今年、朝ドラ『なつぞら』(NHK総合)、『俺の話は長い』(日本テレビ系)などで、ビジュアルからオーラまで含めた圧倒的な演技力で視聴者を魅了した17歳の若手女優・清原果耶。オリコンの『2019年 ブレイク女優ランキング』では見事1位を獲得し、世代別では10代、30代、50代で1位、20代と40代でも2位と各世代が支持。つまり全世代から注目を集めており、近年まれに見る逸材との声が業界内外からあがっている。19年、一躍メインストリームに駆け上がった清原果耶。近年、国民的女優は生まれにくいとされているが、この17歳は令和時代、ニュータイプの“シン・国民的女優”となり得るのではないか。

【写真】出世作『透明なゆりかご』“白衣の天使”姿の清原果耶

■モデルとして活躍し18年に頭角、19年についにブレイク

 清原果耶が本格的に芸能活動を開始したのは15年。三井不動産グループ、アステラス製薬の2社のCMに起用され、当時から「あの美少女は誰だ?」と注目を集めていた。同年にファッション誌『nicola』(新潮社)の専属モデル、18年からは『Seventeen』(集英社)の専属モデルを務め、昨年は『全国高校サッカー選手権大会』応援マネージャーに就任した。女優デビューは15年の朝ドラ『あさが来た』。ほか『放送90年 大河ファンタジー 精霊の守り人』(NHK総合)では綾瀬はるか演じるヒロインの少女時代を好演し、映画では『3月のライオン』『ちはやふる-結び-』など話題作に出演してきた。

「そんな彼女を、“すごい若手女優がいる”と視聴者に知らしめたのが18年の初主演ドラマ『透明なゆりかご』(NHK総合)」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。同作は准看護学科に通う高校生だった原作者の沖田氏が、看護師見習いとして産婦人科医院で勤務した実体験をもとにした作品で、ただ生命が産まれるだけの幸せな場所ではない産婦人科の闇、そこからこぼれる光を描いたドキュメンタリー風のヒューマンドラマだ。

「『中絶をした後、胎児のかけらを集めて瓶に詰める』『女子高生が一人お風呂場で出産』などのショッキングなシーンも描かれており、例えば第1話では不倫の末に出産した患者の赤ちゃんが退院後すぐ死亡した際、それが事故だったのか、虐待だったのか、結論は視聴者に投げかけられ、余波を残して終わりに。だが、清原さん演じるヒロインは、希望的な空想でその闇に光を投げかけます。過酷な現実が描かれたにも関わらず爽快感を与えており、それは清原さんの存在感と演技力、どちらが欠けていても成立しなかった」(衣輪氏)

 19年は『なつぞら』『俺の話は長い』などに出演。SNSでは視聴者から「清原果耶の演技力、半端ない」「『なつぞら』と『俺の話~』のギャップがすごい」「好感度的にはほぼ主役」など好意的な意見が多く寄せられており、『2019年 ブレイク女優ランキング』1位は誰もが納得できる結果だった。

■内外からアンチがほぼ見られない特異性。10年に1度の“スター候補”

 清原果耶の特徴は、作り手からも観る側からも絶大な支持を得ていることだ。例えば『2019年 ブレイク女優ランキング』に寄せられたユーザーの声を抜粋すると「演技も上手いし透明感もすごくて」(滋賀県/10代・女性)、「彼女が主演を務めた『蛍草』を視聴したが、演技力に圧倒されたから」(埼玉県/30代・男性)、「可愛さの中に凛とした強さもあり、芯が通ってる感じがする」(神奈川県/50代・女性)など世代を超えて高い評価の声が多く集まっている。

「作り手側、役者側からの評価も高い。清原さんにお話をうかがったところ、山田孝之さんがプロデュースした19年1月公開の映画『デイアンドナイト』では、あの名優・山田孝之さんから『清原さん自身が(演じている)菜々だった』『清原さんは(僕が考える)菜々そのもの』と言ってもらえたと、恥ずかしそうに話されていました。また民放プロデューサーはその潜在力を指して『NHKの秘蔵っ子』『今後、出ていただけるならぜひお願いしたい』などと述べています」(衣輪氏)

 また、テレビ解説者でコラムニストの木村隆志氏も、彼女という素材を大切に使うスタッフについて「『~ゆりかご』でも、主演だけれど主演じゃない。朝ドラのように、みんなが主役を盛り立てるような感じがないところが、逆にいいのではないか。主演にだけ脚光が当たらないように、実に繊細に、上手に演出しているように感じます。たとえば清原さんの撮り方。安藤玉恵さんや平岩紙さん(いずれもゲスト出演)たちの素晴らしい演技を映した後、カメラはその演技を目の当たりにした、清原さんのリアクションを映す。その表情には素の16歳らしさが表れ、それはそのままドラマのテーマにつながっています」と解説。制作者や多くの識者も彼女の存在に注目している。

 つまり、制作側、役者側、観る側、評価する側と、清原果耶には内外からのアンチがほとんど見られない。素材の良さ、潜在的な能力に対して、足を引っ張る要素がない。人前に出る仕事であるにもかかわらず、木村氏が語るように、「主演だけれど主演じゃない」という自然体の奥ゆかしさも併せ持っており、“出る杭は打たれる”という状況になりづらい。ルックスと演技力の評価も高く、現状では国民的女優の最右翼ともいえるかもしれない。

■大スターが生まれにくい細分化の時代に、国民的に愛されていく可能性

 では、国民的女優の条件とは何だろう。国民の誰からも広く愛される。同じタイプの女優と並ばずに1人で作品の看板を背負い立つ。正統派、清純派として並び立つ存在がいない。誰にも近くない唯一無二の立ち位置を形成している。などの要素が挙げられる。

 そんな条件を兼ね備える女優といえば、60年代では『青い山脈』『伊豆の踊子』など多くの名作に主演し、“サユリスト”と呼ばれるファンを生んだ吉永小百合。70年代ではアイドル歌手としてヒットを連発する一方、大映ドラマ『赤い』シリーズなどで女優としても存在感を放った山口百恵さん。80年代では、最高55.3%という空前の視聴率を記録した朝ドラ『澪つくし』(NHK総合)でのヒロイン役で一躍その名を知らしめた沢口靖子などの名が挙がるだろう。しかし、90年代~00年代以降においては、多様性の時代に入り、趣味の細分化の流れもあり、国民的女優と呼ばれるような女優が生まれにくい時代になった。アンチがそれほど見当たらないという意味でいえば、仲間由紀恵や綾瀬はるかなどが近い存在かもしれない。

「“国民的”という言葉が軽々しく使われる風潮はあまり好きではありませんが、清原さんからはその片鱗を感じます。しかしながら、国民的女優となると“大スター”という条件も必須となる。好みが細分化した今、大スターが生まれる土壌は皆無に等しい。大スター不在の令和の芸能界、大スターならずとも、自然な形で国民的女優としての席に滑り込める女優、それが清原果耶さんではないか。視聴者の目も肥えるなか、“通”から『本物』と愛され、コア層からやがて全体に広がり、圧倒的な社会的地位を獲得した例もある。そんな『シン・ゴジラ』のような作品になぞらえて、スター不在の現代版の国民的女優=“シン・国民的女優”と言ってしまってもいいのではないか」(衣輪氏)

 清原果耶の今年の活躍ぶりからは、大女優へと育っていく未来が予感される。間違いなく10年に1人の逸材であり、絶対的なヒロインの素養を備えている大女優のたまごと言っても過言ではない。その才能の一端を今年開花させた清原果耶。2020年は彼女にとって、さらなる高みに歩みを進める大事な年になることだろう。
(文/武者小路卍丸)