イタリアで開催された『第76回ヴェネツィア国際映画祭』で現地時間7日(日本時間8日)、コンペティション部門の授賞式が行われ、トッド・フィリップス監督の『ジョーカー』が最高賞となる「金獅子賞」を受賞した。世界三大映画祭(カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭)でアメコミ作品が最高賞を受賞するのは、初の快挙となる。

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 同映画は、DCコミックスのヴィラン・ジョーカーを主人公に、孤独だが心優しかった男が“悪のカリスマ”に変貌していく衝撃のドラマ。

 映画史を大きく塗り替える受賞となったフィリップス監督が、受賞スピーチで「ホアキン・フェニックス抜きでこの映画はありえませんでした」と主人公アーサー=ジョーカーを演じたホアキン・フェニックスへの敬意を表すと、会場からは同意した観客から盛大な拍手が巻き起こった。

 加えて「ホアキンは、僕が知っている中で最も凶暴で、最も勇敢で、最も心の広いライオンです。そして、美しい心の持ち主です。“狂気の才能”とともに私のことを信頼してくれてありがとう」と金獅子賞にちなんでフィリップス監督がユーモアを交えて感謝を述べると、「Grazie. Grazie mille.」(イタリア語で「ありがとう。本当にありがとう」)と返した。フィリップス監督がフェニックスをイメージして脚本を書き、撮影の6ヶ月前から2人で話し合いを重ね、撮影が開始されても最終日まで日々ジョーカーに関する発見があったと明かすように、監督とフェニックスが二人三脚で挑んだ作品で築いた信頼関係が垣間見える一幕も。

 審査員の一人であるカナダの映画監督メアリー・ハロンは「フェニックスの素晴らしい演技に非常に感銘を受けました。映画祭のルールが無ければ、彼は男優賞に輝いていたでしょう」と、本映画祭の上位の賞はダブル受賞できないという規則が無ければフェニックスは男優賞を受賞していたと称賛を贈った。

 フィリップス監督は「映画が完成した時はさまざまな感情があり、この映画で伝えたいことを観客は理解してくれるのかという不安もあった。ヴェネチアでのワールドプレミアで、映画祭のオーディエンスは私たちが表現したかったこと、伝えたかった事を理解してくれたと感じました」と、不安が自信に変わったとも語った。

 「アメリカや世界中でも同じように受け入れてもらえることを期待しています。ホアキンと僕はこの映画を誇りに思っています。私たちはこの映画に誠心誠意努
力しました。驚くかもしれませんが、この映画を制作することに対して多くの反対に直面しました。本当に誇りに思います」と完成まで困難な道のりについても振り返り、今回の受賞の喜びがいかに大きいものであるかを伺わせた。

 この受賞は、フィリップス監督の手腕やフェニックスの演技だけでなく、フィリップス監督が“いちばん信頼できるパートナー”と明かす、『ハングオーバー!』シリーズや『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019年)などの撮影監督ローレンス・シャー、『アメイジング・スパイダーマン2』(14年)など、映画とテレビ界において長きにわたる卓越したキャリアを誇る美術デザイナーのマーク・フリ
ードバーグ、衣装を担当した『アーティスト』(11年)、『ファントム・スレッド』(17年)でアカデミー賞を射止めたマーク・ブリッジスの仕事をはじめとする全てが評価された結果。もはやアメコミ映画としての枠を超えて、“歴史を変える”傑作として、映画史にその名を残すこととなった。

 ヴェネツィア国際映画祭ディレクター、アルバート・バルベーラは「今年もっとも驚くべき映画。アカデミー賞は確実だ」と絶賛。金獅子賞受賞作品が例年、今後の賞レースで話題をさらっていることからも、同作はアカデミー賞をはじめとする賞レースの台風の目となりそうだ。

 同映画は、10月4日に日本でも公開される(米国と同日公開)。