日本文学振興会は15日、『第162回芥川龍之介賞・直木三十五賞』の選考会を東京・築地「新喜楽」で開き、芥川賞は古川真人氏(31)の『背高泡立草(せいたかあわだちそう)』(『すばる』十月号掲載)、直木賞は川越宗一氏(41)『熱源』(文藝春秋)に決定。会見場に現れた古川氏は「うれしさというのはまだないです。おそらく2日後とか3日後とか、生活に日常に返っていくと、風呂でシャンプーをしていて、ほくそ笑むとかになるんでしょうけど…」と率直な感想を打ち明けた。

【写真】ノミネート一覧 湊かなえら『落日』など

 古川氏は1988年7月29日福岡県福岡市生まれ。第一薬科大学付属高等学校卒。2016年『縫わんばならん』で第48回新潮新人賞を受賞しデビュー。同作は第156回芥川賞候補に選出。その後も『四時過ぎの船』で第157回、『ラッコの家』で第161回の同賞にノミネートされ、今回が四度目の正直で受賞となった。

 今回の受賞を受けて「2016年に新潮で新人賞を取って、初めて担当編集の方と打ち合わせをする機会があったのですが、打ち合わせが終わって、帰りの地下鉄に向かう時に、オレこれからどうなっちゃうんだろう、なんでこうなっちゃったんだろうみたいな。悪い意味ではなくて、自分が急にとんでもない場所に出ていっているという気持ちを覚えた。今も気持ちとしてはそういった心境です」と打ち明けた。

 以前のインタビューで「芥川賞は取りたくないけど、取らないといけない関門」と語っていたことを指摘されると「その時は年末の事前取材の時に言ったと思うんですけど、ずっと落ちているもんですから、そんなもんだろうみたいな気持ちでした。でも、いざ取ると『まじかよ、困ったな』という。取ったら取ったで、あわあわしているというのが正直な心境です」とぶっちゃけ。慣れないスーツ姿については「革靴はすごく痛い。ネクタイは久しぶりに巻いたんですけど、結局、編集の人にこの辺ですよってやってもらった」と笑わせた。

 会見までに受賞を伝えた相手については「待っていた時間があったんですけど、トイレしている時に高校の同級生から電話があって『トイレしている』と言いました」とにっこり。「自分が候補になるたびに喜んでくれている人というのがいまして、そういう人たちが喜んでくれているんだろうなと思うと、やっぱりこれはうれしいことなんだろうなという風にわかってはいる感じです」とかみしめるように語っていた。

 両賞は1935(昭和10)年に制定。芥川賞は新聞・雑誌(同人雑誌を含む)に発表された純文学短編作品、直木賞は新聞・雑誌(同)・単行本として発表された短編および長編の大衆文芸作品の中から優れた作品に贈られる。前者は主に無名・新進作家、後者は無名・新進・中堅作家が対象となる。受賞者には正賞として時計、副賞として賞金100万円が与えられる。

■第162回芥川龍之介賞 候補作(掲載誌)※作者五十音順・敬称略
木村友祐『幼な子の聖戦』(すばる十一月号)
高尾長良『音に聞く』(文學界九月号)
千葉雅也『デッドライン』(新潮九月号)
乗代雄介『最高の任務』(群像十二月号)
古川真人『背高泡立草』(すばる十月号)

■第162回直木三十五賞 候補作(出版社)
小川哲『嘘と聖典』(早川書房)
川越宗一『熱源』(文藝春秋)
呉勝浩『スワン』(KADOKAWA)
誉田哲也『背中の蜘蛛』(双葉社)
湊かなえ『落日』(角川春樹事務所)

■選考委員
【芥川賞】小川洋子、奥泉光、川上弘美、島田雅彦、堀江敏幸、松浦寿輝、宮本輝、山田詠美、吉田修一
【直木賞】浅田次郎、伊集院静、角田光代、北方謙三、桐野夏生、高村薫、林真理子、宮城谷昌光、宮部みゆき
※五十音順・敬称略