ごく普通の家族の何も起こらない朝の日常風景を描く。そんな日本テレビの朝ドラへの挑戦が、その実績から再び帰ってきた。昨年12月に好評を博した『生田家の朝』の続編が10月1日より平日朝に約1ヶ月間放送される。“民放朝ドラ”の可能性について小田玲奈プロデューサーに聞いた。

【写真】撮影現場を陣中見舞いした福山雅治とバカリズム

■数々の実績を残したことで朝ドラ続編につながった

 昨年12月に放送された日本テレビ系朝ドラマ『生田家の朝』がお茶の間に帰ってくる。脚本にバカリズム、企画・プロデュース・主題歌に福山雅治という異才によるタッグも話題を呼んだ同作は、朝の情報エンタテインメント番組『ZIP!』内の午前7時50分から約7分間放送。どこにでもいそうな普通の家族の朝の日常風景を描くショートドラマだ。

“民放朝ドラ”というこれまでになかった挑戦は、ギャラクシー賞テレビ部門の月間賞を受賞したほか、『ZIP!』だけでなく、午前8時から始まる『スッキリ』の序盤視聴率を押し上げる成果も残している。小田氏は自身も大のドラマファンであることから、「朝のこの時間帯にドラマを観たい視聴者はきっといるはず」との確信から同企画を立ち上げたことを振り返る。

「実際、さまざまな視聴者の声を拾ってみたところ、BSプレミアムでNHK朝ドラの再放送を観て、『生田家の朝』も観て、今のNHK朝ドラも観て、と朝ドラマの梯子をするほどのドラママニアの方もいました。そういうファンを呼び込めたと思います。ただ、朝は視聴習慣が定着しやすい時間帯であり、みなさん忙しいので、『生田家の朝』からそのまま日テレをご覧いただいた方も多かったかもしれません(笑)。いずれにせよ局側に朝ドラの可能性を証明できたことが、続編に繋がりました」

■朝の何も起こらない日常が映し出す家族の幸せ

 もちろんドラマそのものの内容も好評だった。毎話描かれるのは「何も起きない朝」という、ドラマチックさとは縁遠いエピソード。しかしそこは日常のおかしみを描写する才人であるバカリズム。7分間という短い時間に起承転結を盛り込み、きちんとオチをつける脚本の構成も見事だった。

 10月スタートのキャストには、ごく普通のサラリーマンの父親にユースケ・サンタマリア、さばさばした母親に尾野真千子、そして小2と中2になった子どもたちが引き続き続投。エピソードも相変わらず「テレビのリモコンが見つからない」など、どの家庭でも起こっていそうな出来事が描かれる。

「“当たり前”を描くのって、実はとても難しいということを前回やってみて実感しました。バカリズムさんも何も起こらないネタを探すのに毎回とても苦労されていましたし、役者さんたちも毎回同じセットで何も起きない芝居をするのは、毎日違う舞台のセリフを覚えるようなしんどさがあるそうです。演出は『3年A組‐今から皆さんは人質です‐』や『俺のスカート、どこ行った?』などを撮ってきた優秀なディレクター陣なのですが、夜のドラマでは見応えとなるキレ味の良さも、朝の生理的リズムには合わないということで、テンポをユルくしてもらいました。一見、のんきにやっているようで、実は各ポジションの力量が問われるドラマでもあるんです」

 それでいて観る側にそうした制作側の艱難辛苦を感じさせないのも本作のいいところ。
「苦労はしながらもみんなが楽しくやっていることが、おそらく画面からも伝わっていると思います。役者さんたちも本番であれだけセリフがあるのに、控え室でもずっと4人でしゃべっているんです(笑)。本当に朝からよくしゃべる家族ですよね。私も家族と暮らしていますが、朝はみんなバタバタしていて意外と会話がないんです。一家そろって朝ご飯を食べるご家庭も、実は少ないのではないでしょうか。そう考えると、生田家というのは理想の家族像というか、何も起こらない日常への小さな幸せを感じてくださった視聴者もいたのではないかなと思います」

■めざすは『生田家の朝』レギュラー化?ドラマ構成への仕掛けも

 そんな“終わりなき日常”のなかに、突如としてザワッとするエピソードが挿入されるのがバカリズムワールドの真骨頂。前作でも「悟の誰にも言えない秘密」回で、小1の息子・悟が公園で出会ったおじさんを家の押入れで飼う(!?)という衝撃のエピソードがあっただけに、今回の全20話も油断がならない。

「できれば『生田家』を年1回でもいいから恒例特番ドラマとしたい、というのが担当者の思いです。そのためには結果を出す必要があります。今回も『1話完結ものだから見逃してもいい』と思われないよう、ピリリとスパイスを効かせたことをやります。とくに後半は期待していただければと思います。内容というよりも、ドラマの構造そのものにびっくりする仕掛けを用意していますので、楽しみにしていただきたいです」
(文/児玉澄子)