若者の間で、“そしゃく音”に特化した動画が人気を集めている。フライドチキンにかぶりついた時の「カリッ音」やスナック菓子を食べる際の「ザクザクッ音」など、そしゃく音だけを収録した動画となっており、SNS上では「聴いてると眠くなる」、「癒し」、「食欲をそそる」などの声が上がっている。なかでも、そしゃく音の“元祖”とひそかに注目されているのが、ニッポンハムのソーセージ『シャウエッセン』だ。同CMでは、35年前の発売時から一貫して“パリッ音”を打ち出しており、最新のWEB動画でも同様の音を存分に生かした演出が施されている。なぜ同商品は、長年にわたり“パリッ音”をメインに展開してきたのだろうか?

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■“音フェチ”にはたまらない「ASMR」 心地よさと不快ギリギリのラインが賛否分ける

 近年、YouTube上で「ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)」という新ジャンルの動画が広まっている。「ASMR」は、直訳すると「自律感覚絶頂反応」。本のページをめくる「サラサラ音」や野菜を切る時の「サクッサク音」、耳かきの際の「カサカサ音」や美容室で頭を洗われている「ゴシゴシ音」など、「ASMR」は日常にあふれるたわいもない音を収録した動画となっている。とくに若年層から支持されており、SNS上では「最近、ASMR聴くと眠くなる」、「なぜかASMRって癒される」といったコメントが相次いでいる。

 「ASMR」の中でも人気を集めているのが、そしゃく音動画だ。麺をすする「ズルズル音」やピクルスをかじる「ムシャムシャ音」など、食感を味わう音だけが詰まっており、“音フェチ”にはたまらない動画だという。またYouTuberの口元がアップで映され、ひたすら食べている映像が流れるなど、視覚でも楽しめる作りに仕上がっている。

 だが、そしゃく音を不快に感じる人も多い。例えば、テレビCMで女性が豪快に食べるシーンに対し、「食欲をそそる」との声がある一方、「そしゃく音が不快」、「食べ方が下品」といった批判もあるという。現に「ASMR」のそしゃく音動画に対しても、「気持ち悪い」、「ゾクゾクしちゃってどうも苦手」との意見が寄せられている。いかにして不快さをなくすことができるのか、そしゃく音動画における表現方法の模索は続く。

■皮の歯ごたえを伝えるため“パリッ音”採用 五感で食事楽しむ日本人にマッチ

 『シャウエッセン』といえば、“パリッ音”。発売時から一貫して、かんだ時に響く“パリッ音”をCMで描いている。なぜソーセージのCMで、“パリッ音”をメインに展開してきたのだろうか。その理由について、ニッポンハムのマーケティング推進部・比恵島裕美さんはこう語る。

「開発当時は、皮なしや赤ウインナーなど皮がやわらかいものが多かったのですが、『シャウエッセン』は本場ドイツの製法にならい、羊の腸の皮(ケーシング)を使用し、原料の選別から加熱の調整など、相当数の施策を重ねて開発したので、とても弾力感のあるソーセージに仕上がりました。この皮の歯ごたえをどのように消費者に伝えるべきか、考え出された結果が“パリッ音”でした。日本人は五感で食事を楽しむ文化があります。また日本は他国と比べて擬音語が豊富なので、“パリッ!!としたおいしさ”という表現での訴求が分かりやすく、共感を生んだものと考えられます」

 発売スタート時のCM「美味しい音 篇」では、大勢のドイツ人がレストランでビールジョッキを片手に『シャウエッセン』を口にするシーンを展開。「美味なるものには音がある」というキャッチフレーズと共に、『シャウエッセン』をかじる際の“パリッ音”を、ふんだんに採用している。同CMの裏話について、比恵島氏はこう話す。

「とにかく楽しい雰囲気を出そうと、当時日本にいらしたドイツ人の方々を、ドイツ風のお店に招き、自由に食べて飲んでいるさまを撮影したと聞いております」

 また『シャウエッセン』は、ソーセージの調理法にも一石を投じる。「日本では、ソーセージは焼くのが主流でしたが、ドイツではボイル(ゆでる)して食べるのが一般的。そこで、『シャウエッセン』では、ボイルして食べることを全面に押し出して、広告を展開してきました。実際ボイルした方が、羊腸が張りつめて、ひときわ高く“パリッ音”が際立つようになるんですよ」

 発売当初は伸び悩んだものの、CM放送後には売上高が増加。発売初年度には100億円、翌年には260億円もの売り上げを記録するなど、大ヒットとなった。「CM放送後は大反響で、『あのパリッとするウインナーが食べたい』、『パリッを体験してみたい』と指名買いが増えるほどでした。また放送に合わせて実施したスーパーなどでの試食販売も好評で、広く普及しました」

 1990年代には、歌手の久保田利伸を起用したCMを展開。久保田がこわもての外国人に絡まれるも、『シャウエッセン』を目にすると一転。プチパーティーを開いて一緒に楽しむというストーリーは、当時話題となった。

■今年は和牛を起用 『シャウエッセン』を使った「ASMR」も増加中

 今年は、お笑いコンビ・和牛を起用したWEB動画を展開。今夏公開されたWEBドラマ「時代に流されたシャウエッセン。」は、池井戸潤の小説を彷彿とさせるような商品開発秘話が描かれており、ネット上では「本格的な企業ドラマ」、「和牛やのにポーク加工品」、「クオリティーが高すぎて、ついつい見入ってしまうw」と話題となっている。なお同動画内でも重要なシーンで“パリッ音”が効果的に使われている。

 また近年では、YouTuberなどによる『シャウエッセン』を使った「ASMR」の投稿も増えている。“パリッ音”を始め、ゆでている際の「グツグツ音」まで収録しており、SNS上では「CMばりに良い音出してる」、「この音聞いたらお腹空いてきた」といった声が寄せられている。

 比恵島氏は、「今年は発売35年目にして、レンジ調理も解禁するなど大変革を遂げてきました。今後も“パリッ音”をベースに、『シャウエッセン』で新たな挑戦ができればと考えています」と語っている。