今年1月期のNHK「よるドラ」枠『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』(ゾンみつ)に続き、7月期の『凪のお暇』(TBS系)、さらに上映中の映画『火口のふたり』の体当たりの演技により、一躍注目を浴びている瀧内公美。ヒール役だけでなく、正統派のヒロインもでき、体を張ったお芝居も厭わない、セクシーさも持ち合わせた実力派中堅女優だ。“嫌な女”という得意ポジションを生かしつつ、一瞬にして視聴者の視線を奪っていく彼女には、この先、幅広いシーンの第一線で活躍していく女優のニオイがある。

【写真】怖さは微塵もない?瀧内公美の可愛らしさがにじむ控えめなしぐさ

 初回から終盤に至るまで高い満足度を維持し、惜しまれつつ9月20日に終了した『凪のお暇』。主演・黒木華をはじめ、高橋一生、中村倫也、市川実日子らメインキャストの好演ぶりはもちろんとして、この作品に別の角度から光を当てていたのは、瀧内公美の存在感だったのではないだろうか。

 瀧内が演じたのは、主人公・凪の元同僚で、キラキラ華やか系マウンティング女子たちのリーダー格・足立心。最初は凪に対して、凪が退社した後には「八方美人の空気クラッシャー」市川円(唐田えりか)をターゲットにし、仕事を押し付けたり嫌みを言ったり、仲間内で悪口を言っては盛り上がったりと、根性の悪さを炸裂させていた。

 瀧内のヒールぶりがとくに良いのは、身近にもいそうな生々しさに加え、イキイキと豊かな表情から底意地の悪さが滲み出ているところ。足立さんはわかりやすく怖い顔をしたり、冷たくきつくあたったりしない。目を三日月のように細めて、本当に楽しそうな笑顔で、ネチネチ、チクチクと相手の痛いところを突くのだ。

 気づくと、この足立さんに妙に惹きつけられ、凪や慎二、市川さんの背後で、のぞき見したり聞き耳を立てたりしつつ暗躍する姿を探してしまったり、その言動を目で追ってしまったりしていたという視聴者も多いのではないだろうか。

■所帯じみた気だるさや諦念もある、瀧内公美特有の色気

『ゾンみつ』では、瀧内は主人公・みずほ(石橋奈津美)の親友でありながら、みずほの夫(大東駿介)と不倫していた建設会社の事務員・美佐江を演じていた。世間体ばかり気にして、自分がゾンビ化することよりも不倫がバレることのほうを恐れる美佐江。一度不倫がバレてしまうと、感情を剥き出しにして、彼を自分にくれと妻に迫ってみせる開き直りぶりには、脱力感と狂気が漲っていた。

 そんな瀧内が注目を浴びたのは、40歳以上年上の笹野高史との濡れ場も話題になった『グレイトフルデッド』(2014年)。映画初主演作となった本作で、瀧内は孤独な人間を観察することを趣味とする「孤独ウォッチャー」のサイコパスを活き活きと演じた。序盤は抑え気味の演技だったが、徐々に暴走していくにつれ、美しさと無邪気で明るい笑顔がサイコパスぶりを強調し、彼女ならではの魅力全開となっていった。

 また、『日本で一番悪い奴ら』(2016年)でも大胆な濡れ場に挑み話題になったほか、『彼女の人生は間違いじゃない』(2017年)では、被災地・福島で父と二人暮らしをしながら市役所勤めをする傍ら、週末だけ上京してデリヘル嬢をする不安やもがき、揺らぎを艶っぽく演じた。同作ではその演技が高く評価され、『報知映画賞』や『毎日映画コンクール』など数々の映画賞の主演女優賞にノミネートされたほか、『日本映画プロフェッショナル大賞』新人女優賞などを受賞し、実力派女優としての認知度を高めている。

 そして、『火口のふたり』では、結婚式前に再会したかつての恋人(柄本佑)と、大災害を目前にしつつ、濃密な情事に溺れる姿を大胆に披露している。実質、柄本との二人芝居で見せている、食べる・喋る・交わるシーンの数々には、生きものとしての本能に従う熱っぽさ、なまめかしさが漂う一方で、どこか渇いた空気もある。

 瀧内が放つ色気には、所帯じみた気だるさや諦念もあり、これが『凪のお暇』放送とかぶる時期の公開となったこともあって、見栄っ張りなキラキラOL・足立さんとあまりにかけ離れた雰囲気であることから「同じ人物だと気づかなかった」という声も多数あがっている。

■その多面性から“セクシー枠”“嫌な女枠”の最前線へ

 これまでセクシー枠女優というと壇蜜や橋本マナミなどのグラビア出身フェロモン系、嫌な女や悪役では木村多江、水野美紀、山口紗弥加などの薄幸&狂気系がしのぎを削ってきた。

 そんななか、ガサツさや所帯じみた生活感、親しみやすさを醸し出すことができ、腹黒さや狂気を秘めながら、憂いや色っぽさも漂わせている瀧内公美は、その多面性から両枠の最前線で頭角を現してきている。

 華やかで、表情豊か。笑顔が可愛く、嫌な女や敵役など悪役にもビジュアル的にハマる、食虫植物のような魅力を持っている。瀧内公美の汎用性の高さは、今後、さらに活躍の幅を広げていくはずだ。
(文/田幸和歌子)