筒状クッキー『シガール』で知られている菓子メーカー「ヨックモック」。御礼、御祝、内祝などの贈り物に用いられるなど、老若男女から喜ばれるクッキーギフトで知られている。そのヨックモックから、一線を画す「こだわり製品」が発売された。それが『「わたしときどきCookie』」。全粒粉や含蜜糖などを使った、“より体に優しい”素材を使用している印象で、値段も一袋300円と、これまでの商品より大幅に手にとりやすい価格となっており、全国チェーンの高級スーパーや自然派コンビニでも販売されるなど、百貨店メインの販売経路を一変している。

【写真】ヨックモックといえばこれ!『シガール』など鉄板お菓子の詰め合わせ

 ギフト用お菓子として長年愛されてきたブランドが大きく舵を切った背景には、近年の健康ブームに便乗する狙いがあったのか、それとも何か特別な事情があったのか。マーケティング部グループ長の小野洋子さんに話を聞いた。
  
■スーパー、コンビニに行く人たちとの「接点」を作りたかった

――これまでのラインナップと一線を画す『わたしときどきCookie』は、どのような狙いで生まれた商品なのでしょうか?

「『わたしときどきCookie』は、お客様との接点を増やすことを目的に生まれた商品なのです。現状、ヨックモックブランドのメインの販路は百貨店。しかし、かつては休日に家族で楽しむ場所だった百貨店も、ライフスタイルが多様化し、多くの人にとっての身近な存在とは言い切れなくなってしまいました。また、ヨックモックブランドの商品のほとんどが贈答用ということもあり、どうしてもお客様との日常的な接点が多く持てないことが課題でした」

――その課題からスタートして、なぜ今回のような“健康を意識したお菓子”ができあがったのでしょうか? 昨今のブームに乗るという意図があったのですか?

「もちろん市場調査の段階で、“健康系お菓子”の市場が伸びていることは確認していました。ただ、ブームに乗ったわけではなく、新規事業の一環として取り組み始めたことです。まず、新たなお客様との接点を増やすためには、日常的に手に取ってもらえるものにしなければなりませんでした。そこで注目したのが『素材』です。普段ヨックモックブランドの魅力のひとつに、素材に出来る限り保存料・人工香料を使わず、ひと目で『心置きなく食べられる』と思ってもらえる点があります。そこで、より素材にこだわった、身体に嬉しいお菓子を作れば、お菓子を避けてきた人にも刺さるのではないかと考えました」

――たしかに素材へのこだわりは魅力ですが、消費者がヨックモックブランドに期待しているのは、純粋な「おいしさ」なのではないでしょうか? 健康を意識すると、どうしても味は二の次になってしまうのでは?

「たしかに、健康意識の高いお客様にとっては、味よりも機能性のほうが優先度高いですよね。おっしゃる通り『おいしさ』はヨックモックブランドの魅力です。だから、栄養機能にこだわった食品というのではなく、健康的だけれど、あくまで“お菓子”としての満足度は維持できるように意識していました」

「ザクザク派」「もぐもぐ派」どちらの意見も取り入れた

――具体的にどのように出来上がっていったのでしょうか?

「まず商品を作るにあたり、市場調査にはかなり力を入れました。商品の方向性を決めたのは、そのときに見つけた“あるデータ”です。それは、『30代の女性は自分のために使う時間・お金が少ない』というものでした。それなら、食べることで気持ちが上向きになれるお菓子が必要になるのではないかと。さらに、ターゲット像の女性約90人を集めて、クローズドの掲示板を運営。彼女たちの意見を元に、より詳細を詰めていきました」

――商品に反映された意見には、どんなものがありましたか?

「サイズやフレーバー、食感など、いろいろな部分に反映されています。たとえばサイズは、ひと口で食べられる大きさなのですが、それは彼女たちからの『食べている姿を見られるのが恥ずかしい』という意見を反映したもの。また、フレーバーは、『お菓子で一番食べたいドライフルーツ』のアンケートで一位になったイチジクを採用しました。意外だったのは、食感についての調査結果。ザクザクした食感派、しっとりモグモグの食感派、意見が真っ二つに分かれてしまい、両者相容れなかったのです。こうなったら両方作ろうということで、第一弾では、ザクザク食感のグラノーラと、モグモグ食感のイチジクを出しました」

――商品名の『わたしときどきCookie』も、これまでのヨックモック商品とは方向性が異なっていますよね。これはどのように決めたのですか?

「これも、いろいろなワードを挙げてアンケートをとりました。その結果、『あなたのことを考えています』といった、熱量の高いワードは好まれないことが分かりました。理由を掘り下げてみると、30代女性は、『べったり寄り添う関係よりも、適度な距離感がある関係を好む』ことが分かったのです。そのため、商品名・デザイン共に、主張が強すぎないニュートラルなものを意識して制作しました。パッケージのキャラクターは無表情なのも、見る方に好きに受け取っていただきたかったからです」

■すでに嬉しい声も 今後の課題は「価格帯」

――値段は一袋300円と、ヨックモックブランドの中では抑えていますが、これまでにない価格帯で挑戦することに対して、社内ではどんな反応がありましたか?

「その点は、苦労した部分ではありました。製造にあたっては、ほかのヨックモックブランドの製品を作っている工場ラインを利用しています。結果的に、お菓子としていいものができたので『こんないいものができるなら』と、社内の反響も変化してきた気がします。今後は、お客様のお声も聞かせてもらいながら、見直していくかなどを決めていくことになると思います」

――「消費者との接点を増やす」ことを目的に生まれた商品なので、今後はさらに販路を広げていく方針なのでしょうか?

「そうですね。卸先になっている高級スーパーや自然派コンビニのチェーンの数は増やしたいと思っています。普通のスーパーやコンビニで販売しないのか、という声をいただくこともありますが、価格帯が違うため生産ラインを見直す必要があり、現状はなかなか難しいですね。日常的に食べられるお菓子でありたいので、高くてはいけないだろうとは思っているのですが……。ただ、これまでの販路が百貨店メインだったことを考えると、それでも十分多くのお客様に手に取ってもらえるようになって、嬉しく思っています」

「健康系お菓子」のブームに乗ったかに見えた「わたしときどきCookie」。しかし、話を聞いてみると、しっかりとヨックモックブランドの魅力を受け継ぎつつ、新たな可能性にフォーカスしたお菓子であることが分かった。これまで、百貨店に足を運ばないと手に入らなかったヨックモックのお菓子が、その美味しさはそのままに、より身体に優しく、身近な場所で購入できるようになったことは、消費者にとっても嬉しい驚きではないだろうか。

(取材・文/坂口ナオ)