ドラマ『キッズ・ウォー』シリーズや『花より男子』シリーズなどでお茶の間への知名度を広げ、映画『八日目の蝉』(2011年)で日本アカデミー賞最優秀女優賞を受賞した井上真央(32)。その彼女が『Shall we ダンス?』(96年)などで知られる周防正行監督の最新作『カツベン!』(12月13日公開)に“ちょっと癖のある”社長令嬢・橘琴江役で出演する。「周防組に参加できたことがすごくうれしかった」と語る、女優・井上真央の現在地に迫る。

【動画】俊太郎の頭に銃口が…映画『カツベン!』予告編

■イメージ覆す“嫌な女”役「モダンガールを楽しみました」

 「周防監督の作品はすごく好きで拝見していましたが、今回”琴江”の様な役でのオファーに驚きました」と言うように、琴江は主演の成田凌演じる染谷俊太郎が活動弁士として活動する靑木館のライバルにあたるタチバナ館の令嬢。人気・実力のある人間を引き抜くためには手段を選ばず、俊太郎のタチバナ館への引き抜きにも奔走する、言ってしまえば“嫌な女”のような存在だ。

 「監督からは、MOGA(モダンガール)を楽しんで下さい。と言われました。当時にしては珍しい自立した女性。でもカツベンに夢中になっている、そんなチャーミングな部分も出せたら面白いなぁと思いました」と役作りについて語る。

 「初めての周防組でしたので、緊張していた部分はありましたが、楽しかったですね。常連の方もいらっしゃいましたし、皆さん楽しそうに演じていて、信頼関係もありました。でも、その中にいらっしゃる監督が一番楽しそうだったかもしれません(笑)。」と現場の様子を楽しそうに振り返った。

■クランクイン前には周防監督から“活動弁士”への熱い思いを受け取る

 活動弁士とは、明治・大正時代に活動写真(無声映画)と呼ばれていた映画を上映しているときに、その内容を言葉を交えて説明し、現在のナレーターの前身とも言える。弁士によって、登場人物のせりふなども変わってくるため、同じ作品が面白くもなり、つまらなくもなり、うれしくも悲しくもなった。しかし、映画技術の発展により、映像に音が入るようになってからは徐々に役目を終えていった。

 周防監督はクランクイン前に活動弁士について井上に対しても熱く語ったようで「知らないことがたくさんありましたし、監督の活動弁士や映画の原点に対する熱い思いが伝わってきました」と周防監督の並々ならぬ作品に対する思いを感じ取った。

■人生プランは立てない「目の前の仕事に集中」

 映画の歴史も感じられる本作で、役者目線で“映画を映画館で見ることの価値”を聞いた。「日常とは切り離された空間や大画面で見る上映前のワクワク感は、映画館でしか味わえない事だと思います。大人になった今でも特別な時間です。」と映画の魅力を語る。自身にとって印象に残っている映画には『男はつらいよ』シリーズと『釣りバカ日誌』シリーズをあげた井上。「お正月に母や祖母とよく見に行きました。一番最初に見た作品です。映画ってあのとき誰と行って、帰り道にここでご飯を食べたなぁ…とか、そんな記憶とともにあるものだと思うんです。」と映画館に行くことの魅力を語ってくれた。

 多くの作品に出演し続けている井上だが「人生プランを立てるようなタイプではないんです」と、そのスタンスに変わりはない。「できるのであればこのお仕事を楽しんで続けていきたいというのはありますが、具体的に2年後、3年後にこうしていたいというプランみたいなものはあまり立てていないです。どういう役をやりたいというよりも、いただいた役に、どう応えていくか、目の前の事を一生懸命やるしかないですね」。

 仕事に入る前には部屋の掃除をすることが習慣になっているようで「台本を読むときにも、ちょっと気になったら片付けをして。。。結局、関係のないところまで掃除をしてしまって(笑)。きれいになったところで台本を読んで、気持ち的にすっきりしたいのかもしれません」。

 井上が、本作で“集中したワンシーン”について成田とのキスシーンをあげる。「あんなに緊張したキスシーンはないです。周防監督から『子どもに見せられないような感じで!』と言われました。フレンチキスのようなイメージをしていたので、すごく戸惑ったのを覚えています」と笑う。活動弁士の仕事や、映画の歴史を感じながら、井上の本気のキスシーンにも注目して見たい1本だ。

◆井上真央(いのうえ・まお):1987年1月9日生まれ 神奈川県出身
「花より男子」シリーズ、連続テレビ小説「おひさま」大河ドラマ「花燃ゆ」にて主演。
NHK土曜ドラマ「少年寅次郎」では寅さんの育ての母・光子を演じた。
映画では「八日目の蝉」「太平洋の奇跡―フォックスと呼ばれた男―」「白ゆき姫殺人事件「焼肉ドラゴン」等。