40年の歴史を持つ『機動戦士ガンダム』の人気を支えてきたバリエーション豊富なモビルスーツ(以下、MS)の数々。モデラーたちは思い思いの工作をガンプラに施し、その“妄想力”と“技術”を磨きあってきた。今回紹介するのは、PGダブルオーライザーに施した電飾技術で話題となった、にこらす刑事(@axdiver681)氏。大のオトナがガンプラにハマる理由とは?

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■オトナになって「遊びだからこそ本気でやる」そんな体験をしてみたくなった

――ガンダムシリーズの中で一番好きな作品は?その理由も教えてください。

【にこらす刑事】原点にして頂点…、ファーストガンダムが一番好きです。小学生の時に初めて触れてから40年が経っていますが、今見ても新しい発見や解釈ができます。私は今40代ですが、50代になって見返したらきっとまた新しい発見があると思っています。

――ファーストガンダムの好きなキャラやシーンを教えてください。

【にこらす刑事】カイ・シデンです。小説版ガンダム後半での活躍が主な理由ですが、アニメの亡きミハルに決意を伝えるシーンが最も好きです。特に、声優・古川登志夫さんによる心に響くセリフの一つひとつが素晴らしくて、正に今、カイのセリフを思い出したら泣けてきました。ジオンを徹底的に叩きたくなってきました(苦笑)!

――では好きなモビルスーツは?

【にこらす刑事】富野由悠季監督の小説版『機動戦士ガンダム』に登場するG3ガンダムです。小さい頃は、映像では見られないMSを文字だけで想像することが好きでした。もう一つは『機動戦士ガンダムSEED』の主人公機であるストライクガンダムです。どちらも私にとっては洗練された至高のデザインなので、恐れ多くてプラモデルを作ることができません。いつの日か上手くなったらこの2体をプラモデルで作りたいですね。

――にこらす刑事さんがプラモ制作にのめりこんだ原体験は?

【にこらす刑事】物心ついた頃がちょうどガンプラブームの始まりでした。学校が終わってすぐに、ガンプラを探して模型店やおもちゃ屋を走り回ったあの頃の熱狂と充実感が原体験です。本格的にのめりこんだのは、アニメ『ガンダムビルドファイターズ』との出会いです。この年になって「遊びだからこそ本気でやる」ってことをしてみたいと思ったのです。そんな時に何となく暖簾をくぐった秋葉原工作室(@akihabarakousak)でオトナ達が平日の昼間っからプラモ作りに興じている姿を見て、これは楽しい事なんだ!と確信しました。尚、秋葉原工作室に暖簾はないです。フツーのドアです(笑)。

――ガンプラを制作における自身の“強み”は?

【にこらす刑事】電飾や電動などのギミックを仕込むことです。もちろん基本工作がイマイチだと折角のギミックも映えないので、クリーンな仕上げは最低限行っています。電飾やギミックなんて、という人もいるかもしれませんが、模型って昔から光ったり動いたりしたんですよ。

――動いたり光ったりするメカに対して男性は憧れがあると思います。制作するギミックでのこだわりは?

【にこらす刑事】毎回新しいテーマを決めてチャレンジすることです。「今できること」を駆使してより良い作品を作ることよりも、新しいコンセプトや技術を適用することが好きです。今年は電飾に加えて電動でガトリング砲が回転するユニコーンガンダムを制作しました。マイコン制御で起動シーケンスから射撃状態までLEDと連動した動きがプログラムされています。

――それは凄い!実際に動くところを見てみたいですね。

■失敗してもやり直せるし、完成を諦めてもよいガンプラは“フリーダムの極み”

――では、代表作は何になりますか?

【にこらす刑事】写真で紹介している2017年に制作したPGダブルオーライザーです。

――電飾のインパクトが絶大ですね。モチーフがあれば教えてください。

【にこらす刑事】モチーフとなったのは『ガンダム00』の映像作品そのものです。TRANS-AMを赤いパーツ群で表現したキットは多くあったので、他の方法で表現できないかと考えていました。そこにクリア外装の発売があったので、電飾と組み合わせれば面白いことにならないかなと思い、見切り発車で制作を開始しました。紆余曲折ありましたが結果的に満足するものが出来ました。

――本作品でこだわった箇所を教えてください。

【にこらす刑事】クリアパーツの色と下から照らすLEDの色と照度、それらが組み合わさるとどういった色合い、発光状態になるのか。それを確かめながら制作を進めました。発光させたい部分はマスキングし、それ以外を遮光して塗装しています。クリア状態で残す部分のデザインは00の世界観でよくみられるマーキングのパターンを意識しました。発光具合とパターンを現物確認し、気に入らなければ躊躇なくやり直し、を繰り返しました。

――この作品の反響はいかがでしたか?

【にこらす刑事】この作品以外でも感じるのですが、制作者である私以上に評価・解説してくださる人が多くいます。自分では意識したり計算せずにいた所を「ここが凄い!」と褒めて解説いただいたり。まさに過分な評価ですが、本当に感謝しています。作った本人が「なるほどー、確かにすごいかも」とか言いながら見たり聞いています(笑)。あと、instagramを通して海外からの反響も大きかったですね。クリア仕様キットの新しい使い方、として認知されたのだと思います。

――ガンプラを制作する際、“妄想”が大事だと思います。そのアイデアの源泉は何ですか?

【にこらす刑事】私はプラモデルそのものよりアニメーションなど映像作品の方が好きなので、見返したり、考察したりを繰り返している内に、何かしらのテーマに囚われることがあります。ダブルオーライザーの例でいえば「そもそもTRAS-AMって何なんだろう?」と考え続けていた時期です。そこから「あ、プラモデルでやってみたいな」「キットはあるのか…」「他の表現できないかな?」と考えが進み、実際のアイデアに至る、といった具合です。

――にこらす刑事さんにとってガンプラとは?

【にこらす刑事】納期のない研究開発遊びです。どんな仕事でも納期があるので品質100%を目指すことは大変難しく、コストの制約もある。オトナになった今、趣味のガンプラであればQCD (品質/コスト/納期)全てにおいて思う存分、納得がいくまで自分でコントロールできることが最大の魅力です。失敗したらいくらでもやり直せるし、完成を諦めて無かったことにもできちゃう、というフリーダムの極み(笑)。仕事も遊びもしっかりやる、失敗したらとぼけちゃう、かっこいいオトナの嗜みとしてサイコーの趣味ですね。

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