フワフワの毛並みと鋭いまなざし、そして太くて長いしっぽ。可愛らしさと野性味が共存したユキヒョウの子どもが、旭川市・旭山動物園で公開中だ。もともと寒冷地に生息するだけに、北海道の雪景色にもすっかり馴染んでいる様子。ネットやSNSでは「しっぽをくわえた」ユキヒョウの写真が出回り、カワイイと人気だが、その実態や理由とは? 同園の飼育員・大西敏文さんに聞いた。

【写真】巣穴からひょっこり! お母さんのしっぽにじゃれる! 生まれたてユキヒョウの赤ちゃん

■「フフフ、フフフ」と鼻鳴らし、母子で親愛の情

 中央アジアの山岳地帯に生息するユキヒョウは、絶滅危急種とされるヒョウの仲間。寒冷地に住む彼らは足の裏まで毛でおおわれ、雪や岩の上を移動するのに適している。太く長い尾が特徴で、走るときにバランスをとったり、横たわったときに体に巻きつけて寒さから身を守っている。旭山動物園では、2019年7月に母親・ジーマから生まれた子ども(メス)が一般公開中。13日、子どもの愛称が、多くの一般応募の中から選ばれた「ユーリ」に決定したことが発表された。

――7月に生まれた子どもについて教えてください。

【大西さん】出生時の体重は推定500グラムほど。10月21日の測定で6.45キロ、現在は推定10キロ前後と思われます。

――ユキヒョウはどんな生態なのでしょうか?

【大西さん】繁殖期には「ニャオーン」と大声で鳴き、異性を呼びます。子は不安なときに「ピー!」と小鳥のような高い声で鳴き、母親を呼びます。「フフフ、フフフ」と鼻を鳴らすのは親愛の表現。母子間やオス・メスの間でよく聞かれます。

――「フフフ」というのは聞いてみたいですね!

【大西さん】母子で「フフフ、フフフ」と鼻鳴らしをして親愛の情を示しているのを見ると、やっぱり親子愛を感じますね。育児中は特に、母親ジーマは飼育係や隣の部屋のアムールヒョウに対して攻撃的になるんです。子を守る本能が働いていると思われます。

■「自分のしっぽをくわえる」のは本当か?

――ネットなどでは、「自分のしっぽをくわえたユキヒョウ」の写真が人気。旭山動物園のユキヒョウたちは、しっぽをくわえるのでしょうか?

【大西さん】当園のユキヒョウは、尾をくわえているところを見たことはありません。子が母親の尾にじゃれついたり、母親がわざと猫じゃらしのように尾を動かして遊んであげたりすることはあります。

――自分の尾をくわえるというのは、なぜですかね?

【大西さん】遊びの一種だろうと思われます。

――なるほど。ちなみに、人に馴れることはあるのですか?

【大西さん】小さい頃から人の手によって育てられれば人に慣れるかもしれませんが、旭山動物園では動物本来の野性味を失わないよう、人慣れさせるような飼育はしていません。ですので、おとなのユキヒョウは飼育係に対して檻越しに威嚇してきます。

■第一子の死を無駄にせず、出産前の準備に注力

――ユキヒョウは絶滅の恐れがあるとしてレッドリストに載っていますが、やはり繁殖は難しいのでしょうか?

【大西さん】2015年に母親ジーマから生まれた子は、出生の翌日に死亡してしまいました。ジーマが産箱に慣れていなかったことが一因と考えられます。産箱の環境に慣れさせ、2016年に生まれた子は無事に生育。2019年も出産の3ヵ月前から産箱に慣れさせて備えたところ、ここまで無事生育しています。

――子どもの飼育については?

【大西さん】親がしっかり子育てしていれば、飼育係がするべきことは少ないんです。朝、放飼場に出て、夕方に寝室に帰ってくる…という動きを今のうちから覚えさせておくぐらいですね。

――すくすく成長中のユーリへの思いを教えてください。

【大西さん】母親ジーマにとっては2回目の子育て。前回の子はオスでしたが、今回生まれたメスの子どもも元気に育ってほしいです。

――来園者へメッセージをお願いします。

【大西さん】中央アジアの高山帯に生息するユキヒョウの子育てを、間近で観察できるのはとても貴重なことです。ユキヒョウのような大型肉食獣は、とても小さく可愛らしい子を産みます。しかし彼らはあっという間に成長し、2~3歳で親離れして単独生活を始めます。それから先は、自分の力で獲物である草食獣を仕留めて生きていかなければなりません。厳しい自然を生きる、彼らのたくましさを感じていただければうれしいです。