1時間100円、サウナ付き、瞑想ルーム付きなどあらゆる広がりを見せているシェアオフィスやコワーキングスペース。中でも、一際凄まじい勢いで利用が広がっているのが“キャンピングオフィス”だ。野外やオフィス内にキャンプ用テントを設置し、そこで会議やプレゼンテーションを行うというのだ。キャンプ用品大手のスノーピークグループがサービスを開始すると、3年足らずで全国400社以上が利用しているという。その人気の理由とは。

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■解放的でリラックス、笑顔増えフラットな議論、いつもとは違った発想生まれる

 渋谷のビル街ど真ん中に張られたテント。東急が運営する明治通り沿いの複合施設『渋谷キャスト』の広場でも、スノーピークが協力し、法人向けオフィスとして時間貸しを受け付けている。1日2件前後の予約があり、いつもとは違った環境でのブレインストーミングや社員同士の関係性を向上させる、などの目的でミーティングが開かれているほか、商談の場としても利用されている。
 スノーピークビジネスソリューションズ事業戦略本部の佐藤佳さんにこの斬新なサービスのきっかけを聞いた。

――キャンプをオフィスに、とは斬新な発想ですよね。
【佐藤佳さん】きっかけは、当社の現代表が「自然の中で働いてみたら気持ちいいのではないか」と考えたことでした。自らキャンプ用品を持って高知県の山間部で1週間仕事をしてみたところ、五感が刺激され、新たな事業アイデアが思い浮かぶことを実感しました。この経験をもとに、自社のコミュニケーション活性化にもキャンプを取り入れたことが始まりです。

――実際、社内の反響はありましたか。
【佐藤佳さん】テントの中やタープの下で会議をしたり、焚火を囲んで語り合ったりすることが、チームビルディングをはじめ、考えが煮詰まったり、自由な発想を生み出したいとき、様々な効果を発揮することを体感していました。この効果をより広く社会に提供できないかと考え、3年前からキャンピングオフィスサービスの提供を開始しました。

――利用者からの反応はいかがですか。
【佐藤佳さん】サントリー食品様からは「日頃の議論よりも笑顔が多く、未来志向のポジティブな議論が弾んだ」「テントやタープを張る共同作業を通して、自然とチームビルディングが進んだ」という感想や、リクルートホールディングス様は「あらゆる業務がオンラインでできることを目指してはいますが、だからこそ親睦を深めたり、より確かなつながりが重要になるはず。効率的作業のためのオフィスから、よりよい人間関係をつくるオフィスへ。その流れの中で、自然は一つの大きな選択肢になるでしょうね。」というお言葉を頂きました。

――普段とは違う環境下で、チームワークを深める機会となるのかもしれませんね。
【佐藤佳さん】そうですね。ほかにも、利用した企業様から「解放的な空間でいつもよりリラックスできた」「初対面の人とも打ち解けるのが早く、議論も闊達になる」「役職や年齢が関係なくなったような平等な感じがして、自由に意見交換ができた」「香りや風などが心地良い刺激を与え続けてくれて、集中力を切らさずに仕事ができる理想的な環境」といった声もありました。

■キャンプをしない人にこそ体感してほしい、オフィス内テントだけでも会議に変化

――普段キャンプをしない人にとっては、抵抗が大きい気もします。
【佐藤佳さん】弊社の社会的使命は、「自然と人、そして人と人をつなげることで人間性を回復する」ことです。文明が進み、生活が便利になることと引き換えに、都市生活者は人間らしさを失っています。一方、日本のオートキャンプ人口は約7%に留まっており、本来はキャンプをやらない方々にこそ、「人間性の回復」が求められています。オフィスは人生の中でも長い時間を費やします。普段キャンプをしない、自然と触れ合う機会がない人にこそ、体感して頂きたいです。

――偏にキャンピングオフィスといっても、あらゆるサービスを展開されていますよね。
【佐藤佳さん】アウトドア空間を使った屋外でのキャンピングオフィスや、オフィスにキャンプギアを取り入れた屋内タイプ、更にコワーキングやシェアオフィスのモデルをスタートさせてきました。今年の4月からは、働き方改革関連法案に合わせてJTB様と共同でハワイのワーケーションが体験できるプランを展開。7月より、観音崎京急ホテル様と共同で、日中のワークはフィールドで、宿泊はホテルで行えるプランも提供しています。

――既存のオフィスの共用部にキャンプ用品を取り入れるのは、ハードルが低いかもしれませんね。
【佐藤佳さん】植物などグリーンを少し多めにするだけでも、リラックスできるなとか、居心地が良い空間になったと気づけると思います。また、「場」の力を使うことで、コミュニケーションってこんなに変わるんだ!というのも感じて頂きたいです。例えば、会議室をドーム型テントに変えて会議をしてみると、不思議と緊張がほぐれて、関係性がフラットになるなど。いつもの会議に変化が起こるはずです。

――キャンピングオフィスを利用した方に、どんなことを感じていただきたいですか。
【佐藤佳さん】自然を取り入れて働く気持ちよさをぜひ感じて頂きたいです。大自然の中なら、青い空、美しい森の緑、川のせせらぎ、鳥の声など。自然の恵みを五感で味わいながら行うミーティングは、思いもよらないアイデアや気づきを与えてくれるはずです。焚火を囲んで話をすれば、お互いの関係性が不思議と近づく感覚も体験もできるでしょう。寝食をともにすれば絆が生まれ、ただの同僚から、かけがえのない仲間になっていきます。

■シェアリングエコノミーはビジネスの場にも、居場所も出会いも選択肢も増える

――キャンプのみならずシェアオフィスサービスは年々拡大していますが、“シェアオフィス”についてどのような考えをお持ちですか。
【佐藤佳さん】世の中の大きな流れの一つだと考えています。車、自転車、駐車場、家など、様々な物を分かち合うシェアリングエコノミーは、オフィスの世界にも浸透していくことでしょう。なぜなら、お互いの持ち物をシェアすることで、自分の居場所が増えたり、新たな出会いが生まれたり、効率を上げられるなど、相乗効果があるためです。また、社員のライフステージの変化に対しても、柔軟に対応できる環境をつくることもできます。

――オフィス次第で新たな出会いも生まれるのですね。
【佐藤佳さん】当社は、自社オフィスと併設して、Camping Office osotoというシェアオフィス、コワーキングスペースを運営しています。この事業を始めてから、自社のお客様や街との交流も増えて、ビジネスはもちろん、人生を豊かにするきっかけになっていると感じています。また、普段から地域の人たちと関わることで、災害時の助け合いがスムーズに行えるなど、防災にも役立つと考えています。

 テレワークやシェアオフィス、コワーキングスペースの利用が広がり、もはや仕事は自社オフィスでやるもの、という概念は年々薄れつつある。『渋谷キャスト』のキャンピングオフィスを運営する東急の岩本拓磨さんは、それぞれのワークスタイルが多様化する中で、ワークプレイスはただの“場”ではなく、“使用する価値がある場”か、という視点で見られ始めているという。
 そこだけにしかない“付加価値”を求めて、キャンプしながら会議、というのも1つの選択肢として仕事の幅を広げてくれるかもしれない。