テレビ東京系『孤独のグルメ Season8』が、10月4日よりドラマ24枠での放送が決定した。テレビ東京系の深夜ドラマでここまでシリーズが続いたのは本作が初めて。この人気の秘密と新シリーズへの展望を、菊池武博プロデューサー、小松幸敏プロデューサーに聞いた。

【写真】原作そっくり…『孤独のグルメ』新シーズンのポスタービジュアル

◆7年間、細かくアップデート 今シーズンは新兵器を投入

 『孤独のグルメ』は輸入雑貨商を営む井之頭五郎(松重豊)が仕事先で自由気ままに飲食店に入り、食べたいものを味わい尽くすグルメドラマ。12年1月にスタートすると、主人公のおいしそうな食べっぷりに深夜に空腹を訴える視聴者が続出。その後のグルメドラマ人気の先駆けとなった。

 ドラマの構成は前半が五郎と顧客との商談。後半が空腹を満たすべく近隣の店を探して食事。そして店を立ち去る場面でエンドロール、とシーズン1から一貫している。また、1話の撮影を2日間で完結させるスケジュールも、シーズン1から変わらない。

「松重さんにはかなりの量を食べていただくため、体力的に無理なく芝居ができるように1日がドラマパート、もう1日がグルメパートに集中できるスケジュールを組んでいます。また、通常、ドラマのモノローグは後日映像を見ながら収録するんですが、本ドラマではグルメパート直後にロケバスやお店を借りて収録。脚本家も現場に同席し、松重さんの感想を盛り込んだ、本当の"心の声"を書いてもらっています。もともと少ない予算で制作するために編み出した方法でしたが、食べた直後の新鮮な感覚が残っているうちに録ることで、よりリアルにできると松重さんもおっしゃっています」(菊池氏)

 もちろん7年の間にはアップデートされた要素も多い。たとえばシーズン1では最小限だったスタッフも、人気と共に徐々に増員。またシーズン5からは4Kに対応。さらに、今シーズンではグルメカットに"新兵器"が投入されるという。

「新兵器とは言っても、回転台に置いた料理を監督が手動で回すというアナログなもの(笑)。あらゆる角度から料理をお見せする、情報番組での定番の手法ですね。実験的に現場でやってみたことなので、使われるかどうか未定ですが、こうした試行錯誤はこれまでも結構やってきてます」(小松氏)

◆最重要はワクワクさせるお店選び 放送後もいい関係を築く

 何より「変わらない」なかで視聴者を飽きさせない大きな要素は、毎話登場する実在の飲食店の魅力溢れる佇まいと絶品料理だ。毎シーズン放送が決まると、今回は何を取り上げるか料理のラインナップを決める会議がまず行われ、その後その店をスタッフ総出で足と胃袋を駆使して探し出す。

「1日に4軒食べて回ることもあります。僕はシーズン1から参加しているのですが、かなり体型が変わりました(笑)」(菊池氏)

 ここぞという店には2度3度と通ったうえで交渉に入るが、対応に慣れていない個人経営店も多く苦戦することもあるという。

「『うちは常連さんの店だから』と断られてしまうケースはありますね。やはり最近は放送後に行列になってしまうことも多いので、そこは包み隠さずお伝えした上でご協力いただいています。また僕らスタッフも撮影が終わっておしまいではなく、なるべく取り上げたお店に通うようにしています。『やっぱり孤独のグルメに出なければよかった』と思われたら申し訳ないし、悲しいですからね。幸い今のところ、お店からのクレームはありません」(小松氏)

 同ドラマが長く愛される最大の秘訣は、こうした誠実なものづくりの姿勢にあるのだろう。なお、店選びで最も重視しているのは「松重さんにワクワクしてもらったり、驚いてもらったりすること」だという。

「シリーズを続けるためには、視聴者の方と同じくらい松重さんを飽きさせてはいけない。ここがいつも僕らスタッフの勝負どころです。実は今シリーズでは、松重さんがずいぶん前から食べたいとおっしゃっていたある料理が初登場します。僕らも松重さんをそのお店にお連れするのは本当にドキドキしました。松重さんに納得いただけたかどうか、ぜひオンエアで確かめてみていただきたいですね」(菊池氏)

文/児玉澄子

◆プロフィール

小松幸敏氏(テレビ東京 制作局 ドラマ室)
2012年、テレビ東京入社後、ドラマ制作室に配属。以降ドラマ部のAPとしてさまざまな作品に参加し、16年、ドラマ24『勇者ヨシヒコと導かれし七人』からプロデューサーに。これまでに『琥珀』(17年)、『カクホの女』(18年)、『リーガル・ハート』(19年)などを手がけた。『孤独のグルメ』にはシーズン5、シーズン7に参加。

菊池武博(共同テレビジョン 第3制作部)
2008年、共同テレビジョン入社後、第3制作部配属。これまでに、『めしばな刑事タチバナ』(13年)、『文豪の食彩』(14年)、『食の軍師』(15年)、『昼のセント酒』(16年)、『野武士のグルメ』(17年)、『日本ボロ宿紀行』(19年)などを手がけた。『孤独のグルメ』にはシーズン1から参加。シーズン4からプロデューサーを務めている。