元号が令和に代わり、最初の終戦の日(8月15日)を迎える前に…。太平洋戦争末期、フィリピン・ルソン島で起きた戦闘から辛くも生き延びた女性たちが書き残した戦争体験をもとにしたドラマ『マンゴーの樹の下で~ルソン島、戦火の約束~』が、8月8日(後10:00~11:13)にNHK総合で放送される。激しい戦火に巻き込まれていく主人公・奥田凛子を演じるのは、平成生まれの清原果耶(17)。本作を通して何を思ったのか。

【写真】タイでロケを行った戦時中パート

――戦争関連のドラマに出演することについて、どう思いましたか?

【清原】戦争を経験していないので、すべて実感できるかといったら、そうはいかなくて。それが自分の足りない部分として出てしまうのではないか、と不安に思ったのですが、(凛子と一緒に生き延びる日下部綾役の)山口まゆさんと戦争を知らない世代の2人が演じることによって、私たちと同世代の方が、戦争のことをもっと知るきっかけになるんじゃないか、とポジティブに考えることにしました。責任はすごく感じました。

――戦後74年。視聴者もほとんどが戦争を知らない世代です。さらに今回のドラマで描かれる内容はあまり知られていないかもしれません。

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 太平洋戦争中、日本の占領下にあったフィリピンには6000人以上の民間の日本人女性がいた。ドラマの主人公・凛子のようにタイピストなどの“職業婦人”として活躍している女性も少なくなく、窮乏生活の本土に比べ安定した暮らしが営まれていた。しかし、昭和19年、米軍のフィリピン侵攻にともない状況は一変。マニラを脱出した女性たちは、ルソン島の密林をさまよう地獄の逃避行を強いられる。米軍の爆撃、ゲリラの襲撃、そして飢餓…。多くの女性や子どもたちの命が失われ、生き延びたにしてもそれは筆舌に尽くしがたい体験だった。
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――撮影は大変だったのではないですか?

【清原】そうですね、大変じゃない日は一日もなかったです。物語の舞台はフィリピンですが、撮影はすべてタイで行いました。出演者の皆さんも、スタッフの皆さんも慣れない環境で、ヘトヘトになりながらも力の限りを尽くして撮影していたという感じでした。ただ、地元のスタッフ・出演者の皆さんが優しくて、おおらかな方ばかりで、言葉の壁も気にならなくなるくらいフレンドリーに接してくださったので、大変だった中でもすごく励まされていました。

――特に印象に残っていることは?

【清原】終戦のビラが降ってきた後、(捕虜として)連行されるシーンが、精神的にしんどかったです。凛子は必死に生き延びたけれども、現地の村人たちから野菜などを投げつけられたり、「お父さんを返せ」といった恨みの言葉を浴びせられたりするので。

 現地のエキストラの皆さんが協力してくださったんですが、本気で投げたモノが当たる痛さ以上に、心が痛かったです。凛子が初めて日本が戦争中にフィリピンの人たちに対してやってきたこと、その罪の大きさに気づく場面であり、この作品の中で一番大事なシーン。撮影が終わった後、山口まゆさんと「そういうことか…」と、つぶやき合って、その後は何も言葉にならなかったです。

――記者もこのシーンは見どころだと思います。ほかにありますか?【清原】拡大版(BSプレミアムで8月21日放送)では、密林をさまよっているうちにいよいよ食べるものがなくなって、虫を食べるシーンが入っているんです。実は、私、虫が大の苦手でして…。指先で虫を掴んで針で糸を通していくシーンを撮っていた時、この世の果てに来てしまったような感覚になりました。後になって気づいたのは、凛子も同じだったのではないか、ということ。もう虫しか食べるものがないという、生きる希望を失った、凛子の絶望感とうまくマッチしていたらいいな、と思いました。

――そんなにつらい思いをして、嫌になったりしませんでしたか?

【清原】この仕事をしている中で、私もうダメかもしれない、と壁にぶち当たることはありましたが、お芝居を嫌いになったことは一度もないです。その場では楽しいと思えないことがあっても、どこか心はいつも躍っている。躍っているという表現が正しいかどうかわかりませんが、今回の作品で戦争の悲惨さを擬似経験できたこと自体、ありがたく、尊いことだと私は思います。女優の仕事をやめたいと思ったことはまだ一度もないですし、これからも誰かにとって意味のある作品と出会いたい。そう思うだけでわくわくします。これからも頑張って続けていきたいと思います。

――このドラマは清原さんが演じた戦時中パートと、現代パートが折り重なる構成になっています。現代パートに登場する岸恵子さん(平成元年の凛子役)、渡辺美佐子さん(同・綾役)、伊東四朗さん(凛子に密かに恋心を寄せる田宮役)が戦争体験者なんですよね。

【清原】現代パートの撮影現場を1日だけ見学させてもらったんですが、とても勉強になりました。また、現代パートも物語としてはいろいろあるのですが、おだやかで温かい時間が流れていて、ほっこりできました。

――現代パートは平成元年の設定。それからさらに30年経った令和元年の今、悲惨な戦争の記憶は風化しつつあることは否めません。しかし、どのように時代が変わっても、いまの日本が、多くの方々の尊い犠牲の上に成り立っていることを忘れてはならない、と気づかせてくれる作品だと思いました。

【清原】私ももっと日本について学ばないといけない、と気づかせてもらいました。多くの方、特に自分と同じ世代の方に戦争のことを知るきっかけになることを願っています。

■放送情報
総合テレビ:8月8日 後10:00~11:13
BSプレミアム:8月21日 後9:00~10:29(拡大版)
BS4K:8月24日 後7:00~8:29(拡大版)