元宝塚歌劇団雪組男役トップスターで、現在は女優・タレントとして活躍する早霧せいな。在団中、「5作連続客席稼働率100%超」の宝塚史上初の記録を作るなど、多くの宝塚ファンに愛された男役だ。そんな彼女が宝塚退団から2年経った今、事務所所属の発表や、初の著書『夢のつかみ方、挑戦し続ける力』の発売など、活躍の場を広げ始めている。今だから話せる宝塚時代のこと、憧れ続けた男役の理想と現実、退団から2年の過ごし方、今後の展望について聞いた。

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■退団後の2年は、活動しながら充電していた期間

――今年8月に新事務所所属が発表されました。退団後2年というタイミングで新しいスタートを決めたきっかけを教えてください。

【早霧せいな】 14歳から、「宝塚で男役をやる」という夢を叶えることに情熱を注いできたので、退団後は、「それ以上に情熱を持てるものがあるのかな?」という気持ちとしばらく向き合っていました。2年経って、やっと「本来の自分」を思い出し、自分のペースがわかってきて“情熱”だけにこだわらず、柔軟に活動してもいいんじゃないかなと思えるようになったんです。もっといろんな活動をしていきたい、やっていくべきじゃないかなという気持ちになったのが大きかったですね。

――宝塚を退団されてから2年の間に、それまでできなかったことにいろいろ挑戦されたとうかがいました。

【早霧せいな】 キックボクシングやボルタリングに挑戦しました。次は、空手をやりたいなと思っています。宝塚時代はスキーを控えていたんです。なので、いつかスキーもやってみたいなと思っています。とにかく体を動かすことを楽しんでいますね。あと、宝塚時代は、外の舞台を見に行く心の余裕や時間が全くなかったんです。退団後は、ポップコーン食べながら映画を観ることだけでも嬉しかったですし、ミュージカルやストレートプレイの舞台もたくさん観にいきました。あと、在団中は控えていたディズニーランドにも遊びに行きましたね!

――それまで、行かれたことはなかったんですか?

【早霧せいな】 下級生の頃は好きで行っていましたが、責任あるポジションを与えてもらうようになってからは、そこに行って使うエネルギーがあるなら舞台で使おうと思っていたんです(笑)。今は、そのエネルギーを他のものに向けられるようになりました。思いきり楽しんだら、力を抜く。そんな風に過ごしています。退団後の2年は、私にとって充電期間でもありました。

――充電に2年という月日が必要だったんですね。

【早霧せいな】 今思うと必要だったと思います。最初の1年は、四季折々を感じることを精いっぱい楽しみました。「日本の夏ってこんなに暑かったんだ」とか、「桜ってすごくきれいなんだなぁ」とか、「人々が花見を楽しんでいる姿って素晴らしいな」なんて思いながらとかね。日本人として、人間としてということを取り戻すのになんとなく1年かかりました。

――2年目はどのように過ごされたのですか?

【早霧せいな】 女性として、本来の私を呼び戻した時間でした。退団後も舞台やテレビに出演していましたが、「元男役としてファンをがっかりさせないような生き方をしなくては!」という考えがずっとあって、肩に力が入ったままだったように思います。2年目になった頃から、すっと力が抜けて「宝塚というバックボーンがなくても私は私なんだ」と実感することができました。

■トップにならなかったら、いられるまで宝塚にいたかもしれない

――それにしても、17年間在籍した宝塚を退団することは大きな決断だったと思います。

【早霧せいな】 私の人生において、宝塚を退団するということは大きなターニングポイントでした。宝塚としては次の世代に繋げていくということが大切なことでもあります。そのことは、在籍中にいろんなトップさんを見て、送りだしてきた後輩として常々感じていたので、自分がどのタイミングでトップとしてのバトンを渡すかは、自分の意思だけでは決めたくないなと…。

――もし、退団のタイミングを自分で決めていたら?

【早霧せいな】 自分でそのタイミングを選ばないといけなかったとしたら、いつまでも辞めるという決断はできなかったのではないかと思います。次の世代にバトンを渡すトップという立場になれたので、退団できたのかなと……。小さい頃から憧れ続けた「男役」をやれる場所は宝塚にしかないと思っていたので、いられるだけいたかもしれません(笑)。

■弱点だと思っていることを褒められたときに自信がもてた

――トップ就任以降、大劇場主演作が5作連続で客席稼働率100%超を達成。宝塚史上初の記録を作るなど、早霧さんと言えば華々しい活躍が思い起こされますが、ご自身で振り返るといかがでしょうか?

【早霧せいな】 若い頃は自分の中に、演じたい理想の男役像があったんです。頼りがいのあるパワフルな男性。でも、いざ男役を演じてみたら、憧れていたイメージの男性役を演じられていない自分に気づいたんです。自分がやりたいこととやれることの差を受け入れることに時間がかかりました。

――理想の男役に近づくためにされたことはありますか?

【早霧せいな】 宝塚では7センチのヒールを履いて踊るんですが、身長が低いことを気にしていた私はそれより1、2センチ高いものを履いていました。さらにそれだけでは足りないと思い、最初の1、2年は髪の毛も高く立てていました。大きく見せたいと気合いが入るほど、前髪が高くなる(笑)。でも、だんだん、それはバランスが悪く損をしているということに気づくんです。背が低いことをカバーするために間違った努力をしていましたね。

――そんな“理想と現実の違い”を受け入れられたきっかけは?

【早霧せいな】 自分にとって弱点だと思っていることを褒めてもらえたときです。「小さいけど、大きく踊っている」と言われて、「大きな人たちに混じって踊っているのに大きく見えるんだ!」と自信になったり、地元の友達が見に来てくれて、「小さいから、すぐどこにいるかわかる」と言われたりしたことで、「これってラッキーなことなのでは?」とコンプレックスを長所に思えるようになったんです。周りの人たちにヒントをもらいながら、受け入れていけた気がします。

■宝塚を出ても安心だという背中を後輩たちに見せていきたい

――宝塚を退団されて以降、目標とされている方はいますか?

【早霧せいな】 「どういう人みたいになりたいのか」と聞かれたら、実は「この人」という人はいないんです。素敵だなと思う人、憧れる人はもちろんたくさんいますが、理想としても、必ずしもそうなれるとは限らない挫折をこれまでたくさん味わってきたからこそ、自分だからできることを見つけて、そこに向かうことが好きなんだということを感じています。

――お話を聞いていると、早霧さんは宝塚卒業生の生き方として、新しい道をしめされていくのかもしれないですね。

【早霧せいな】 宝塚の現役の子たちが私の今後の活動を見て、宝塚を出ても安心だと思えるような存在として歩んでいきたいなと思っています。宝塚の顔として存在した3年間があるので、その責任はちゃんと果たしていきたいなと思っています。

■人生を共に歩み刺激し合える人との結婚が夢

――今後の展望、チャレンジしたいことを教えてください。

【早霧せいな】 早霧せいなを知らない人はまだまだたくさんいると思うので、私をご存知ない方たちの目にふれるようなお仕事をしていきたいなと思っています。この想いを実現してくれそうな事務所にお世話になることになったので、今後はそういう機会が増えるんじゃないかとワクワクしています。自分ができることを、表現者としてしっかりやっていきたいなと強く思っているので、色々なことにチャレンジしてたくさんの方に知っていただくことが今の私の夢です。

――最後になりますが、プライベートで叶えたいことはありますか?

【早霧せいな】 結婚です!(笑)。事務所に入る前に、「いずれは、結婚もしたいと思っています」と伝えたんです。結婚していない自分と、してる自分では絶対感覚が変わるんだろうなと思うんです。その感覚を知りたいんです。共に人生を歩んで刺激し合える人、自分自身でこれから作る家族という仲間を増やしていくのは、きっと楽しいだろうなと思っています。

(インタビュー・文/上原かほり)