ドールハウスをはじめ、大人のコレクターズアイテムとしても人気のミニチュア。近年では、各地で教室も開かれ、コレクターだけでなく作り手も広がりをみせている。そこで今回、日本の伝統的な和定食「アジの開き定食」が海外からも注目を集めたミニチュア作家・田波亨さん(活動名Petit Palm/プチパーム)にインタビューを実施。精巧ミニチュアを創り出す極意、愛用アイテムを聞いた。

【写真】大反響の「アジの開き定食」に精巧なトースターも…驚きのミニチュア作品ずらり!

■思いついた制作方法や材料は「とにかく試して必ず作業工程の記録をとる」

――リアルすぎる「アジの開き定食」にSNS上では「今日のオカズを投稿しているのかと思った」などの声も上がっていました。

【田波さん】 ありがとうございます。日本ならではの作品にもかかわらず、Instagramでは海外の方からも多くの反響を頂いたことに驚きました。主役のアジは、美味しそうな焼き加減になるよう焼き目にこだわり、また、全体の雰囲気として、日常の食卓感が伝わればいいなという思いで仕上げました。

――定食には「わかめと豆腐」のお味噌汁、ほうれん草のおひたし、卵焼きといった日本の伝統的なおかずがセットになっていて、まさに「日常の食卓」を感じました。ご自身のお気に入り作品は?

【田波さん】 「鯛茶漬け定食」です。この作品では食器類は何度も試作を重ね、色合いや和食器の質感、鉄瓶の重厚感にこだわり制作しました。一点一点、完成まで工程数が多かったので根気が入りました。

――近年、数多くのミニチュア作家が活躍されていますが、ご自身ではどんな部分が“田波作品”の強みだと感じていますか。

【田波さん】 実物と同じように仕上げることにこだわっているので、作りが細かいことだと思います。例えば家電作品のコンセント、オーブントースターの背面や開けた時に焼き網がスライドして出てくるといった部分ですね。

――リアルな作品を作る秘訣を教えてください。

【田波さん】 本物に近づけられるよう、思いついた制作方法や材料は「とにかく試して必ず作業工程の記録をとる」ということです。特に初めての物を作る際には試作が多くなるので、記録を忘れないよう心がけています。制作に入る前には、作業工程や材料をある程度予測立てて準備をしますが、一回で納得いく形になることはほとんどありません。ですが、試作段階での制作方法、合わなかった材料であっても、他の作品を制作する時に活用できる場合があるので作業記録は大切だと感じています。何より手を止めずにとかく試すということを重要視しています。

■制作時は常に試作と失敗を繰り返してようやく完成

――ミニチュア歴3年とうかがいましたが、制作を始めたきっかけを教えてください。

【田波さん】 きっかけは、買い物中に偶然見かけたドールハウスのキットとその横に並べられていたミニチュアやジオラマの本を読んだ時です。数ミリ~数センチの作品がとてもリアルに再現され、その世界観に魅了されて時間を忘れて食い入るように立ち読みしていました。同時に、20代前半の頃にインテリアデザイナーを目指して学校に通っていた頃の授業を思い出しましたね。インテリア関連の道は諦めてしまったのですが、ミニチュアやドールハウス制作を始める決め手になったのはインテリアのように「自分の思い描く空間を表現できること」と「好きな模型制作」、この2つ要素が自分の中で合致したからです。

――ミニチュア制作で難しいのはどんな部分でしょうか。

【田波さん】 やはり、どれだけ本物に近いものが再現できるかということですね。一回で完成することはめったに無いので、制作時は常に試作と失敗を繰り返してようやく完成という流れですね。

――制作時に欠かせない愛用アイテムは?

【田波さん】 デザインナイフ、針や楊枝など先の尖ったもの、ピンセットはよく使います。デザインナイフは切ったり形を整えたり、針などは質感を表現するために使用します。制作時はとても小さい物を扱うので指で掴んだり、保持したりすることが難しくなるのでピンセットだけでも作業に応じて3~4種類ほど使い分けるときもあります。

――最後に、ミニチュア作りの魅力を教えてください。

【田波さん】 小スペースに自分の思い描く大きな空間やデザインを自由に表現できることだと思います。家の造りから、家具や家電、装飾品、食べ物から全体の雰囲気、イチから全てを自分の納得いくまでできるのは魅力的だなと感じています。