この夏も全国のロックフェスで熱いステージを繰り広げているロックバンドのWANIMAが、6月21日にインディーズ時代も含めた全楽曲を音楽ストリーミングサービスで解禁した。その直後の週間ストリーミングランキングTOP100(6/24~6/30集計)で、たちまち8曲同時ランクインする現象が起こった。WANIMAほどの人気バンドであれば複数曲のランクインも不思議ではないのでは? と思いがちだが、データを見ればこれが実はかなりの快挙であることがわかる。

【動画】WANIMA「サブスク解禁“開催”しまーーーーす!」宣言

■ストリーミングでも好アクションのWANIMA

 定額制聴き放題である音楽ストリーミングサービスは、CDやデジタル販売とは異なる音楽の聴き方を生み出した。その代表的な聴き方が、「気分やシチュエーションに合わせたプレイリスト」で楽しむスタイルだ。

 プレイリストにはさまざまなアーティストの楽曲が横断的に聴けて、知らなかったアーティストと出会えるメリットがある。その一方で、横断的に聴けるが故に特定のアーティストへの思い入れも生まれにくいというデメリットが議論にあがる事もある。コアなファンを1人でも多くつかみたいアーティストにとっては、ストリーミングは"諸刃の剣"になる可能性もあるが、逆に言えば、ストリーミングランキングでの複数曲ランクインは、現代におけるアーティストの支持の高さの証になりつつある。

 世界と比べて今なおCD文化の根強い日本だが、ストリーミングからブレイクするケースも徐々に出始めている。その理由はCDに馴染みのない世代が増えたこと。またデジタル販売のように楽曲がスマートフォンのストレージ容量を圧迫しないのも、ストリーミングが歓迎される理由として考えられる。そうした時代において、これからさらに多くのリスナーに楽曲を届けたいアーティストにとって、ストリーミングは欠かせないツールとなりつつある。

 今や音楽の新しい楽しみ方として世界的に定着したストリーミングサービスだが、日本では解禁していないアーティストもまだまだ多い。特に音源を買い支えてくれるファンの多いアーティストでは、その傾向が顕著だ。WANIMAも好調なCDの売上を続けてきている。だからこそ、CDを購入し、ライブに足を運んでバンドを支えてきてくれたファンへの思いから、ストリーミングサービスでの楽曲解禁には葛藤もあったようだ。

 そんな複雑な思いを乗り越えてストリーミングで全タイトルを聴けるようにした理由は、バンドとして"その先"に進むため。その率直な思いを綴った手書きメッセージが、楽曲解禁当日から3日間にわたって渋谷駅に張り出された。

 そうした彼らの真摯な姿勢はファンにも響いたようで、「すごくすごく悩んで解禁決定したんだろうなっていうのがわかるからほんとに泣ける。でも何があってもCDは絶対買うけんね!」、「泣いた。悩んでたんやね…。難しいよね…。私はCDも買うし、ストリーミングも利用する。WANIMAのCDはこれからも大切なお金で買わせていただきます」などなど、メッセージを目撃したファンの熱い声がSNSに上がっている。

■「たまたまの出会い」に強いWANIMAにとってストリーミングは最強の武器

 17年にメジャーデビューしたWANIMAだが、インディーズ時代から数々のCMソングに起用されるなど、幅広い層に支持されるポテンシャルが評価されていた。メロディのキャッチーさもさることながら、背中を押してもらえるポジティブな言葉や、仲間を思う熱い思いが詰まった歌詞が共感を呼んでいる。また、三ツ矢サイダー2019 CMソングの「夏のどこかへ」のような爽快な疾走感も彼らの魅力だ。

 一方で、コアなリスナーからの支持も厚い。ストリーミングランキング上位に入っている「いいから」といったエロ満載の歌詞も持ち味の1つで、クスッと笑えるエロをテーマにした曲も彼らの頭抜けた魅力と言えるだろう。そして、何よりの強みは、ライブの圧倒的なパワーと熱量。メジャーからのリリース前にはすでに“FUJI ROCK FESTIVAL”、“SUMMER SONIC”、“ROCK IN JAPAN FESTIVAL”といった主要フェスを制覇しており、出演するたびにファンを増やしてきた。そして、WARNER MUSICと契約した17年末には、『NHK紅白歌合戦』に出場。一見、ストリート感の強い佇まいながら、そのてらいのない笑顔とストレートな演奏が幅広い世代の"国民"に好感を与え、たちまち全国区にその名を轟かせた。

 そうしたここまでの彼らの成長過程を振り返るとWANIMAは直筆メッセージでも書いているように、「たまたまテレビやラジオ、フェスなどで聴いて好きになってくれた」人が多かったアーティストとも言える。そうした「たまたまの出会い」に強いアーティストであればこそ、冒頭であげた"ストリーミングの諸刃の剣"も、彼らなら最強の武器にできるに違いない。

 前出のストリーミングランキング上位にも付けている「アゲイン」(19年1月TBSドラマ『メゾン・ド・ポリス』主題歌)は、これまで以上にスケール感を増した王道ロックで、さらなる幅広い層に響いている。そして7月17日には三ツ矢サイダー2019 CMソングの「夏のどこかへ」ほか、劇場版『ONE PIECE STAMPEDE』(8月9日全国公開)の主題歌「GONG」などが収録された最新シングル「Summer Trap!!」がリリースされたばかりだ。

 もちろん彼らは、今後も「CDも気合を入れて創っていきます!」と表明している。ファンとバンドをつなぐCDは彼らにとっての「宝物」であり、これからもアートワークにもこだわり続ける。あるファンがSNSで「WANIMAはストリーミング解禁してもCDのセールスは落ちないと思うし、もっとたくさんの人に届くのはいいこと」とつぶやいていたように、コアなファンはこれからも彼らのCDを購入し続けるだろう。その一方で、よりカジュアルに楽曲を楽しむことができるこのたびのストリーミングサービスへの全楽曲解禁は、WANIMAが国民的ロックバンドへとさらに駆け上がる意味深い起点となりそうだ。