前作『君の名は。』(2016年)から3年ぶりとなる新海誠監督の『天気の子』(公開中)が、映画大国インドの30都市で10月11日から公開されることになり、今月27日にニューデリー(首都)で先行上映(インドプレミア)が行われた。この日にあわせて初めてインド入りした新海監督は、上映を前に「インド上映は現地の若者たちによる署名活動のおかげで実現しました。インドの若者たちが日本の映画から何を得てくれるか、彼らの反応を楽しみにしています」と期待を膨らませていた。

【写真】タージ・マハルを訪れた新海誠監督

 公開前から140の国と地域での配給が決定し、トロント国際映画祭への正式出品、さらに米アカデミー賞の日本代表に選出されるなど、世界中から大きな注目と期待を集める本作。インドでは、『君の名は。』が人気を博し、今年2月にインターネット上で『天気の子』のインド公開を求める署名活動が起こり、5万人を超えるファンの署名が集まった。その声が新海監督本人や東宝の海外配給担当者、現地配給会社買い付け担当者の耳に届き、署名活動に応える形で公開が決定した(配給会社:Vkaao/興行会社:PVR Cinemas)。

 人口13億人を超えるインドは、年間映画製作本数(約2000本)と年間映画観客動員数(約20億人)が世界1位、さらに映画市場は年間24億ドルを超える、正真正銘の映画大国。しかし、インドの劇場で上映されるのは、物語とともに歌と踊りを楽しむインド映画(ボリウッド)が中心。日本映画が一般公開されること自体異例のことで、過去にインドで一般公開された日本映画は、『万引き家族』『ドラゴンボール超 ブロリー』の2作品のみ。『天気の子』は日本のオリジナルアニメ映画として、初めて一般公開される作品で、一般公開に合わせてインドプレミアを実施した日本映画は『天気の子』が初めてとなる。

 プレミア上映会場となったのは、ニューデリーで一番人気のショッピングモールにある劇場「サケットセレクトシティウォーク PVR cinema」。インド7都市で開催される『インド日本映画祭』のオープニングセレモニーも兼ねており、当日は全席招待、劇場内の複数スクリーンでインドファン合計約1000人が『天気の子』を鑑賞した。

 予約チケット200席に、半日で約2000人以上の応募が殺到し、さらに当日チケットにも長蛇の列ができ、400人以上が入手できずにあきらめる状況からも、インドでの期待値の高さが伺えた。10~20代を中心に、映画ファン、アニメファン、新海誠ファンが劇場を埋め尽くし、場内満席の大盛況。

 「shinkai! shinkai!」というコールが響き、異様な熱気が場内を包み込む中、上映前の舞台あいさつに登場した新海監督は、待ちわびたファンたちの大喝采と歓迎の拍手で迎えられた。興奮と歓声がやまない中、新海監督は「皆さんの署名活動のおかげでインドに来ることが出来て、心から幸せです。本当にありがとう。インドという日本からとても離れた国で、文化も異なり、さまざまな価値観を持つ皆さんに、『天気の子』をどんなふうに楽しんでいただけるのか、心から楽しみにして来ました。皆さんの心の中に、少しでもこの映画が何かを残すことが出来たら、とても幸せに思います。どうか映画を楽しんでください」と語った。

 舞台あいさつには、インド配給VkaaoのCEO・vaibhav(バベル)氏、インド大使の平松賢司氏も登壇した。

 本編上映中は随所で、手を叩きながら大声で笑い、隣の席の友人と肩を組み泣き、腰を浮かし腕を高く上げ大きな声援を送るインドの観客たち。ボリウッドを楽しむようにフルパワーで『天気の子』を楽しんでいた。上映後は拍手と大歓声が飛び交い、新海監督が再登壇した際も、割れんばかりの大喝采。

 Q&Aでは、前のめりに挙手をしてアピールをする観客であふれ、文字通りの大熱狂で日本映画史上初のインドプレミアを終えた。インドの熱を直に感じた新海監督は、「できれば3年後くらいにまたインドに帰って来て、皆さんに新しい映画を見せたいです。また再会しましょう!」とインドのファンへ呼びかけていた。

 翌日は、インド上映のきっかけとなった、『天気の子』のインド公開を求める署名活動を始めた、現地の男子高校生Divishth Pancholi(パンチョーリ)君と新海監督が対面。歓迎の花束を渡して感無量のパンチョ―リ君に、新海監督は「署名活動をしてくれて本当にありがとう!」と感謝を伝え、『天気の子』の感想や、将来の夢など監督がパンチョーリ君を質問責めに。最後は、いつか東京で再会し、監督自ら映画の舞台を案内することを約束した。

 対面を終えた新海監督は、「パンチョーリ君の熱意と行動力によって、この先日本とインドのアニメ―ション映画の形が少し変わるかもしれないし、日本の映画産業の形が少し変わるかもしれない。心からすごいことだと思います」と語っていた。

■インドプレミアを終えた新海監督の感想

 インドの観客の熱量に、本当に驚きました。国民性のようなものかもしれませんが、インドの観客は、全力で「自分はとにかく楽しむんだ!」という非常に前のめりの姿勢で映画を観ているのが印象的でした。あんなふうに映画を観ながら笑って泣いて、僕の名前を呼び大歓迎をしてくれて、一緒に鑑賞していて逆に感動をもらいました。

 映画を作っていて良かったと思わせてもらえるような瞬間を、インドでいただけたような気がします。日本のアニメーション映画がインドで劇場公開されることはほとんどないことですが、今回それが1人の若者の署名から実現しました。これをきっかけに、アニメ―ション映画の形が少し変わるかもしれないし、日本の映画産業の形が少し変わるかもしれない。パンチョーリ君の熱意と行動力がまさに「世界の形を変えてしまう」ようで、心からすごいことだと思います。

■最新の国内成績
7月19日(金)~9月23日(月・祝)までの67日間
観客動員:982万6766人 興行収入:130億7370万6100円
※本年度公開映画 興行収入No.1獲得

■世界公開日状況
香港:8月8日(済)、オーストラリア:8月22日(済)、インドネシア:8月21日(済)、ベトナム:8月30日(済)、シンガポール:9月12日(済)、台湾:9月12日(済)、韓国:10月30日、ロシア:10月31日、タイ:11月7日