子役から活動を始め、29歳になった俳優の落合モトキ。東京・新宿のK’s cinemaなどで上映中の映画『歩けない僕らは』(併映作『ガンバレとかうるせぇ』)では、左半身が不随になった柘植役で主演を務める。一方で多くの話題作にも欠かせない存在としても出演している落合の俳優としての生き方に迫った。

【写真】朗らかな表情の落合モトキ

■半身不随の主人公を好演 何気ない日常に感謝「考える時間になったら」

 本作の主人公の宮下遥(宇野愛海)は、回復期リハビリテーション病院1年目の理学療法士。まだ慣れない仕事に戸惑いつつも、同期の幸子(堀春菜)に、彼氏・翔(細川岳)のグチなどを聞いてもらっては、共に励まし合い頑張っている。担当していたタエ(佐々木すみ江)が退院し、新しい患者が入院してくる。仕事からの帰宅途中に脳卒中を発症し、左半身が不随になった柘植(落合)。遥は初めて入院から退院までを担当することになる。「元の人生には戻れますかね?」と聞く柘植に、何も答えられない遥。日野課長(山中聡)の指導の元、現実と向き合う日々が始まる。

 落合は「観ていただいた方に今ある問題に対して一歩、踏み出すのか、それとも俯瞰して見てみるのか。そういったことや、いろいろなことを考える時間になったら。背中を押せればいいですね」と思いを口にする。役作りについては「左半身を動かさないことに徹しました」と話すが、「周りでリハビリの施術される方の方が大変なのかな、と思いますね」と同じく主演の宇野らの演技を称えた。

 撮影で車いすを使ったことで、何気ない日常もありがたみを感じたという。「シーンにはないですけど、バスや電車に乗るのとか大変だなと思いました」と実感を語りつつ、一方で「車いすは人をアシストするような作りになっている。言い方が変ですけど、すごく使いやすかったです。そういうことでは発見でしたね」と言葉に力を込めた。

 自身にも同じ症状の身内がいるそうで「以前は見て見ぬ振りではないですけど、そういう感じはあった。この作品を通して、面と向かってというところまではいった」と告白。「いざ、そうなってみると、1から10までやってあげたくなる。でも、それって、その人のためにはならない。1周回って、その人のためになることを考えるようになった。ウィンウィンにはならない難しいところですね」と自身の心の中で起きた変化を語った。

■井筒和幸監督の教えに感謝「貴重な体験でした」

 本作では主演の一角として半身不随になった柘植を体当たりで演じたが、現在放送中の日本テレビ系『ニッポンノワール-刑事Yの反乱-』の5話から陣内凪人で出演しており、気づけば、どんな作品にも出演する“バイプレーヤー”的な要素も兼ね備える。落合自身は「どちらも、ありがたいです。仕事を選んでいることはないです」としながらも「バイプレーヤーと言われている方が、うれしい気持ちがありますね」と意外な思いを語る。

 そういう思いを抱いたのは、何かがきっかけになったからではないそう。「なんか、こうなっていったという感じですかね」と朗らな表情を見せる。「テレ東でやっていた『バイプレーヤーズ』のような番組の一員に、20年後、30年後になれたら面白いなと思いますね」と自身のこれからを語った。

 大きな話題を集めたドラマ『バイプレーヤーズ』を観た際には落合自身も驚きだったそう。旧知の松居大悟氏が監督を務めていたこともあり「舞台とか映画も、友だちや知り合いが出ていると見に行くということがあるじゃないですか。そういった感覚もあって、観ていたんですけど、その思いを作品が超越していきましたね」。

 そんな落合に俳優人生の転機となった作品を聞いた。「小さいころからやっているけど、13歳ぐらいの時に廣木隆一監督の『4TEEN』という作品に出て、同い年の人と仕事をして楽しいなと思った。そこはターニングポイントでしたね」と振り返る。

 続けて井筒和幸監督の『ヒーローショー』を挙げた。「19歳ぐらいで『ヒーローショー』という作品に出て、叩き直されました。それで今があります」と言い切る。井筒監督について「怖かったですよ」と苦笑いを浮かべながらも「言ってくれる人は、今はとても少ない。貴重な体験でした」と感謝の言葉を並べる。

 井筒監督から言われた言葉は今でも俳優・落合モトキの中で生きている。「この仕事に、ちゃんと向き合っていたつもりだったんですけど『新鮮さを持って、ちゃんと演じなさい』と言われたのが印象的でした。テスト、本番で同じことをやっていて、なぞり過ぎという感じだったんでしょう。『もっと生々しくやってくれ』と。そこから同じことを言うのにも、改めて新鮮さを心掛けてやっておますね」と口にすると「今も、もう1度、仕事をしたいなと思う監督でしたね」と再会を心待ちにした。

 さまざまな人の影響を受け、俳優として成長を続ける落合が魂を込めた『歩けない僕らは』。どんな人に観てほしいかを問われると「いろんな作品で『カップルでも、友だちでも』とよく言うんですけど、今回は他人事ではなく、あすは我が身。身近な人が、この病気になる可能性も大いにある」と話し「家族と観たら、普段あることのありがたみが感じられると思う。そういう人と観ていただけたら、うれしいですね。今では普通のことを過ごせなくなったら『なんで、こうなったんだよ』となるかもしれない。その中で『そうやってできたことが、ありがたいんだな』と感じられると思います」と呼びかけた。