学研プラスより発行している、1話5分程度で読み切れるショートストーリーを収録した児童書「5分後に意外な結末」シリーズ。「2018年度『朝の読書』で読まれた本」(トーハン調べ)でも、小学校高学年、中学生を中心に高い人気を得ている。同シリーズの仕掛け人・学研プラスの目黒哲也さんに、発売のきっかけから今後の展開などを聞いた。今では類似タイトルも多く登場している“5分間”切り口の児童書。その中で同シリーズが子供の心を最も掴んでいるワケとは。

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■“朝読”用に企画 読んだ時のカタルシスがハマるきっかけに

――これまでシリーズ累計25冊が発売されている「5分後に意外な結末」ですが、まず初めに発売のきっかけを聞かせてください。

【目黒さん】このシリーズは、もともと学校図書館に向けたものを作ろうというところからスタートしました。というのも、小学校、中学校にはホームルーム等の前に「朝の読書(以下、朝読)」という時間があります。その時間に読んでもらえる本、特に中学生が気軽に読めるものを作りたいなと思ったのがきっかけです。

――「朝読」で読む本は自分たちで持ってくるんでしょうか。

【目黒さん】図書室にある本を読む子供たちが多いようです。学校図書室に置いてある本ならば、学習マンガや名作も認められているようです。

――小中学生に支持されている本として、「5分で意外な結末」はたくさんのタイトルが読まれています。子どもたちに支持されているのはどんなところだと思いますか。

【目黒さん】「5分」という時間と、最後にどんでん返しがあるような「意外な結末」、読んだ時に“カタルシス”がある分かりやすい構造だと思います。

――確かに、実際に読んでみましたが、予想できない展開に、短時間でグッと引き込まれてしまいました。ストーリーを構成する上でこだわっている部分は?

【目黒さん】「オチ」、「意外性」というのが、このシリーズの肝になります。ストーリーの落とし方や、意外性で物語が全てひっくり返るだけではなく、最後のちょっとした一言に気づきがあるような展開を意識しています。シリーズを展開していく中で「“飽きさせない”」というのは大きな目標のひとつです。

――1冊で30編前後が収められていますが、ストーリーは完全オリジナルのもの、原案があるものの2パターンあると思います。その理由は?

【目黒さん】展開している作品は、オリジナルが8割です。名作である作品を子どもたちが読みやすくアレンジしたものもあります。例えば、夏目漱石や太宰治、菊池寛の作品を原案にしたり、古典落語を取り入れたりもしています。

■読者層は中学生から小学校高学年、大人にまで拡大

――「朝読」をきっかけに多くの子どもたちから支持されていますが、その反響と読者層の変化について聞かせてください。

【目黒さん】「本を読まなかった子が読むようになった」という声をいただきます。私たちも子どもだけに読んで欲しいと思っているわけではなく、親御さんをはじめ、大人の方にも読んでほしいと思って作っています。編集部には70代の方からのハガキが届いたこともあり、幅広い年代の方に読んでいただいていると感じています。

――読者層が当初のターゲットだった中学生から、小学校高学年、大人にまで広がった理由は?

【目黒さん】読者が子供だからといって、悪い意味で子供っぽくしなかったこと。「5分後に意外な結末」シリーズ以外の中で、さらに「5秒後」や「5億年後」など、ストーリーの長さや切り口を広げ、飽きさせないための展開が、幅広い読者層に刺さったのではないかと思います。

――「5秒後」とはどんな本ですか?

【目黒さん】ページをめくると驚きの結末が展開します。

――では、「5億年後」は?

【目黒さん】菅原そうたさんの作品を原作に、小説と漫画を合わせたような作りになっています。「5億年」の時を舞台にした作品を軸に、個々の物語が展開されるのですが、最後に「5億年」というテーマでそれらが伏線として回収されます。

――シリーズ全体を見て、児童書っぽくない装丁が印象的です。装丁や挿絵にもこだわりがあるんですか?

【目黒さん】児童書らしくないものをイメージしています。休み時間に本を読んで過ごしている子って、「真面目」というわけではなく、「先をいっている」「大人っぽい」といったイメージがありますよね。そんなイメージを狙ってこのデザインにしました。大人の方に手に取っていただいているのも、そんなところが理由かもしれません。

■紙だから伝わる“楽しさ”「飽きさせない」を追求し進化する読書体験

――7月に発売された『5分後の隣のシリーズ ショートフィルムズ』は、「5分後に意外な結末」シリーズの公式ライバルとして企画されたとのことですが、企画立案の経緯をお聞かせください。

【目黒さん】「5分後に意外な結末」シリーズでは、展開の中でいろいろなチャレンジをしているんですが、大きい制約として“時間で縛る”とか“オチがある”とかいくつかの枠組みからは外れないようにしているので、そこではできないことを「5分後の隣のシリーズ」でやろうと思い、始めました。また、似たような本が他の出版社からもたくさん出てくるので、いっそのこと自分でも、「ライバル」的な存在を作ってみようと思ったのがきっかけです。

――「5分後の隣シリーズ」では、物語だけではなく様々な仕掛けがありますね。音声朗読が収録されている『意味がわかると鳥肌が立つ話』、映像や漫画も並行して進行する『ショートフィルムズ』は、児童書の枠を超えた展開を感じます。

【目黒さん】『意味がわかると鳥肌が立つ話』では、20編を朗読音声で聞くことができ、文章を読んでいるだけでは感じることのない“体感”があります。また、『ショートフィルムズ』では、25編の小説の間に、それらをつなぐサイレントマンガを配置し、またそのマンガの主人公となる女の子が観ている映画の体で、QRコードを読み込むとショートフィルム(実写)を無料で見ることができます。小説と連動した新しい読書体験を提案するシリーズになります。

――さまざまな側面から「本を読む」行動に移すきっかけが広がっていく印象があります。最後に、「5分後に意外な結末」シリーズとしての今後の展望をお聞かせください。

【目黒さん】発売当初から変わらないことですが、大きい目標として「読者を飽きさせない」ということを考えています。これまでとはちょっと違う、「5分後」「5秒後」「5億年後」のような、読んで楽しめる、本自体に驚きのあるものを作っていきたいです。

――“進化する児童書”という感じですね。

【目黒さん】今の時代、電子書籍やネットでコンテンツを楽しむことはできますが、形あるだって、まだまだやり残していること、伸びしろ、可能性はたくさんあると思います。これからも読者に楽しんでもらえる本を作っていきたいと思います。

(インタビュー・文/上原かほり)