを崩したりもしています。“カッコよく見えれば何でもあり”なのが超遠近法作品の面白さであり、「ガンプラは自由だ!」の1つのカタチだと思います。

――アニメシーンを超遠近法で再現する醍醐味は何ですか?

【いべまに】平面に描かれた「絵」に潜む、見え方の「嘘」を立体化することで再現できるのが超遠近法の一番の楽しみであり醍醐味だと思います。超遠近法で制作した作品を見ると画像として見ただけでは見えてこない「嘘」の部分が見られるので、機会があれば是非生の作品も見ていただきたいです。

――PVを再現したヴィネット以外に、SDを含め3体制作したそうですね。

【いべまに】はい。ヴィネット制作をする過程でガンダムアルテミスに愛着が湧いたこともあり、超遠近法だけでなく、「いろいろなパターンのガンダムアルテミスを作ってみたい!」と思い制作してみました。SDデスティニーの頭部をミキシングして制作したSDガンダムアルテミス、RGデスティニーの肢体を組み込んだHGガンダムアルテミス、そしてMGも仕上げました。“ガンダムアルテミス愛”のおかげで先月のお小遣いはすべてキット購入代に消えていきましたが…(苦笑)。ガンダムアルテミスはとても魅力的な機体だと思いますので、是非キット化を望むところです!

――次はどんな超遠近法を制作予定ですか?

【いべまに】そろそろ今年の『ガンダムビルダーワールドカップ(GBWC)』に向けて始動開始したいと思っています。が、いいネタが降りてこなくて悩んでいます(笑)。

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