SNSを中心に再現性高い“アイドルオタクあるある”の動画を投稿している末吉9太郎さん。「それな」「泣いた」「沸いた」など、動画には“推し”を応援する人々の間で用いられる独特な表現が盛り込まれ、「こういう人めっちゃいる」「再現性が高すぎる」と話題に。動画再生数は累計1.5億回を突破し、実際にアイドルとして活動する芸能人からも共感・反響を得ている。

【動画】「握手会待機列でのマウント」「食費をけずるオタク」…9太郎が表現するアイドルオタクの世界観

 注目すべきは、9太郎さん自身もれっきとした“アイドル”であるということ。ボーイズユニットCUBERSのメンバーで、2019年5月にはつんく♂作詞・作曲でメジャーデビューも果たしている。アイドルであり、アイドルオタクでもあることで共感を得ている…それは、“推し”とそのファンをつなぐ新たな立ち位置といってもよいのではないか。

■素を出した“オタクあるある動画”に「これじゃん!」と味をしめて

 ハロー!プロジェクトの大ファンで、生粋のアイドオタクを自称する9太郎さん。今年の夏から「アイドルオタクあるある」のモノマネ動画をTwitterやTikTokなどにアップし始めた。それらの動画には様々な“推し”のファンたちだけではなく、元HKTの指原莉乃をはじめ、Da-iCEの工藤大輝、和田颯、そしてモーニング娘。の元メンバーからの反応も。「リツイートやいいねが来たときは手が震えて…まさに夢のような出来事が起こっているようでした」と振り返る。

――なぜSNSに“オタクあるある”動画を投稿しようと思ったのでしょうか。

【9太郎】去年の10月くらいからオタクあるあるとは関係ない動画をアップし始めていたんです。僕が公園でただただ大福を食べている動画とか(笑)。バズりたいなと思ってたんですけど、全然伸びなかった。そういうのをずっと続けている中、今年の8月頃、動画のネタがないなぁって時に、「オタクの方が特典会でアイドルと会うまで」の様子を真似した動画を上げてみようとふと思ったんです。軽い気持ちでやってみたら、すごくたくさんの方が見てくれて「これじゃん!」と味をしめて(笑)。それから毎日そういうテイストの動画をあげてます。

――反響を受けて、方向性が定まったわけですね。編集作業もご自身で行なっているとのことですが、動画をあげるまでってどのくらいの時間がかかっているんですか?

【9太郎】ネタで悩むときはめっちゃ悩むんですけど、編集自体は文字入れなんかも含めて20~30分ですね。

――ネタはひねり出して考えている?

【9太郎】僕はもともとアイドルオタクなので、根本があの姿なんです。現場(アイドルのコンサート会場や握手会など、実際にアイドルを見て楽しむことが出来る場所)に行って、ファンの方達の姿からインスピレーションももらっているし、最近はSNSのDMで情報が送られてくるようになりました。“オタク仲間にこんなマウントを取られました!”とか、“推しが卒業を発表したのでぜひこれをネタにしてください!”って情報提供がくるんです(笑)。

――さまざまなところからアイデアを得ているわけですね。

【9太郎】そうですね。CUBERSのアー写が解禁されたときはアー写が解禁されたときのオタク動画もあげました。最近は僕自身のグループ活動ともリンクさせています。

■ネットならではの独特な表現…実は「それな」が苦手だった

――9太郎さんの動画には「それな」というセリフがキャッチーに使われてますよね。若い人が使う言葉を上手に扱ってるなと。

【9太郎】実は僕「それな」って言葉が苦手だったんです。

――えっ!

【9太郎】若い子とかが言っているのを見て「全然『それな』じゃないじゃん!」って思ってました。でもいつの日からかかわいい言葉だなって思えてきて。動画の中でも特別意識はせず使っていたんですけど、見てる人がそこに注目してくださるようになって、今ではマストで入れてます。

――ここでも反応を見て、自覚的に入れるようになったんですね。

【9太郎】反応は見ますね。ちょっと前だと“マウント系”というか、オタク同士で悪口を言い合う動画も作ってたんですけど、それよりは推しに対してとにかく愛を持って接している姿をアップした方が反響も良くなってきているなとか。

――アイドルオタク同士ってマウントを取っちゃうものなんでですか?

【9太郎】僕自身も取っちゃってますね(笑)。最近芸能人の方にSNSをフォローしていただくことも多くて。昔から応援していたアイドルの方がフォローしてくれたので「○○時代から知ってましたよ」とリプしたら、いろんなファンの方から「9太郎もマウント取ってんじゃん」って指摘されて。僕、無意識にやっていたんです(笑)。

――なるほど(笑)。確かにたくさんの芸能人の方が注目していますよね。9太郎さんはこの現状をどう受け止めていますか?

【9太郎】フォローされた時はめちゃめちゃ沸きます。元モーニング娘。の田中れいなさんが、僕の投稿に「いいね」してくれたときなんか沸き散らかしましたね。そして皆さんとても優しいんです。

――それは9太郎が発信する動画に対する世間の純粋な評価とも思えますが。“推し”とそのファンの方たちをつなぐような、とても貴重な立ち位置に感じます。

【9太郎】そうなれていたら、うれしいです! 1つ思うのは、アイドルの皆さんも僕と同じでオタクの視点を持たれている方が多いんじゃないかなと。パフォーマンスでファンの皆さんに沸いてもらえるように「今、ここ見て!」っていう見せ場を作っているときも、その視点を意識することは必要だと思うからです。

■学校が嫌でも、いじめられても「アイドルになるからいいやと思えた」

――ここからは9太郎さんの過去の話を。アイドルに心を射抜かれたのはいつなんですか?

【9太郎】幼稚園の時にクラスの発表会で女の子がモーニング娘。さんの「LOVEマシーン」を踊ってて、その時初めてモーニング娘。さんのことを知りました。初めてコンサートに行ったのは小学4年の時の後藤真希さんのソロコンサートです。そこから本格的にハロプロを聞きまくって…。もうズブズブのオタクです。

――当時の9太郎さんにとってそのアイドルたちはどんな存在だったんでしょう?

【9太郎】僕、学校にお友達がどちゃくそにいなかったんですよ。いじめられていたので、アイドルしか楽しみがなかった。モーニング娘。さんの映像を見たり週末にコンサートに行ったりすることだけが生きがいでした。でも僕はいつかアイドルになるから、学校はなんとなく行けばいいかなくらいに思っていましたね。いじめられてはいたけど、ふさぎ込む感じではなかったです。

――いじめられているという感覚があって、そう思えるのは強いですね。

【9太郎】学校は嫌でしたけどね。でもアイドルになるからいいやって思っていたし、アイドルだけを楽しみに生きていました。なのでアイドルがいてくれなかったら相当しんどかったと思います。

■人気が出ないなら“環境から”アイドルに「最終目標はモー娘。」

――そこから時を経て、本格的にアイドルを目指すも8年間オーディションに落ち続けたそうですね。その間も「アイドルになる」っていう思いは揺るがなかったですか?

【9太郎】一回も心は折れなかったですね。ヤバイですよね、8年間も落ち続けたら一回は折れろよって話ですけど(笑)。でも、余裕でアイドルになれると思っていたし、アイドル以外の人生が一切想像できなかったんです。でも現実はなかなか受からないので、だったら環境からアイドルになろうと思ってブログを始めました。それとライブハウスで月に1回のライブも始めて。お客さん誰もいないって日もあったんですけど、ライブして写真を撮ってブログをあげるっていう活動を1年間続けました。そのURLをいろんな事務所に送っていたら、今のマネージャーが見つけてくれて。


――現在では念願叶ってのアイドル活動をされてますが、今の現状をどう受け止めてますか?

【9太郎】僕が憧れたアイドルは中野サンプラザだとか、日本武道館だとか横浜アリーナだとか、そんな会場でやられている方々なので、デビューしたことに対しての満足感とかはないですね。まだまだ“超上”を目指しています。CUBERSとして、それらの会場に立ちたい。それと個人的にはモーニング娘。さんになりたい。

――モー娘。になる?

【9太郎】はい。昔、岡村隆史(ナインティナイン)がモーニング娘。さんに混ざってライブをしていたけど、あれがめっちゃ羨ましくて! 最近だと女優の松岡茉優さんも一緒にパフォーマンスしているんです。だから僕が人気者になればアップフロントプロモーション(モーニング娘。の所属事務所)の方も許してくれると思うので。そのために頑張ってます。

――目標の頂点はそこなんですか?

【9太郎】1番はそれですね。

■「隙がない子のほうが好き」アイドルの理想はいかに“プロみ”があるか

――9太郎さんの理想のアイドル像を教えてください。

【9太郎】賢くてプロみ(プロ意識が高い)があって、ステージ上で隙がない子が好きです。1番尊敬しているのが、元°C-uteの鈴木愛理さん。本当にステージ上で隙がないんです。ライブ終わりに暗くなってはける時の姿もダラっとしないで隙を感じさせないんです。見られている意識がものすごいんですよね。

――9太郎さんもステージ上でそういう存在になりたいですか?

【9太郎】そうですね。出来てるかはわからないですけど、ステージ上では隙を作らないようにしています。それこそ恋愛禁止も自分に課してるので。友達もいないし、恋愛もしていないので、どんどん人間として欠落していってるんですけどね。アイドルとしては大丈夫な自信があるけど、イチ人間としてはヤバい気がします。未だに友達がいないんですよ。

――休日はアイドル現場に駆けつけ握手会に参加されていると聞きました。今でもですか?

【9太郎】はい。明日(取材日の翌日)もアンジュルムさんの握手会があるので行こうかと。

――その界隈の握手会に参加したら声掛けられたりして、やり難いことはないですか?

【9太郎】たまに声掛けてくださる人もいるけど、僕はなにより握手会を楽しみたいのであまり関係ないですね。こないだもアンジュルムさんの全員と握手してめっちゃニヤニヤしながら階段を降りていたら、ファンの方が「9太郎くんですよね?」って話しかけてくださって。結果、僕はニヤニヤしてる恥ずかしい姿を見られたわけですけど、それでも構わない。楽しみたいという気持ちが勝ります。

――有名になってモーニング娘。さんとコラボするのが最終目標と仰っていました。それくらい認知されると、コラボするのと引き換えに本当に握手会には参加し難い状況になるかと予想できます。その時はどうしますか?

【9太郎】それはつらいですね…。あのガンガンに剥がされる感じがすごく楽しいのに…。うん、でもその状況になっても軽く帽子くらい被って握手会には行くと思います。そのくらい、アイドルの握手会は楽しいんですよ。好きなグループのメンバー全員と握手するときなんて心を強く持たないと記憶がぶっ飛ぶんです。なので、これからも強い心を持って僕は参加し続けます。