浪漫と哀愁を感じさせる旧日本海軍艦艇の雄姿。疾走する軍艦が作り出す白波や海の模様を精密に表現するK-5(@battleship_5)氏は、登場させる水兵一人ひとりに“物語”を作るのだと言う。そんな大学生モデラーがスケールモデル制作で得た“気づき”の数々とは。

【写真】よく見るとそこら中にドラマが…!1/700 戦艦陸奥の甲板で上官に敬礼する水兵たち、まるで映画の1シーン

■作品に配置した登場人物には全て“物語”を作る

――プラモデルの魅力に目覚めた原体験を教えてください。

【K-5】幼少期は車が大好きでした。小学2年生のとき、『ラブ・バッグ』(1969年)という映画の影響で父と初めてタミヤ1/32フォルクスワーゲン・ビートルを制作しました。当時は素組みでしたが、組み上げた際の達成感と感動を知り、プラモの魅力に触れました。

――「艦船モデラー」になったターニングポイントは?

【K-5】映画『男たちの大和』(2005年)がキッカケで、タミヤ1/700戦艦大和を制作しました。細かいパーツを組んでいくと精密な大和が出来上がっていく感動は凄まじいものでした。次にドキュメンタリー番組の影響で戦艦長門を。そして記念艦三笠に乗艦した影響で三笠を制作しました。すると、艦船模型と同時に艦船自体も好きになっていきました。

――自身の作品の“特長”は何でしょうか。

【K-5】作品の中に人々の生活感や躍動感を演出することだと思います。ウェザリングは勿論、水兵や木箱などのアクセントを「この水兵は作業をするために木材を広げてる」「上官に呼ばれて走っている」などと、自分の中で理由をつけて配置・制作しています。つまり、“登場人物に物語”を作ってあげるんです。在りし日の軍艦の中で起きたに日常を演出すると、見る人もそれを発見して面白がってくれます。

――では、艦船模型を制作する際に一番気をつけていることは?

【K-5】全体の作り込みのバランスです。好きな箇所に力が入るのは勿論ですが、そうでない箇所を疎かにすると不自然になってしまいます。全体の作り込みを統一しつつ、見せたい箇所はちゃんと見せられるよう日々努力しています。

――一番好きな艦船は何ですか?その理由も教えてください。

【K-5】明治の日本海軍旗艦「防護巡洋艦松島」です。不釣り合いに大きな主砲、一本煙突、一本マスト、タンブルフォーム、美しい艦首飾り、白い船体…全てが大好きです。明治の軍艦はカッコ良さのなかに“美しさ”があります。飾り気のない“質実剛健”な第2次大戦の軍艦もいいですが、その中に気品もあるのが明治艦船の魅力です。

■プラモは仕事でなく趣味なのだから、嫌なことは一旦逃げてみるのも手

――今回紹介している峯風を制作した理由は?

【K-5】「第28回(2017年)ピットロードコンテスト」用に作った作品です。本作で入選を頂きました。このコンテスト出場は年に1度の大勝負で、毎年これに上位入賞するために日々鍛錬しています。峯風はその集大成です。

――峯風で気に入っている部分をどこでしょうか。

【K-5】細部に手を加えました。主砲防楯・艦橋・錨甲板はほぼ全てエッチングとプラペーパーで作り直していて、「気になる箇所は全て作り直す」をモットーに作り込んでいきました。海面は、箱絵をマスキングテープで囲い、アクリル絵具で海色を筆塗り。その上からジェルメディウムを塗って海を再現しています。航跡はコットンを混ぜたジェルメディウムで表現。艦首のうねる白波は、ランナーが入っているビニールを扇形に切り取り、カーブさせて固定し、その上にコットンを混ぜたジェルメディウムで白くしています。

――海のうねり、白波の表現に圧倒されます。

【K-5】コットンを使っての白波表現は初でしたが、疾走感と海面の透明感が演出出来たのではと思います。その作り直しは部分部分で上手くいきましたが、艦橋が若干低いまま(キットが低く作られている)だったり、艦首形状を直しているうちに全長が短くなってしまったりと、パーツ毎の精度は挙げられたものの全体のシルエットを疎かにしてしまいました。

――当時の船は資料も少ないと思いますが、どのようにして情報を集めていますか?また、情報のない部分の補完方法は?

【K-5】自分で調べたりもしますが、詳しい知人から資料を提供してもらったりしています。私がこうして作れるのは様々な人の支えがあるからです。情報のない部分は先任の作例や「こうだったらカッコいいんじゃないか」というイメージで作り込んでいきます。そういう“想像”の箇所こそが自分のセンスの見せどころだと感じ、一層熱が入ります!

――制作途中で「壁」にぶつかった際、どう突破しますか?

【K-5】とりあえずやってみること、手を動かすことです。悩んでいても形にはなりません。上手く出来るか不安ですが、見よう見まねでやってみます。そうするとなんやかんや技法を身につけられます。ただ、楽しくなかったら他のことをやるようにしています。初めのうちは上手くいかないのは当然ですが、モチベーションが逃げてしまうのは勿体ないです。プラモ制作は仕事ではなく趣味なので、嫌なことは一旦逃げてみるのも手です。出来ること、やりたい事からユルユルとやるようにしています。

――プラモ作りでは様々な“気づき”も得られたわけですね。

【K-5】例えば100年前の艦船だと100年前の水兵が乗っているわけです。艦船の運用方法はもちろん休憩中の遊びとかも変わってきます。歴史を学ぶと水兵さんの気持ちや行動が少しだけ分かったような気になり、1/700で人を乗せるのが楽しくなります。それと同時に世界観もより濃いものになってきて、楽しく見応えある作品へと仕上がっていくように思えます。今の私にとっては、そうした“物語の想像”がプラモ制作の原動力となっています。