会社の社長をカード付きのポテトチップスにする「社長チップス」。“どんなときでも、もらうとちょっぴりテンションが上がる”お菓子のチカラを提唱するESSPRIDEの社長・西川世一氏が考案した同商品は、いまや名刺を凌駕するエグゼクティブのコミュニケーションツールとして注目を集めている。“プロ野球”“Jリーグ”“仮面ライダー”などさまざまな“チップス”が発売されているが、ビジネスに活かせる初のチップスに迫った。

【画像】社長チップスに封入される社長カードの裏面には“戦闘能力”が数値で記載される

■発想の根底にダンボール製造会社を経営していた父への想い

 お菓子を囲んで話をするとすぐに打ち解けられる――。お菓子は単にモノではなく、人と人とを繋ぐ“橋渡し”役を担ってくれる。そんなお菓子のチカラを活用し、社長の人となりを知ってもらうツールにしたのが、「ポテトチップス」×「社長」の「社長チップス」。ポテトチップスだけに、経営における挫折や苦労話にもスポットをあてて“社長の塩味(CEO)味”ストーリーをカードにして紹介することもできるなど、名刺を渡するよりも、インパクトと親しみやすさを演出できることが好評。ESSPRIDEでは、これまでに350社以上の社長チップスを作り、取引先など関係先の心を打ち抜いている。

 そんな社長チップスの発想は、西川氏の父が愛知県でダンボールを製造する会社「西川紙器製作所」を経営していたところから始まる。「ダンボールを作る」という事業内容は、同業者との差別化が難しく、熾烈な価格競争の渦に巻き込まれていくなか、西川氏は事業に個性を持たせるために、菓子に新しい価値をのせる商品プロデュースをスタートさせる。こうした発想を取り入れ、会社を生まれ変わらせようと懸命な努力をしているなか、「会社とは、事業内容がクローズアップされるのはもちろんですが、いろいろな困難があるなか、強い信念を持って闘っている経営者の方々の顔や個性が見えれば、より共感してくれるパートナ会社や仲間が増えるのではないか」(西川氏)という考えを強くし、ある企画を提案した。

 それが全国中小企業の社長たちに、出会い、学び、刺激を提供する「社長ヒーロー化プロジェクト」だ。お互いの事業拡大を図るその集まりのなかで、ひとつのツールであり、大きな武器となるのが、社長チップス。西川氏は「社長チップスの大きな目的は、そこで汗水流してがんばる社長さんにスポットを当てたいという意図があります。その根底には、父が経営者として必死に生きてきた姿を見てきた僕の過去がある。大切なものを守り、挑戦を続ける社長を応援したい。そうすることで、未来が切り開けるという希望もありました」と語る。

■デジタル化が進む現代にこそ有効なアナログのコミュニケーションツール

 社長チップスに付いてくるカードには、社長の顔写真はもちろん、プロフィール、自己採点による能力測定が数値化されているなど遊び心も満載。「僕らが小さいころは、世の中のヒーローと言われている人たちはみんなポテトチップスのカードになっていました。とくに僕は野球小僧だったので、小さいころから“野球選手のカード付きチップス”のカードを見ながら、選手に憧れていました。全国の社長さんたちにも、親近感を持ってもらいつつ、子どもたちが憧れる存在になってくれればという思いもあります」。

 こうしたアナログのコミュニケーションツールは、あらゆるものがデジタル化されていく現代にこそ有効だと西川氏は断言する。「いまはSNSなどが発展して、情報入手の手段は格段に多くなっています。ツールが多ければ多いほど武器になります。そうしたなか、社長チップスはあえてアナログである“もの”にこだわっています。そこに、ダジャレも含めて、いわゆる企業HPに掲載されるプロフィールのように、カッコいい情報だけではなく、ツッコミどころ満載のネタ的なものも載せるんです。作った社長からは、コミュニケーションを円滑に進めるための良いツールになっているという評判をよく聞きます」。

 2016年4月に開発された社長チップスは、じわじわと話題が広がり、「社長ヒーロー化プロジェクト」の認知拡大や参加者増への貢献を果している。現在会員は400人ほど。スタート時は、社長の活動支援や成長支援という側面が際立っていたが「だんだんと社会課題に向き合うようなプロジェクトになってきています」と西川氏はその変化を述べる。

■“プロ野球”を上回るビジネスシーンでの人気ぶり?

 西川氏も、自身の社長チップスを精力的に配布している。最初は「なにこれ」という反応がほとんどだったが、確実に名刺よりインパクトがあり、「コミュニケーションの距離は圧倒的に近くなった」という。とくにそれによる失敗談といったものはないそうだ。西川氏は「『僕のチップスなんていいです』っていう控えめな経営者は多いんです。でも、そんな人たちどんどん巻き込んでいきたい」と熱い思いを吐露する。

 父の背中を見ていたからこそ、たどり着いた社長チップスの発想。すでに商標登録も済ませており、一部のビジネスシーンにおいては、“プロ野球”や“仮面ライダー”を上回るほどの人気ぶり。さらなる知名度の拡大をめざしていく。「社長を応援する構想がどんどん広がっていってしまっている」と苦笑いを浮かべる西川氏だが、話を聞いていると“人の魅力”が、ビジネスにおいてなによりも大切なのだと実感させられる。
(文/磯部正和)