京都市内を中心に開幕する『京都国際映画祭2019』(17~20日)のオープニングセレモニーが17日、世界遺産に登録されている京都・西本願寺の重要文化財である南能舞台で開催された。セレモニーでは「三船敏郎賞」の受賞者が発表され、今年は俳優の中井貴一(58)が選出された。

【写真】会釈をしながら登場、礼儀正しい姿を見せた中井貴一

 セレモニーでは、国際的な活躍を期待される俳優を表彰する「三船敏郎賞」の授賞式を実施。役所広司、仲代達矢、阿部寛、浅野忠信、佐藤浩市に続き、今年は中井が選ばれた。授賞式前に行われた取材会で中井は「三船さんとご一緒させていただいたこともある。京都で賞をいただけるのは光栄です」と感慨を語った。「賞というのは本当に励みとなる。もうすぐ60歳になる。この歳になって評価されるというのは『もういっぺん頑張れよ』と言われているような気がします。しかも先輩の名前が付いた賞ですから」と気を入れ直していた。

 三船さんとの共演を振り返り「朝、現場に付くと、ご自分の車の周りを掃除していた。『ほうきで掃いているおじさんがいるな』と思ったら三船さんだった。豪放磊落(ごうほうらいらく)に見えるんですけど、とても細やかな精神をしていらっしゃるんだなと思いました」と話す。直接、会話をしたことは少なかったそう。当時20代だった中井にとっては、いるだけでいきた教科書になった。「役者はいるということだけで何かを伝えられるようにならなきゃダメなんだな、と先輩を見て思いました。芝居のテクニックというより、存在感を作るのは、その人の歴史なんだと痛感しました」と懐かしんだ。

 『京都国際映画祭』の存在は知っていたが参加は初めて。「こんなに大きな映画祭なんだと伺って少々、びっくりしています」と驚きの表情を見せていた。京都は両親の出身地でもあり、撮影でも頻繁に使う縁深い場所。「未だに本籍地は京都。だから謄本を取るのに下京区に言わないと取れないので意外と面倒」と笑わせつつ「うちの中では京都弁。自分の中には京都の血しかない。撮影所にも、すごく思い入れがある。京都には特別な思いがある。京都が盛り上がるのはうれしいですね」と熱い京都愛を口にした。

 授賞式で奥山和由プロデューサーは「喜劇からシリアスな悲劇まで。また、DCカードでカッパとタヌキのぬいぐるみといたり、どんな役でも堂々とこなされる」と笑いも交えながら受賞理由を説明した。その後、スピーチで中井は「厳かな雰囲気と思ったら僕の番になったらラフな雰囲気になって、ありがたい」とにっこり。

 「デビューして40年が経ちます。こんなに長く役者を続けるとも、続けられるとも思っていませんでした」と話すと「いい先輩たちに恵まれたからだと思います。たくさんの遊びを教えてもらって、ここまでやってきたような気がします」と“最愛の先輩”という津川雅彦さんをはじめ、諸先輩に感謝した。「僕たちの仕事は伝承芸能では、ございません。しかし、時代劇だけは伝承だと思っています。先輩からお教えられたこと、所作をキチンとすることが時代劇を時代劇らしく残していく、僕たちがやらなきゃいけないことだと思います」と熱く語ると「京都の撮影所が華やかに、もっともっと華やかになるように。時代劇を当たり前に作れるように精進して参りたいと思います」と誓った。最後は「きょうは、本当にありがとうございます。幸せでした」と結んでいた。

 また、同時に日本映画の発展に大きく貢献した製作関係者を賞する「牧野省三賞」も発表。昨年8月になくなった俳優の津川雅彦さん(享年78)が選ばれた。日本映画の父と呼ばれる牧野省三は津川さんにとって祖父にあたる。授賞式には代理で長女の真由子が出席。生前に受賞の打診があったが「身内が賞をもらって、どうすんだ」という津川さんの思いで辞退。ただ、今年は牧野省三の没後90年という節目も重なり、賞を受けることに。真由子は「きょう、お墓参りをして賞を報告しました。きっと、監督と一緒にここに立ってもらっているんじゃないかな」と晴れやかな笑顔を見せていた。

 同映画祭は、1997年から開催されてきた京都映画祭の伝統と志を引き継ぎ、2014年に誕生し、今年で6回目。「映画もアートもその他もぜんぶ」をテーマに、映画以外にもアート、パフォーマンス、工芸などさまざまな分野を対象に展開する。