「明石家さんまとして選ばれているので、きっちり台本に沿って演じるっていうことではなくて、やっぱり笑わしたい」。おおよそ5年ぶりとなる主演舞台『七転抜刀!戸塚宿』(2020年1月10日から1月31日までBunkamuraシアターコクーンで上演)を控える明石家さんま(64)。幕末から明治へと移り変わる中、藩士の“仇討ち”を軸に繰り広げられる、熱い人間模様を描いた同作で、舞台では時代劇に初挑戦する。テレビとは違う舞台で見せる喜劇人としての一面、笑いへのこだわり、人生観に迫った。

【写真】時代劇っぽく…互いを見つめ合うさんま&中尾明慶

■おおよそ5年ぶりの舞台は「監督に騙された」 時代劇に苦い思い出も「織田信長が足軽に」

 おおよそ5年ぶりの舞台出演を決めた経緯について、さんまはおなじみのマシンガントークで振り返る。「水田(伸生)監督に騙されたっていうことですよね(笑)。年明けの作品ということなんですけど、年末はオーストラリアに行かないといけないから(笑)。だから、まずは9月の頭にあがってくる台本を見てから決めるっていう話になっていたんですけど、待てど暮らせど台本がこない(笑)。そうこうしているうちに、世間にも『さんまが舞台をやる』って出ちゃったから、もう断るには間に合わない…。水田監督のいつもの手口です(笑)」。

 舞台で武士ものの時代劇をやるのは初めてだというさんまだが「カツラとか着物とかをセットしているんですけど、本番になると、これを毎日せなアカンのかと思って、今からゾッとしています。人よりも動きが大きいから『えっ?』って言うだけで、カツラが抜けちゃう」とポツリ。共演の中尾明慶が「台本を読ませていただく限り、今のところは普通にやったら1時間くらいで終わるはずなんですけど、これがさんまさんの手によって何倍にもふくらんでいきますので、3時間くらいになるかな(笑)。このチームは、そこが楽しみです」と声を弾ませると、さんまは「2時間半くらいにします」と笑顔で切り返し、こう続けた。

 「見る側としてもそうなんですけど、舞台って2時間ちょっとがちょうどええよね。『七人ぐらいの兵士』の大阪公演の時に4時間くらいやったことがあって。大阪のお客さんがやらせたんですよ(笑)。そしたら、お客さんが舞台に向かって『すみません、終電がありますので』って言いながら帰っていくんですよ。舞台やっていて、なんでそんな話になるのかと(笑)」

 さんまにとって“時代劇”といえば、1993年に放送されたTBSの大型時代劇『天下を獲った男 豊臣秀吉』での苦い思い出がある。「柳葉(敏郎)が豊臣秀吉の役やったんですけど、織田信長はさんまさんがいいっていうことで、カツラを合わせに行ったら、プロデューサーが首をかしげていたんです。それで、次に撮影現場に行ったら、足軽役に変わっていました(笑)。そんなバカなことがあるかって話やねんけど、プロデューサーも『信長は無理です』って言い出せなかったんでしょうね。すごいええせりふもあったんですけど、全部飛ばされてしまって(苦笑)。今回は殿様みたいなカツラじゃないからいいんですけど」。

■中尾明慶にジミー大西を任せようと思った瞬間 前妻・大竹しのぶの金言に「ハッとした」

 2015年に上演された舞台『七人ぐらいの兵士』のインタビューでは、自身のスタンスについて「役者として芝居をするのは違う、お客さんが来たら“お笑い芸人の明石家さんま”として役を通じてサービスを与えたい、伝えたい」と語っていたが、約5年が経った今、その考えに変わりはないのだろうか。「変わらないですね。それしかできないですし。オレの場合はあて書きで来るので、中尾と比べたら芝居っていう観念は少ないと思います。お芝居をするっていうのは役者さんに任せて、こっちはどういう風にやるかっていう。“演じるよりもやる”っていうのが近いかな」。

 自身が企画・プロデュースを手がけたNetflixオリジナルドラマ『Jimmy~アホみたいなホンマの話~』では、中尾がジミー大西を好演。さんまは、12年の舞台『PRESS~プレス~』で中尾と共演した際に、その手応えを感じていた。「冒頭のひとりしゃべりがあったんです、それが非常に軽妙な感じで。5分のせりふを飄々とやる時に安心しました。『こいつできるんだ』って。それで2人で絡んでみて『こいつジミーいける』って思いましたね。(15年の)『七人ぐらいの兵士』の時は、それが確信に変わって、ある日の舞台ではジミーのドラマのことを考えながら芝居をしていたことがありました(笑)」。

 一方、中尾はさんま流の舞台作りに感銘を受けている様子。「さんまさんがあるインタビューで『台本をどうやって崩しているかを考えている』とおっしゃっていたのですが、僕はまずそんなことを考えたことがなくて。どうやって成立させるかしか考えてないので、その発想は新鮮でした」。さんまのこうしたアプローチには理由がある。「オレはだいたいせりふを入れなくて、本番の1週間くらい前に入れるんです。せりふを入れたら飽きるんですよ。入れ込んで練習して、完璧にしてしまうと、もう飽きたってなって、伝わらないんですよ。飽きないようにするって難しいから」。

 前回は還暦を迎えるタイミングで主演舞台を行ったさんまだが、それから5年の月日が経過した。「どうする、オレ(笑)。55歳の時に、60歳で引退という予定を立てていて、舞台はあれが最後でって思っていたんですよ。それがこうなって、ちょっとまだやろうかとか言うてる最中、吉本がこんな状態になってしもうて(苦笑)。全く関係ないオレが何か巻き込まれて…不思議な(笑)。全く関係ないけれども、オレの名前が挙がったりするので、どうしていいかわからない」。そんな中、前妻の大竹しのぶからこんな言葉をかけられたという。

 「大竹さんに会う機会があって、こうやねんって話したら『あなた、どうしようって言っているのが好きじゃん』って言われてハッとした(笑)。ずっと『どうしよう』で生きてきてんねやろうな。そういう星の下なのかとか、考えましたね」

 舞台のタイトルは「七転八倒」から取られているが、さんまは「プライベートは八倒だらけ(笑)。昔、僕のサインに『七転び、よう起きん』って書いていたんですよ。『七転八倒』を座右の銘にしていた20代でしたね。転んでばかりでもええやろうと。何回も起きたら邪魔くさい」とにっこり。「『七転び一起き』でいいんですよ。8回も起きなくても、転んだままで、最後に起きればええだけで。7つ転んで7つ起きて、もう1回ってしんどい。小学生、中学生にも言いたいんですけど、七転び八起きなんてするな、七転び、最後の一起きでええんやと。そう変えたほうが楽ですから」。お笑い怪獣・明石家さんまは、これからもバタバタと転びながら、世間を笑わせ続ける。

■『七転抜刀!戸塚宿』
幕末から明治へと移り変わる中、藩士の“仇討ち”を軸に繰り広げられる、熱い人間模様を描く。ドラマ『あなたの番です』で大注目の福原充則氏が脚本を手がけ、共演には、中尾明慶、佐藤仁美をはじめ、山西惇、温水洋一、八十田勇一といった実力派俳優や、初の本格舞台出演となる犬飼貴丈、吉村卓也ら個性豊かなメンバーが集結する。東京公演は、Bunkamuraシアターコクーンで2020年1月10日から1月31日。大阪公演は、COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールで2月20日から2月26日。