Official髭男dismの1stアルバム『Traveler』が、先週10/21付オリコン週間アルバムランキングと週間デジタルアルバムランキングで共に初登場1位を獲得。最新10/28付オリコン週間ストリーミングランキングでは、「Pretender」が22週連続1位を記録。今年ブレイクを果たした彼らは、その圧倒的なセールス力を証明してみせた。Mrs.GREEN APPLEやKing Gnuなどのブレイクにより、再び注目を集めているバンドシーン。その新たな流れを象徴しているのが、Offical髭男dismだ。彼らが大きく飛躍した理由はどこにあるのだろうか?

【動画】ストリーミング22週連続1位の「Pretender」MV

◆優れたポップセンスや音楽性によって幅広い層のリスナーを獲得

 Mrs.GREEN APPLEやKing Gnuなどのブレイクにより、ここ数年、再び大きな注目を集めているバンドシーン。2010年代は“4つ打ちビートのダンサブルな楽曲によって、フェスやイベントで人気を得る”というのがトレンドの中心だったが、Mrs.GREEN APPLEやKing Gnuはフェスに集まるオーディエンスだけではなく、優れたポップセンスや音楽性によって幅広い層のリスナーを獲得している。その新たな流れを象徴しているのが、Offical髭男dismだ。

 Official髭男dismは、2012年に島根県松江市で結成。メイン・ソングライターの藤原聡(Vo&Pino)を中心に、歌モノのポップミュージックを追求する4人組ピアノポップバンドだ。2018年4月にフジテレビ系ドラマ『コンフィデンスマンJP』主題歌のシングル「ノーダウト」でメジャーデビュー。さらに同年10月に発売されたEP『Stand By You EP』がスマッシュヒットを記録するなど、確実に知名度を上げてきた。

 “髭の似合う歳になっても、誰もがワクワクするような音楽をこのメンバーでずっと続けて行きたい”という思いを込めたユニークなバンド名(通称・ヒゲダン)が一気に広まったきっかけは、今年5月に発売された2ndシングル「Pretender」。映画『コンフィデンスマン JP』主題歌の表題曲は、Apple MusicやSpotify、LINE MUSICなどのストリーミングサービスで圧倒的な強さを発揮。4/29付週間ストリーミングランキングで49位に初登場して以降、19位→16位→7位→2位と順位を上げ、登場6週目で1位を獲得。そのまま22週連続で1位をキープ、あいみょんの「マリーゴールド」を抜き、「連続1位獲得週数」記録を歴代単独1位となった。「Pretender」はまちがいなく、2019年最もヒットした楽曲の1つと言っていいだろう。

◆“聴かせる”デジタル戦略がアルバムヒットのカギ

 きらびやかなギターフレーズ、洗練されたピアノの響きから始まる「Pretender」は、ミディアム・ナンバー。Aメロ、Bメロ、サビというわかりやすい構成とドラマティックなメロディーラインからは、多くのリスナーに訴求できる優れたポップセンスが伝わってくる。「Pretender」は、“ふり”をする人という意味を持つ。歌詞に登場する“僕”は“君”に対して強い恋心を抱いているが、ロマンスに発展する見込みはまったくない。頭のなかでは彼女の恋人であることを想像し、現実では何でもない“ふり”をする。そんな切ないシチュエーションを描いた歌詞もまた、この曲が性別や年齢を超え、幅広い層の聴き手を得た理由だと思う。

 さらに特筆すべきは、しっかりと韻を踏んだ歌詞、そして、ブラックミュージックのテイストを感じさせるリズム・アレンジ。つまり、彼らの音楽的ルーツの1つであるR&B、HIP HOPなどの要素を取り入れながら、誰もが楽しめるJ-POPに結実させているのだ。「Pretender」は、ヒゲダンのベーシックなスタイルを端的に示すと同時に、コアな音楽ファンを唸らせる優れた音楽性を証明していると言えるだろう。

 その「Pretender」の2ヶ月後には、シングル「宿命」を発売。『2019 ABC 夏の高校野球応援ソング/テレビ朝日系『熱闘甲子園』テーマソングに起用されたこの曲は、夏の間を通し、多くのリスナーの耳に止まったはず。「宿命」も週間ストリーミングランキングで好成績をキープしており、7/22付で7位に初登場し、8/11付以降、10週に渡ってTOP3を維持している。

 また、アルバム『Traveler』の発売前のフックとして、9月20日から公開されたアニメーション映画『HELLO WORLD』の主題歌「イエスタデイ」をデジタルとストリーミングで先行配信。壮大なストリングスを取り入れたこの曲もまた、週間ストリーミングランキングで10/14付より3週連続2位を記録している。こうしたタイアップ路線の前哨戦としてあったのが、先行リリースしてきたデジタルやストリーミングを通して、旬なタイミングでリスナーに届くようにしっかりと“聴かせる”ことにある。シングルの地続きに発売されたアルバムのヒットは、いわば必然と言える。

◆メンバーそれぞれが楽曲制作を担うクリエイター集団としての可能性

 また、音楽性がさらに広がっているのも本作の特徴でもある。ブラックミュージックを中心に、ギターロック、エレクトロなどを自在に取り込み、自らのポップスの枠を大きく広げている。

 さらにメイン・ソングライターの藤原だけではなく、他のメンバーも作詞・作曲を担当。楢崎誠(B)が制作を担当した「旅は道連れ」は、メインボーカルをメンバー全員が担当した軽快なナンバー。小笹大輔(G)が書き下ろした「Rowan」はトラックメイクをillicit tsuboiが手がけたクラブミュージック色の強い楽曲で、いずれもヒゲダンの新たな表現につながっている。以前から「ジャンルに捉われず、グッドミュージックを追求したい」と発言している彼らだが、本作によって、そのスタンスは明確に示されたと言っていい。今後はバンドの枠も超え、メンバーそれぞれが楽曲制作を担うクリエイター集団としての存在感を高めていく可能性もありそうだ。

 高い音楽性と幅広いリスナーを魅了するポップネスを兼ね備えた『Traveler』は、2019年の音楽シーンを代表するアルバムと言っても過言ではないだろう。10月26日からは、アルバムを引っ提げたキャリア史上最大規模の全国ツアー『Official 髭男 dism one-man tour19/20』がスタートする。日本を代表するアーティストに向かって突き進むことになりそうだ。

(文/森朋之)