お正月と言えば“書き初め”。新年に毛筆で文字を書くことを指す日本の伝統行事で、お正月の特別番組では、芸能人が書き初めをすることも多い。デジタルが身近になるとともに、どんどん文字を書く機会も減り、学校での書道の授業時間も減少傾向にあるという。そんな中、“書道アーティスト”として活動する原愛梨の提示する“書道アート”が話題だ。一見絵に見えるが、実はよく見ると文字で構成されており、減少しつつある“文字を書く”、“毛筆に触れる”ことの素晴らしさを伝えたいという思いから生まれたんだという。過去に最年少文部科学大臣賞を受賞した実績も持つ彼女が、あえて書を崩してアートで表現する理由とは? アートが誕生した経緯、書道への想いを聞いた。

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■「誰よりも練習して、一番になりたかった」就職先の銀行でも筆を持つことに

――最初に書道を始めたのは、2歳の時と伺いました。

【原 愛梨】そうなんです。3歳年上の姉がやることをなんでも真似したくて。書道もその一つで、私から「やりたい」と母にお願いしたのが最初でした。

――その後、最年少で文部科学大臣賞を受賞するほどの腕前に。毎日、かなり練習されたのでは?

【原 愛梨】誰よりも書かないと一番になれないと思ったので、1日12時間以上練習することもありましたね。厳密に言うと高校2年生の時に一度挫折しているんですけど……それ以外は辞めたいと思ったことは一度もなくて。大学も書道科に進んで勉強を続けました。

――書道を生業にしようと思ったのはいつ頃でしょうか?

【原 愛梨】高校の時から想いはあって、大学在学中も書道を活かした仕事ができないかと考えていました。でも、家族に「1度は就職して社会を知ったほうがいい」と言われて。銀行員だった母や姉と同じように、銀行に就職したんです。

――その間も書道は続けていたんですか?
【原 愛梨】はい。銀行員をしながら師匠の所に通っていました。実は銀行でも、途中から業務中に筆を持つことが多くなりました。

――どういうことですか⁉(笑)

【原 愛梨】お客様に送る封書は、普通は宛名をシールを貼るんですが、ある時上司に頼まれて手書きで書いたんです。そうしたら受け取ったお客様がすごく喜んでくださって。それがきっかけで毎回書くようになったり、お客様へのハガキに一筆添えたりと、業務中ひたすら書いていました(笑)。

――銀行でも、書道の才能が活かせたんですね。

【原 愛梨】私自身もお客様の笑顔を見て、文字を書いただけでこんなに喜んでくれるなんて、やっぱり書には力があるんだって改めて実感しました。やっぱり書道をやりたいという想いがどんどん強くなって、家族にも泣きながらお願いして、今の道に進むことを決めました。

■「書道をより身近に感じて欲しい」という思いから生まれた“書”と“絵”の融合

――職業として書道の先生という道もあったと思いますが、“書道家アーティスト”を選んだのはなぜでしょうか?

【原 愛梨】まず、人に教えるよりも自分で極めていきたい気持ちが根底にあって。それに、誰かに1対1で向き合って教えるよりも、書道の魅力をより多くの人に知っていただく活動の方がやりたいことに近かったんです。

――書道アートが生まれたのはいつ頃ですか?

【原 愛梨】2年ぐらい前ですね。書道を身近に感じて欲しいと思っていたのと、日本の美しい文化を海の向こうの方にも見ていただけるにはどうしたらいいかなと考えたんです。「日本語だと伝わらないけど、絵なら伝わるんじゃない?」と思って。文字を崩して絵にすることによって、書道に親しみを持っていただけるのではないかと考えました。

――最初に書いたのはどんな作品だったのでしょうか?

【原 愛梨】鶴です。書道と日本の文化を同時に伝えるのに、“昔話”がぴったりなんじゃないかと思って。『鶴の恩返し』をテーマに、頭と胴体の部分をタイトル、羽の部分に「むかしむかしあるところに~」という物語を入れて書きました。


■大好きな野球とのコラボが大きな転機に 選手の誕生日をお祝いする気持ちからアートが誕生

――書道アートで野球選手を描いた作品が大きな話題になりました。誕生した経緯を教えてもらえますか?

【原 愛梨】元々野球が好きで、地元の福岡ソフトバンクホークスのファンだったんです。去年の5月に、大好きな高橋純平選手の誕生日のお祝いをしたくて、フォームを真似て書いてみたんです。Twitterにアップしたら、高橋選手が「それください!」って声をかけてくださって。

――それは嬉しいですね!

【原 愛梨】ビックリしましたし、喜んでいただけて本当に嬉しかったです! それからシーズン中、ヒーローインタビューの選手の野球アートをアップするようになりました。野球はほぼ毎日試合があるので、けっこう大変でした(笑)。

――反響は大きかったですか?

【原 愛梨】野球ファンのフォロワーさんが増えたのもそうなんですが、アートを見て野球に興味が出たと言ってくださった方もいたのには驚きました。この1年くらい、書道の“心を動かす力”に驚かされることばかりです。

――昨年は、ソフトバンクホークスのファンフェスティバルで、Tシャツもデザインされていますよね。

【原 愛梨】鷹の羽を選手の名前で形作ってデザインしました。ファンフェスティバルで選手の皆さんも着てくださって、本当に夢のような時間でした。あの時見た景色は、この先もずっと忘れないと思います。


■デジタルツールのSNSを活用 アナログな書道と掛け合わせることでチャンスに

――最近はテレビ出演も増えていますが、反響はいかがですか?

【原 愛梨】ありがたいことにたくさんのお問い合わせをいただいています。『ワイドナショー』に出演させていただいた時は、放送後、Twitterのフォロワー数が倍になっていて「見間違い⁉」って驚きました。

――それはすごいですね!

【原 愛梨】そうなんです。でも一生懸命頑張って1万人まで増えたフォロワーが、たった一回の放送で一気に倍になって…「あれー?」って思いもありました(笑)。もちろん嬉しかったんですけどね! テレビの影響力すごいな~って痛感しました。

――動画配信サービスで配信もされていましたが、テレビとの違いは感じましたか?

【原 愛梨】幅広い方に一気に広がるテレビに対し、配信は見てくれる方とリアルタイムに会話ができるのが大きいなと思います。ファンの方をより身近に感じられましたし、どういう配信が好まれるのか勉強にもなったので、また違った良さがあると思います。

――デジタルのツールを使いつつ、アナログな手書き文字を発信するアンバランスさもおもしろいですね。

【原 愛梨】そうですね。書道と高校の国語の教員免許を持っているのですが、実習に行った時も書道の授業数が減っているのを感じました。逆に若い子たちのそばには、デジタルのツールは当たり前のようにあるので、配信やSNSを使って発信することに意味があるのかなと思っています。

――改めて、原さんが思う書道の魅力とは?

【原 愛梨】デジタルの文字にももちろん利点はあるんですけど、手書きすることによって、漢字一文字一文字にある意味に思いをしたためることができるんですよね。無から作品を生み出す喜びを感じられることが、書の魅力だと思います。

――書道の魅力は、書道アートにも通じるのでしょうか?

【原 愛梨】そうですね。広く気軽に興味を持ってもらいたいと思ってはじめた書道アートですが、筆圧や太さを変えたり、墨の量などによってかすれさせることで、やさしさや強さを表せたり、人となりも表現できるところが魅力だと思います。

――原さんの生み出すアートは、筆ペンで書かれているのも特徴ですよね。

【原 愛梨】はい。あえて、書道用の筆ではなく、ぺんてるさんの筆ペンを使っています。みなさんが気軽に筆を持つきっかけになれたら嬉しいなって思って。実際に「やってみた」っていう声が届くこともあって、「この仕事をしていて良かったな」と実感できる瞬間ですね。


■書道の魅力を世界に広げたい 2020年は五輪選手のアートに挑戦⁉

――お正月は書き初めイベントも多いと思いますが、改めて起源や意味を教えてもらえますでしょうか?

【原 愛梨】諸説あるとは思うのですが、書き初めは平安時代から続いていて、もともとは歌を書いていたようですが、寺子屋の開始とともに庶民の皆さんにも“書”が広まったようですね。1月2日に書くことで、物事が長続きしたり、上達するという言い伝えがあって、新年の目標や抱負を書くことが“書初め”となっていったようです。

――原さんも、年始は書き初めのお仕事が?

【原 愛梨】ありがたいことに今年は元旦に横浜、その後福岡と大阪で書き初めのパフォーマンスイベントに出ることになっています。昨年は地元の福岡だけだったので、広がりを感じます。

――今後、目指していきたい形はありますか?

【原 愛梨】一番の目標は、海外に書道アートを広めていくことです。書の魅力を、世界に発信していきたいですね。

――今までに行ったことは?

【原 愛梨】シンガポールと中国で、路上パフォーマンスをやったことがあります。その時はアートではなく、書いてほしい文字を聞いて書くスタイルでした。今後、アメリカやフランス…もっといろいろな国へ行って、反応を見てみたいです。

――では最後に、2020年の目標を教えてください!

【原 愛梨】今年は東京で五輪が開催されるので、私の夢に向けてチャンスがたくさんあると思っています。世界に選手の書道アートに挑戦したいですね。今後も、より多くの方に書道の魅力を伝えていけたらと思っています。