『ザ・トップテン』『夜のヒットスタジオ』『うたばん』など、ゴールデンタイムに欠かせなかった音楽番組。YouTubeやストリーミング配信の充実によりレギュラー番組の打ち切りが相次ぎ、遂には、『ミュージックステーション』も1986年の放送開始以来初の枠移動が決まった。しかし特番となれば未だに高視聴率を叩き出し、ネットも大いに沸く。音楽番組にいま求められることとは。

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■音楽を聴かせる以外の演出が要、いかに“ここでしか見られないもの”を作れるか

 33年間同じ枠で愛され続けてきた『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)が、10月から金曜後9時枠に移動する。俳優やスポーツ選手などのVIPゲストを招いてのアーティストとのトークや、生投票システム、SNSやデジタルメディアとの連動などを取り入れる予定だ。シンプルに生放送で歌を聴けるという、音楽番組の王道ともいえるこれまでのスタイルでは通用しなくなったことを痛感させる改編だ。

 一方、夏の音楽特番は軒並み快調。『テレ東音楽祭』は過去最高視聴率、『THE MUSIC DAY』(日本テレビ系)でも瞬間最高19.6%、『FNSうたの夏まつり』(フジテレビ系)ではSNSで宝塚の「U.S.A」披露などが話題になっていた。年末にも特番は変わらず各局で放送され、テレビ離れした若者も戻ってくる。

 レギュラー番組の1ジャンルとして欠かせなかった音楽番組は視聴者にとっても“イベント化”しており、先日の『テレ東音楽祭』のようにKARAのハラ復帰、ダブルユー復活のようなニュース性や年末定番となった『FNS歌謡祭』で見られるアーティストコラボなどの“イベントコンテンツ”が必須となってきている。
 『テレ東音楽祭』制作担当の星俊一プロデューサーは、いつでもどこでも音楽を聴ける今、いかに“ここでしか見られないもの”を作れるかが勝負だと話す。

――シンプルにスタジオで歌う以外の演出も特番ならではですよね。
【星P】テレ東はお金がない分豪華にはできないですが、演出や場所取りは毎回地道に足を動かして、知恵を絞っています。昔、華原朋美さんに馬に乗って歌ってもらったこともありました。スケジュール見てびっくりしたんですけど、まず馬が慣れる時間が1時間。乗る候補の馬も何頭かいて、テレビに慣れている馬、本人と相性がいい馬、予備の馬。で、当日決まるみたいな。あと「干支だから羊とか呼べないのかな?」とか普通に言い出すスタッフもいて、牧場に電話して歌番組に呼ぼうとしていたこともありました。

――でも、昭和の歌番組ってそういう感じでしたよね。
【星P】そうですね。いわゆる『ザ・ベストテン』的なノリに近くなっちゃうと思うんですよね。アーティストが決まる前に場所の仕込みをしていて、過去にあったのが、どこかの駅がとりあえず使えそうですと。ある駅とある駅の間、アーティストを乗せていいので、生放送中に電車が来て……という生中継をやろうとしていて。駅の下見に何回も行きましたが、放送の時間とラッシュの時間がぶつかるので、これは危険だから止めましょうと。常に新しいことをしていきたいので、色々とチャレンジはしています。

――地道な模索の結果、まともな内容になるという。
【星P】それでも毎年ドキドキするのが雨・風ですね。やっぱり画変わりを考えると、色々場所を探した結果、みんな屋外を仕込んじゃうので(笑)。今年初めて横浜ランドマークタワーの屋上で許可が下りて、そこでHey! Say! JUMPに歌ってもらったのですが、結構高さがあって雨風吹いたらどうするのと。その日しか彼らのスケジュールもなく、二週間くらい前から天気予報見ながら一喜一憂して、ひたすら祈るしかないという(笑)。

――ほかのプランを検討するのではなくて、ひたすら祈ったんですね(笑)
【星P】もう祈るしかないです(笑)。去年は去年で、横浜ランドマークの下で生中継をしましたが、風が強くて。そこがダメならアーティストの行き場もない。だからやるしかない。実際、物が飛ぶくらいめちゃめちゃ風吹いていて、スタッフがドラムやスタンドマイクを必死で抑えていました。そこでTRFさんやHYさんに出演してもらいましたが、放送でも飛ばされそうになるスタッフが映り込んじゃっていて。アーティストさんには申し訳ないですけど、そういうのもある意味、生放送ならではの“ここでしか見られないもの”ですよね。

■嗜好細分化進むいま、特番は“皆が知っている曲”で盛り上がれる「お祭り需要」

――テレビの力でなければ生み出せない、音楽番組特有の撮影方法もありますよね。
【星P】カメラ割りを決めるための“振りビデオ”というものがまずあるんです。たとえば音源が3分に決まったら、元のフル尺の曲をテレビサイズに縮小します。それがダンスものであれば、踊っている様子をビデオで撮ってもらう。それを送ってもらって、ディレクターがカット割りを決める。テレビでしか見られないアーティストの表情をどう切り取るか、各番組の腕の見せ所です。

――ファンにとっては、番組ごとに違うパターンや表情が見られるのは嬉しいですよね。
【星P】歌のカメラワークってめちゃくちゃ特殊で、バラエティーなどとは全然違うんです。何台ものカメラが動きながらケーブルも絡まずに撮るってすごい技術なんです。それが数字に結びつくかっていうと、レギュラー番組ではイコールではないですけど、技術向上のためにも、ネットには転がっていない見せ方を意識しながら続けていきたいですね。レギュラーなくして特番はできないですからね。

――次回の特番については、意気込みいかがですか。
【星P】音楽のレギュラー番組って全盛時代に比べるとなかなか辛くなっているところがあって、でもやっぱり大型特番になると、みなさんよく観てくれる。日本人はお祭り好きなので、フェスっぽい感じで観てくださっているのかなとは思います。今回は視聴率9.7%、次は2ケタいかないといけないような感じで、毎年ハードルが上がっていて正直1回ちょっと下がってほしいなという思いもあるんですけど(笑)、次も、視聴者の方々が良い意味でお祭り騒ぎできるようなコンテンツを作っていきたいと思います。

 米津玄師やあいみょん、岡崎体育のように、テレビではなくYouTubeやストリーミングサービスからスターが誕生する時代となったいま、個々がネットやアプリで好きな曲だけを聴き、嗜好の細分化はますます強まっている。過去に視聴した曲に合わせて新曲が提案されるYouTubeやストリーミングサービスでは、新たなジャンルの音楽に触れる機会は少ないかもしれない。

 かつては多くの人がテレビで情報収集していたため、好きなアーティストや流行りの曲の認識は共通していた。年に数回の音楽特番では、同じ歌を聴いて皆で盛り上がる瞬間の共有ができる。人々はそれを求めているからこそ、音楽特番の需要は消えないのだ。だからこそ、“皆が知っている曲”を紡ぐ音楽番組の存続に期待したい。