40周年を迎えた『機動戦士ガンダム』シリーズにおいて、その文化の礎となったのは1980年代前半から続くガンプラだ。そんな「ガンプラ史」の背景には、モデラーたちの創造と革新の系譜がある。そこで今回、“髭ガンダム”として有名なターンエーガンダムを独自進化させたKameo氏(@kameo_01)と、『着ちゃった系ガンプラ』を制作しSNSで話題となったカトウコバン氏(@katocob0220)を取材。モデラーたちが楽しむ「ガンプラは自由」の精神文化について聞いた。

【if設定】“ミハルの死”を乗り越えたカイ・シデンの精神を具現化!ガンキャノンを着たらどうなる?

■最初は“拒絶反応”した「髭ガンダム」、数年後に“作品性”に触れてファンに(Kameo)

 異質な物同士を組み合わせて生まれる“創造”を楽しむKameo氏の代表作である「ターン“イェーガー”ンダム」のコンセプトを聞くと、「この作品に限らず、異質な物同士を混ぜ合わせたときに予想しなかった親和性を感じたり、逆に違和感が増幅する場合があります。そういう体験を楽しみたくて模型趣味をやっていますね」とコメント。シリーズの中では“独特”なデザインのターンエーガンダムに、雰囲気の異なるボディを合わせたらどんな化学反応が起きるのかを試してみたくなったのだという。

 この作品を制作するにあたりイメージしたものは“機械の巨人”。そこで、ベースのキットHGCC 1/144 ターンエーガンダムと、HG パシフィック・リム オブシディアン・フューリーの2つを組合せて完成したのが本作だ。

 この作品においてKameo氏は、「完成後に、ターンエーのパーツをたいして加工もせずにイェーガーに貼り付けただけじゃないか」という指摘を受けたこともあったのだそう。だが、「自分は楽しいのでオッケーだと思っています。むしろそういうテキトーな造形が自分らしさ、長所だと思うようにしています」と回答。そこには「ガンプラは自由」を楽しむ精神性が見え隠れする。

 そんなKameo氏だが、ターンエーガンダムの放送当時、最初は拒絶反応があったと振り返った。「当時、従来のガンダムとあまりにも違う独特なビジュアルと世界観に拒絶反応を起こして、ストーリーが頭に入らず序盤で視聴を止めてしまいました。けれど、数年後にゆっくり見直して、その評価が激変しました」

 確かに、ターンエーガンダムは“世界名作劇場ガンダム”とも言われ、演出面やストリー面で高い評価を受けている。その点について同氏は、「これは自戒を込めての話ですが…」と前置きしつつ、「ターンエーの世界に現実が追い付いたというか、或いは現実社会が退行したのか…。この作品で描かれている世界観は、当時よりもリアリティを増している気がします」と解説。そして、「今こそ多くの人が見るべき作品」だと強調した。

■“ミハルの死”を乗り越えたカイの表情を本作で表現(カトウコバン)

 ガンダムに登場するキャラクターに、まるでパワードスーツのようなMSを着せた『着ちゃった系ガンプラ』がSNSで話題となった、モデラー・カトウコバン氏。その着想の出発点を聞くと、「先ずは誰も見た事がない、作った事がない作品を作りたい!」との思いから始まったのだそう。そして、「ガンプラは歴史が長いこともあって新しい作品は生まれづらいとは思います。自分は技術がないぶん、アイデアで勝負するしかないんですよね(笑) 。そんなこんなで悩みに悩んで生まれたのが『着ちゃった系』なんです」

 そして、モビルスーツの前にはパワードスーツで戦っていたのでは?というコンセプトを元に、「パイロットがモビルスーツを着る」というアイデアを具現化。ファーストのキットを好むのはデザインがシンプルで、表現しやすいという理由からのようだ。

 そんな氏がこれまでに制作した『着ちゃった系』は、ジム、ズゴック、ガンキャノン、グフの4作品。その中でも、特にガンキャンの制作には力を込めたと教えてくれた。

 「カイの表情には力を入れました。ガンダムシリーズ屈指のエピソードである“ミハルの死”(機動戦士ガンダム第28話『大西洋 血に染めて』)をとおして男として一皮剥けて強くなった…そんなイメージを込め、本作のカイの表情を作りました」

 また、4作品目のジオン軍兵士、ランバ・ラルのグフについては、“若き日の血の気の多いラル”をイメージして制作したのだそう。これら『着ちゃった系ガンプラ』は、「どの作品にも思い入れがあります。その時の持てる技術を注ぎ込んで真剣に作っていますから」と、同シリーズへの“こだわり”と“愛情”を語ってくれた。

  “プラスチックの塊”。それが、作り手のアイデアによっては表現の手段になる。「これからも自分にしかできない“表現”をガンプラでしていきたい」と前を見据えた。

(C)創通・サンライズ