歌舞伎俳優の松本白鸚(77)が21日、東京・帝国劇場で行われたミュージカル『ラ・マンチャの男』で、同公演の上演回数が1300回となり、特別カーテンコールが行われた。

【写真】大きな花束を掲げ…笑顔の松本白鸚

 1969年4月の初演から50年間にわたり、主演を務める同ミュージカル。カーテンコールでは、アルドンザを演じている瀬奈じゅんから白鸚へ花束が。その後、あいさつした白鸚は「初演以来、50年だそうでございます。ただ、一生懸命に無我夢中でやっておりましたけど、劇場に足を運びになったお客様方のおかげでございます」と観客に思いを伝えた。

 続けて「『ラ・マンチャ』をやっていて一つ思うことは現実と真実と申しますけど、私どもの生きているのは現実でございます。現実の世界は皆様方と同様に楽しいこと、うれしいことばかりでなく、苦しいこと、つらいこと、悲しいこともございます。でも、この『ラ・マンチャ』をやりながら、苦しみを苦しみで終わらせないで、苦しみを勇気に、なんとか悲しみ、つらさをそのままにするのではなく希望に変えたいと思ってやっておりました」と同ミュージカルに込めた思いを吐露。

 50年という間に出演者、関係者は他界してしまった人もいる。「その皆様方の思いを胸に毎日、『見果てぬ夢』を歌い続けております」と感極まりながら話すと「これからも命の続く限り、役者人生、人間として生きていきたい」と熱く宣言し、万雷の拍手を受けた。

 この日は65年の米・ブロードウェイの初演でアントニアを演じたミミ・タークさんが観劇した。夫のミックさんも演出補として白鸚と関係深い。ミミさんは「大変、感動しております。このすばらしい公演を拝見できて感動しております。このように引き継いでくださり感謝しております」と心からの祝辞を述べると、白鸚の目めには熱いものが。何度も涙を拭い「ミミさんのご主人のベックさんに1月、マーチンベック劇場の舞台の上で英語でリハーサルをさせていただいた。彼は懇切丁寧に教えてくださいました。それは忘れることができません」と返礼した。

 そして、キャスト全員で「見果てぬ夢」を歌唱。続けて、ミミさんを見やると「はるばるニューヨークから来てくださいましたミミさん親子のために、だいぶサビつきましたけど」と話し、英語版の「見果てぬ夢」を歌った。見事に歌い上げるとスタンディングオベーションの中、白鸚はミミさんに見つめ、ファンの声援に応えた後にステージを降りた。

 同ミュージカルが始まった69年は、まだ現在の同劇場が落成して3年後。当時、白鸚は26歳で市川染五郎を名乗っていた。その後、松本幸四郎となり、昨年1月には親子三代同時襲名を行い、幸四郎から白鸚に名を変えた。また『ラ・マンチャの男』はライフワークとなり、昭和、平成、令和という3つの時代を駆け抜け、白鸚が喜寿となる今年、通算上映回数1300回を突破することとなった。

 『ラ・マンチャの男』は、セルバンテスの小説『ドン・キホーテ』をもとにしたミュージカル作品。16世紀のスペイン・セビリアの牢獄が舞台で、作家・セルバンテス(白鸚)は教会を侮辱した罪で投獄される。泥棒や人殺しの罪をおった囚人たちは新入りのセルバンテスをこづきまわす。騒ぎをききつけた牢名主は、牢獄内で裁判をやろうと言い出す。セルバンテスは自分が書いた「ドン・キホーテ」の脚本を、牢獄内で即興劇として演じ申し開きをすることを思い立つ。他の囚人たちに役をふりわけ、その物語に巻き込んでいく…。