NHKで放送中の大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(毎週日曜 後8:00 総合ほか)。第2部の主人公・田畑政治役の阿部サダヲがクランクアップから数日後、取材に応じた。「宮藤官九郎さんにいい裏切りもらった」と、全47回を振り返りつつ、27日から放送される第40回以降の見どころを語った。

【写真】第40回の場面カット

――クランクアップしたいまのお気持ちは?

【阿部】近現代の歴史を勉強していなかったんだな、と思いましたね。五・一五事件も二・二六事件も知らなかったことが多くて。こういうことがあって、1964年にオリンピックができたんだな、って。自分でも勉強になったし、こんなに面白かったんだ、って。面白いから皆さんにも知ってほしいな、と思いました。

――手応えを感じた場面は?

【阿部】プールサイドでクルッと回ってストップウォッチを押す動きを小学生が真似してくれているみたいなんです。田畑政治さんのひ孫さんも真似してくれているって。「まぁーちゃん、頑張れ」という手紙もいただくので、小学生のハートは掴んだのかなって思います。

――宮藤官九郎さんの脚本を最後まで演じて思うことは?

【阿部】放送がはじまる前は、「日曜日のよる8時に笑いが起こる」と思っていたんですけど、皆さんから「泣けた」という感想を聞くことが多くて。笑いもあるんですけど、けっこう泣ける。宮藤さんからいい裏切りをもらったな、と思いました。

 放送を観ていると、撮ったのにカットされている部分も多い。カットされた中に面白いシーンもあったと思うんですけど、たしかにいらなかったかな、と思うシーンもあって(笑)。そういういらないかもしれないものも書いておく宮藤さん、それでも脱稿した後、「書き足りない」と言っているんですよね。「書きたいネタがたくさんある」って。すごいですよね。

――印象に残っているのは?

【阿部】人見絹枝さんのところですね(第26回)。アスリートを応援したくなる気持ちで泣けるし、第25回から第2部がはじまったと思ったら、第26回まるごと人見絹枝物語で、主役は田畑政治じゃないんだ…という裏切りもありましたね。そういうところが、宮藤さんすごいな、と思っていました。

――オリンピックに魅了され、裏切られ、励まされ、翻ろうされる物語だったかと思いますが。

【阿部】田畑さんのせりふの中に、オリンピックは「2週間かけてやる盛大な運動会、それ以上でもそれ以下でもない」というのがあったんですが、それでいいんじゃないか、という気がしています。「世界中の人が集まってくる運動会」っていい表現だな、と思う。1964年東京大会の閉会式で各国の選手が入り乱れて自由に行進をしたことが評判よくて、それ以降、定番化したっていう。いろんな国の人が和気あいあいと写真を撮りあって、すごくいい光景だったと思うし、そういう姿を見て誰も文句いわないですよね。

――好きなせりふ、シーンは?

【阿部】周りの人が聞き取れないほど早口で、うるさいなって思われているかもしれないですけど、「スポーツで日本を明るくするんだ」とか、ちょこちょこ良いことも言っているんです。(1932年ロサンゼルス大会で)選手たちに「何がなんでも金メダル」「全種目制覇」「一種目も失うな」と言ってましたけど、これが第40回以降、効いてくるので、楽しみにしていてください。

 でも「何がなんでも金メダル」なんて、言っちゃダメですよね。あれはよくない。それでダメになっちゃうこともありますもんね。プレッシャーをかけすぎちゃいけない。「頑張れ」は…いいんじゃないですか? (1936年ベルリン大会の)「前畑、がんばれ」は盛り上がりましたからね。1964年東京大会では「予選落ちする選手も楽しめる大会にしたい」と言うんですよ。田畑さんも成長したな、と思ってうれしかったです。

――『いだてん』に出演して得たことは?

【阿部】出演する役者の数が多くて、嘉納治五郎役の役所広司さんはじめ、普段、なかなかお目にかかれない方とお芝居できてよかったと思いますし、ショーケン(萩原健一)さんともご一緒できたことも自分の中に残るものですね。

――第40回の見どころについて

【阿部】第40回は、いきなり僕が落語みたいなことはじめたりします。(古橋廣之進役で)北島康介さんが出ます。カエル(本物!)を食べています。監督が平気な顔して「北島さん、一番もりもり食べてくだい」と指示を出していました。そこはぜひ観ていただきたい。いままでの『いだてん』とはまた違う感じに見えると思いますし、ここからまたはじまるって感じがすると思います。

■第40回以降のあらすじ

 1940年(昭和15年)東京オリンピックは幻となった。嘉納治五郎(役所広司)の悲願もろとも灰となった東京。焼け野原で、田畑政治(阿部サダヲ)は決意する。「この東京で、オリンピックをやる」。

 選手育成もままならない中で古橋廣之進(北島康介)を見出し、国際大会復帰を目指しマッカーサーとも直談判。田畑は、都知事となる盟友・東龍太郎(松重豊)や、40年大会の無念を抱えた元選手・岩田幸彰(松坂桃李)らを仲間とし、目標へと突き進んでいく。

 1959年(昭和34年)。満を持して臨むIOC総会を前に、招致の最終スピーチを誰に託すかが問題に。五輪反対論者のジャーナリスト・平沢和重(星野源)を熱心に説得する田畑。彼は嘉納を看取った人物だった。

 同じころ、脳出血に倒れた古今亭志ん生(ビートたけし)は、半身麻痺と闘っていた。志ん生の「オリンピックまでに高座復帰」という願いを後押しする弟子の五りん(神木隆之介)。五りんの父も五輪の候補選手でありながらその夢が絶たれていた。その縁が彼を東京オリンピックへと呼び寄せる。

 尊い命と世界との絆。多くを失った戦争を経て、文字通り「平和の祭典」を目指す田畑。その夢の大きさゆえに、戦後政治や外交が立ちはだかるが、その壁を、オリンピックを愛する人々の情熱と才能で乗り越えていく。