数あるサブカルコンテンツと並び、日本を代表するポップカルチャーとして海外からも注目されているコスプレ。好きなキャラクターになりきり、作品の世界観に没入するという文化は広く支持され、今ではほぼ毎週末、全国各地でコスプレイベントが開催されるなど、その人気は加熱の一途を辿っている。そんな中、一見すると女性にしか見えない女装レイヤーたちが、SNS上でも注目され始めている。今回は、自身の胸で美しいバストを作り、話題となった人気“女装男子コスプレイヤー”の、ひやニキさんにインタビューを実施。女装コスプレへの想いや、今後の展望を語ってもらった。

【ビフォーアフター】努力次第でここまで変わる!ひやニキさんの小学生~社会人までの比較写真

■女装コスプレイヤーならではの悩みを告白「衣装の女性用下着を盗まれたことも」

――コスプレはいつから始められたのでしょう?

【ひやニキ】初めて挑戦したのは2011年ですが、本格的に取り組むようになったのは2013年からです。それ以降は休むことなく、ずっと継続して活動しています。

――最初からいきなり、女性キャラクターのコスプレに挑戦されたのですか?

【ひやニキ】友だちから『東方Project』という同人ゲームのコスプレで併せをしないか?と誘われたんです。女性キャラクターしか登場しないゲームでしたが、特に迷いはなく、「誘われたし、やってみるか」という気持ちで挑戦しました。よく言えばチャレンジ、悪く言えば何も考えてない、といった感じですね(笑)。

――美容へのこだわりはもちろん、美しいバストの作り方もブログで公開され話題になっています。そこに行きつくまでの経緯を教えていただけますか?

――SNSに寄せられるコメントは、どういった内容のものが多いですか?

【ひやニキ】いちばん多いのは、「メイクが上手」とか、「キャラクターごとに顔がまったく違うからすごい」といったご意見ですね。女装に関しては、“カワイイ”より“キレイ”と言っていただけることのほうが多いです。僕と同じように、女装コスプレをしている人からは、「メイクが上達する方法を教えてほしい」といったコメントもよく届きます。

――女装コスプレを続けていく中で、何か悩みごとはありますか?

【ひやニキ】コスプレ衣装として着用した女性用の下着をベランダに干していたら、盗まれたことがあったんですけど、物が物だけに警察にも届出しにくくて…。また、同じようにベランダで下着を干していたら、大家さんから電話がかかってきて、「誰か女性を無断で住ませているんじゃないか?」と問い詰められたことがありました。

■天狗になって炎上を繰り返した日々 友人の助言で気付かされた自身の“非”

――毎回、トラブルが起きる度に説明するのはたいへんだと思いますが、他にも女装コスプレを続けていて、嫌な思いをした経験はありますか?

【ひやニキ】数年前、Twitterにアップした写真がめちゃくちゃバズったことがあって。それで急激にフォロワー数が増えて、天狗になっていた時期があったんです。Twitter上でも、ほんの些細なことで他のレイヤーと喧嘩して、炎上してしまうことも何度もありました。いま思い返しても、そのころの自分は本当に嫌な性格だったので、悪い意味で、いつまでも記憶に残っている思い出ですね。

――そんな時期があったとは驚きです。そのような状況から、どのようにして自身の驕りに気づき、軌道を修正されたのでしょう?

【ひやニキ】コスプレをする以前からずっと仲の良かった友人が、「お前のこういうところは良くない」と注意してくれたんです。でも、そのころは本当に調子に乗っていたので、「どういうところがダメなのか、その都度、言ってもらわないとわからない」と答えたところ、本当に逐一、僕が悪い態度を取ったときに「いまのは良くない」と指摘してくれて。そうしたやり取りを続けていくなかで、自分に非があったことがだんだん分かってきたんです。

――そうしたやり取りを経て、現在の謙虚な姿勢のひやニキさんになられたと。

【ひやニキ】友人が指摘してくれたところを、ひとつひとつ直していったほうが、自分自身の人生の質も高まると思ったんです。もちろん今でも、SNSに誹謗中傷のメールは届きますが、そんなものにいちいち反応していても仕方がないので、もうまったく気にならなくなりました。

■趣味に引退はない、コスプレは生涯続けていく

――YouTubeチャンネルを開設し、コスプレメイクのコツを教える動画もアップされるなど、さまざまな分野で精力的に活動中のひやニキさんですが、今後の展望についても教えていただけますか?

【ひやニキ】まだまだ駆け出しですが、YouTubeでの活動も、ある程度収益が見込めるようになったら、コスプレ用の化粧品を取り扱う企業を立ち上げたいと思っていて、初心者でも気軽にコスプレを楽しめる環境を作りたいんです。それと、地方創生として、地方のイベント運営団体や施設と組んで、大小さまざまなコスプレイベントも展開していきたいと考えています。そして何より、ひとりのコスプレイヤーとして、女装コスプレのクオリティを高めていくことにも、これまでと変わらず力を注いでいくつもりです。

――コスプレをビジネスとして捉えつつ、若い世代に技術を伝えることも考えていらっしゃるんですね。

【ひやニキ】皆が不便だと思っているところにこそ、ビジネスチャンスは生まれるので。そこに注力する形で、コスプレに関する新しい事業を始めたいという気持ちは前々から持っていました。それと個人的には、もっといろんな形でコスプレの魅力を発信していきたいと考えているので、例えば、ライブや演劇に出演するなど、これまでにない見せ方でのコスプレ活動も検討しています。

――コスプレ活動を引退する時期について、考えていたりしますか?

【ひやニキ】趣味に引退はないと思っています。前述にもあるとおり、僕はコスプレだけでなく、小説も趣味で書いていますが、これから先、書くことも読むことも決して辞めないと思います。「ちょっと疲れたから、しばらく休憩しよう」と思うときはありますが、時間が経てば、また書きたいものが出てくるので。コスプレもそれに似た感覚なので、これから先、たまに休んだりもしながら、ずっと続けていくでしょうね。

取材・文=ソムタム田井