現在TOKYO MX、BS11で放送中、映像配信サービス「Hulu」他でも配信されているアニメ『ビジネスフィッシュ』。海外アニメのようなシュールさが漂い、一見チープに作られているようで、実はかなり野心的な作品だった。全編モーションキャプチャを用いて制作された、実写に近い感覚の3DCGアニメ。しかも、メインスタッフは、通常はバラエティーを主戦場とする人たち。アニメのフィールドに足を踏み入れたのはなぜ? 住田崇監督と、本作で自身アニメ初のオネエキャラに挑戦している小野賢章が答えてくれた。

【画像】アニメ『ビジネスフィッシュ』キービジュアル

 住田監督は、お笑い芸人・バカリズムの主演・脚本によるドラマ『住住』『架空OL日記』の監督や「戦国鍋TV」シリーズ、「セカイ系バラエティ 僕声」シリーズなどを手掛ける演出家。シリーズ構成は『ゴッドタン』などのバラエティー番組の構成作家やドラマの脚本家として活躍するオークラ氏。キャラクターや美術設定などのコンセプトデザインは、お笑いや演劇・テレビ番組などの美術も手掛けるニイルセン氏が担当している。

 キャストとして名を連ねる、魚脇タイ役の永岡卓也、ヒロイン乙姫舞役の武田玲奈、オネエのIKAちゃん役の小野賢章らは、アフレコでもプレスコでもなく、専用の特殊なスーツを着て、カメラの前で演劇のようにキャラクターを演じた。

 「ビジネスフィッシュ」は、フェイスブックメッセンジャー発で人気に火がついた、体は人間、頭は魚のサラリーマンというキャラクター。アニメでは、IT企業に勤める魚脇タイが、生意気で新人類な後輩、社内ゴシップ好きなOL、パワハラ全開な上司らに悩まされながら、仕事にコイに奮闘する姿を描く。

――全編モーションキャプチャで制作したというのは?

【住田】モーションキャプチャは、急速に発展していますよね。ですが、日本では手描きによるアニメーション制作がほとんどで、あまり活用されていない。そんな中で新しいことをやりたい、とプロデューサーが燃えていた。アニメ業界の人間ではない僕らでなければできないものを作ろうと取り組んで、結果的に変なものになっちゃった(笑)。

 モーションキャプチャってリアルな動きを表現したい場合に有効と言われてますけど、想像以上にリアルでしたね。実写を日本のアニメスタイルのルックで見ている感じ。CGのスタッフ(制作プロダクション:アイアンドエー)がものすごく優秀で、頑張ってくれたと思います。みんな目をキラキラさせていた。新しいことをやっている自負もあったと思う。

――いい意味で変なもの、なんですね。小野さんは、音声収録だけでなく、動きや表情までも同時に撮影・収録してどうでしたか?

【小野】アニメというより、せりふを覚えてお芝居したので、ドラマの仕事を1本やったという印象。僕が演じたIKAちゃんはオネエキャラということもあり、自由に楽しくやらせていただきました。楽しかったです。出来上がったものを見ても面白いと思いました。

【住田】日本ではモーションキャプチャを使って本格的にお芝居をする機会はまだあまりないと思うんですよね。演者さんには何もないところでお芝居してもらわないといけない。想像力が必要だから大変ですよね。

【小野】普段はアニメ―ションの動きに合わせてせりふを入れるアフレコが多いんですけど、『ビジネスフィッシュ』では、役者たちで動きや間を作りながらせりふを交わして、自分が表現したものがそのままキャラクターに反映されていたので、いままでにない感覚がありました。

――住田監督はテレビ東京で4月期に放送されたバーチャルYouTuberドラマ『四月一日さん家の』にも参加されていましたが、『四月一日さん家の』はアニメっぽいルックだけど、「ドラマ」だというし、『ビジネスフィッシュ』は実写っぽいけどルックがアニメ…もはやボーダーレス化していますね。

【住田】「アニメ」なのか、と言われると恐縮しちゃう。根底では、アニメを作ろうと思ってやってなかったですし。それでもモーションキャプチャとCGの技術者がいれば、『ビジネスフィッシュ』のような作品は作れるわけで…。現場でネーミングしようという話になってね、「アニドラマ」とか。

【小野】「アニマ」とか(笑)。

【住田】(笑)。今回は、物語があって、それを演者さんたちに表現してもらいましたけど、例えば『ビジネスフィッシュ』のキャラクターたちが自由に動いたり、発言するバラエティーを作って見たいと思いましたね。タイがMCひな壇に乙姫やIKAちゃん、海野ぶどう(落合モトキ)、蛸山八男(竹井亮介)、浅瀬課長(大津尋葵)が並んでトークしたり、ロケにでかけたり。小野くんの顔が見たい人もいると思うけど、IKAちゃんというオネエキャラのキャラクターだから言えること、面白く伝わることがあると思うんですよね。実写か、アニメか、はたまた別の何かか、そういう境界はますます意味を成さなくなっていくと思いますよ。

――アプリを使って誰でもアニメーションを制作してネットで発表できる時代です。モーションキャプチャは幅広く応用できる?

【住田】エンディングのダンスは、世界的な実力と実績を誇るダンスパフォーマンスグループ、s**t kingz(シットキングス)に、モーションキャプチャ専用スーツを着用してもらって、躍ってもらった。カメラを据え置きにして、一発撮り。そのデータにCGのキャラクターを乗せただけ。エンディングのダンスだけは一切、いじってない。リアルタイムで収録した生っぽさがあるし、s**t kingzのキレキレのダンスをアニメ―ションとして見られる新しさもある。

 モーションキャプチャを使えば絵を描かなくてもアニメーションが作れるってことは、コストダウンや省力化、効率化にもつながるし、普通にアニメーション制作の現場に浸透していくと思います。

【小野】将来的に、声優という職業はどうなるんですかね。口の動きにあわせてせりふをしゃべる技術は重要ではなくなって、圧倒的に声がいいとか、圧倒的に芝居ができるとか、何か武器をもたないと生き残れない。すでに、歌えてダンスもできなくちゃ、みたいなところがありますから。

――技術革新は確実にエンターテインメントを変えますね。

【住田】モーションキャプチャでアニメーションを制作する手法は、新しい選択肢として、いろんな可能性を秘めていると思うし、いままでにない魅力的な映像表現を模索するって、すごく大事な気がするし。『ビジネスフィッシュ』もいままでとちょっと違うものだからこそ、もっと知ってもらって、関心をもってもらえたら、活性化していいんじゃないかと思うんです。

■『ビジネスフィッシュ』
TOKYO MX、BS11:毎週日曜 深0:00~
Huluでも配信中(各週日曜 深夜0時より次週放送エピソードを先行配信)

魚脇タイ:永岡卓也
乙姫舞:武田玲奈
海野ぶどう:落合モトキ
蛸山八男:竹井亮介
伊勢えびか:藤井武美
浅瀬課長:大津尋葵
磯野もずく:白石優愛
IKAちゃん:小野賢章
ED振付/ダンス:s**t kingz(シットキングス)

■公式サイト
http://businessfish.jp/