渥美清さん主演で49作(97年)まで続いた不朽の名作『男はつらいよ』が、ちょうど50年前の1969年8月27日に上映されたことにちなみ、都内で映画「男はつらいよ」”祝!50周年 寅さんファン感謝祭”イベントが開催された。第1作の4Kデジタル修復版が上映された後、山田洋次監督、倍賞千恵子、佐藤蛾次郎の3人がトークショーを行った。

【写真】笑顔でトークショーをおこなった山田洋次監督

 50年前の第1作が封切りされた日のことについて、山田監督は「この映画できあがって、スタッフ試写を見た時はひどく真面目なものを作っちゃったなと。スタッフたちは笑ったりしないのね。『自分たちは点検しているのであって、楽しんでいるんじゃない』っていう意識なのかなと思うけど。ちっともおかしくない映画じゃない。渥美(清)さんはコメディアンとして大スターで、僕は喜劇を作るつもりだし、会社も要求していたんだけど、そうなっていない、僕は失敗したと思っていた」と切り出した。

 そんな失意の底にいたという山田監督だったが「完成から封切りまで2ヶ月くらい、家で鬱々として、反省しながら。僕は寅さんを滑稽な人だと思ってなかった。自分のできの悪い弟というかな。お前、どうしてもっと真面目に生きていこうとしないんだって叱るような、腹立たしい思いをもって見ていた気がした。そんなにおかしい映画にならなくてもいいか、でもこれでおしまいだなと思った」とにっこり。

 そんな中、プロデューサーから劇場に来るように言われ、山田監督は初日の様子を眺めに行ったそうで「ドア開けたら『わっ』ってみんな笑っている。おかしいんだ、僕の映画って。本当によく笑うのでね。おかしいんだって思って。観客に教えられたというかな。だから、きょうのこと一生覚えていないといけないなと思った日が50年前のきょうでしたね」としみじみ。「あの頃は、日本人全体が元気だったんじゃないかな。今の時代は寅さんみたいな、いい加減ででたらめな人間が気軽に行きていけないような気がするね。きょうみたいに笑ってくれるとホッとするね、なつかしいね」と笑顔を見せた。

 12月27日には、シリーズの22年ぶり50作目『男はつらいよ50お帰り、寅さん』が公開。今回は車寅次郎の甥・諏訪満男(吉岡秀隆)の妻の七回忌の法要からスタートする。満男はサラリーマン時代に書いた小説が認められ、小説家に転身しており、サイン会を開催。その列には初恋の人で、結婚の約束もしていた及川泉(後藤久美子)の姿が。泉に再会した満男は「会わせたい人がいる」とジャズ喫茶に連れて行く。そこには、寅次郎の恋人のリリー(浅丘)がいた。懐かしい人たちとの再会、思い出す寅さんのこと。それが満男と泉に温かい何かをもたらしていく。

 山田監督は新作について「最初は、今の倍賞(千恵子)さんを映して、50年前を映すと『若い』と思っていたんだけど、意外と驚かないのね。俳優のみなさんたちのドキュメンタリーを撮っているような不思議な感覚でしたね。そんな中で渥美さんだけが年を取らない。幻影のような。改めて渥美清という人の独特の魅力を感じたりして、そういう不思議な映画ができあがった」と力説。倍賞が「(前田)吟ちゃんと『長い1本の映画を撮っているのかもしれない』って言っていたけど、それが今回の映画かな」と続けると、山田監督も「50年かけて撮ったんだね。これは映画史上初めてだし、もうないんじゃないかな」と手応えをにじませていた。