”ペット”、”家族”、”育児”など、様々なテーマでSNSに投稿される漫画。そのなかで、”親子の関係”を描いて注目を集めている、2人の作者がいる。1人目は、“ゲイ風俗とゲイバーで働いていたオカマ”と名乗り、自身の生い立ちやマイノリティーを取り巻く世界をマンガや文章にしてSNSで発信しているもちぎさんだ。18歳で上京を決意するまで、“毒親”的存在だった母との関係性に悩まされてきたという。8月9日には、初の著書 『ゲイ風俗のもちぎさん セクシュアリティは人生だ。』(KADOKAWA)を発売。母親からの家庭内暴力、自身のセクシュアリティ、上京後に飛び込んだゲイ風俗の世界など、これまでの経験を赤裸々に明かしている。

【画像】『拝啓 母ちゃん、ゲイに生まれてごめんなさい』体を売り家にお金入れた“壮絶実録マンガ”

■「”家族”という環境に、良くも悪くも囚われていた」

 もちぎさんのTwitterアカウントは、フォロワー数43万人(8月9日時点)。その投稿に注目が集まったのは、マンガ『拝啓 母ちゃん、ゲイに生まれてごめんなさい』を投稿したことがきっかけだった。そこには、母親とのつながりを切り捨て、自分の道を強く歩もうとする当時のもちぎさんの姿が描かれている。

「人間は、多かれ少なかれ“家族”という閉鎖的な環境から培われていくものだと思うんです。そこに良くも悪くも囚われる。これは身をもって感じていたことだったので、過去を発信することで人々の心情に何か訴えかけられるものがあるのではとマンガにして投稿しました」

 マンガでは、何かに取り憑かれたような形相でもちぎさんを攻め立てる母親の形相が描かれている。まだ子どもだったもちぎさん に刃物を突きつけ、「ホモ」「クズ」「死ね」と罵声を浴びされられる場面も。しかし当時のもちぎさんは、それを“当たり前”として受け止めたという。

「肯定していた訳ではありませんが、否定する疑問点を持つことができなかったんです。それを“当たり前”と思わざるをえない環境でした。何とも思えなかった、としか言いようがないですね」

■当事者も定義付け難しいマイノリティーの世界「皆、確固たる信念がある」

 18歳のときに「もうこうするしかない」と、母親から逃げるために実家を飛び出したもちぎさん。18歳からゲイ風俗の世界に飛び込み、少し遅れて大学にも進学。“自由で、新しい人生が開けた”と当時の感覚をマンガに綴っている。

「その後、母とはもう何年も連絡を取ってないし、会っていない。母が暮らす町に住む友人から 『元気にしてるよ』と聞いています。それで充分です。今は自分からどうしたいとは思っていませんが、私と同じくらい幸せになってほしい」と母への思いを明かした。

 発売する著書には、母親も含め、これまで出会った様々な人たちから学んだ経験が詰め込まれている。

「あたいが身を置く世界は、社会的にはタブー視され、アンダーグラウンドの世界だと扱われてきました。しかし着実にLGBT業界への理解、貧困問題などによる若者の地下経済への流出は注目されてきています。今回は本という形で、自分の考えをまとめて世に出すことができました。当事者からしても、センシティブで定義付けの難しいマイノリティーの世界ですが、その分、みんな確固たる信念や考え方があります。担当さんとは用語や概念の説明に誤解がないよう何度も話し合いを重ね、推敲して頑張りました。今後はさらに小説など作家業にも挑戦していきたいですね」

 2人目は小学三年生の三学期に、理由もわからず突然学校へ行けなくなってしまった息子さんの様子を漫画にしてつづっている花森はなさん。「同じ問題を抱えているお母さん方の参考に少しでもなれば…」と、複数の児童メンタルクリニックに通い診察してもらっている様子や、行政の子育て相談室へ訪れたときの様子などを詳細に描いている。周囲からの理解がなかなか得られなかった当時のもどかしさや、現状の対応策などについても話を聞いた。

■不登校の悩み抱える親たちへ「この経験が少しでも参考になればと思った」

 少し過剰な怒り方をする担任の先生が原因で、小学三年生のときに学校へ行きしぶるようになった息子さん。その様子をSNSに呟くと、同じような悩みを抱える母親たちの声が集まった。

「同じような悩みやご自身の不登校体験を打ち明けてくださる方がたくさんいて。私と同じように悩まれている方がいるのであれば、この経験が多少なりとも参考になるかもと思い、描き始めました」

 同じ先生が原因で、他にも不登校気味になった児童も見受けられたため、花森さんは事態を学校に報告をしたうえで、なんとか長期休みの間に解決に向かえばと、児童メンタルクリニックを訪れることにした。息子さんに合う病院を見つけるためいくつもの病院で診察を受けるなかで、当時花森さんは言葉で言い表せない”モヤモヤ”を抱えていたという。

「薬を飲まなければ症状が落ち着かない。でも薬で治るわけではない。大人と違って、カウンセリングでも自分の言葉で話すことができない。学校へ行かせるべきか、休ませたほうがいいのか、ずっとモヤモヤしていました。そういった状況の中で、本人もどうしたらいいのかがわからず、私もどうしたらいいのかがわからなくて。それでもなんとかしてあげたいという気持ちだけが空回りしていましたね」

■「立ち止まっても、寄り添う。生きていてくれたら何でもいいです」

 いくつかの病院で診察を経て、「不安症」という診断を受けた息子さん。現在は投薬治療を続けており、症状も少しずつ快方に向かっている。息子さんと向き合っていくなかで、花森さんが特に大切にしているのは”対話”だという。

「寝るときに不安な気持ちが高まるようで、叫んだり暴れたりすることがあります。そんなときは眠くなるまでずっと話をします。好きな食べ物、ゲームの話、お友達のこと、特別学級の先生のこと、今日楽しかったこと、ときには適当に作り合った物語の話も。感情が高まって、殴られたり蹴られたりすることもありますが、話をしていると次第に落ち着いて眠ってくれます」

 「辛い、限界、死にたいと思うこともたくさんあったし、息子も私以上に何度も何度も思ったと思います」という花森さん。息子さんの同級生を見て、羨む気持ちもあると正直に明かしてくれた。

「同級生のお子さんはひとりで習い事にも遊びにも行きますが、うちの子はできません。今はずっと私の付き添いが必要です。いいなぁと羨む気持ちも当然あります。でもそれはそれ。息子には息子の歩み方で進んでいってほしいし、立ち止まってもゆっくりでも、寄り添えるところは寄り添います。とにかく生きていてくれたらなんでもいいです」

 同じ悩みを抱える方に「ひとりじゃない」と伝えていきたいという花森さん。

「周囲にこういうお子さんがいらっしゃる方には、なんとなくでいいので、見守っていただけたらという気持ちです。今後の展開としては、息子に付き添って私自身も学校に通うことになるので、漫画でその部分を描きたいです。学校行事、給食や授業、休み時間の過ごし方、昔とはまるで違う男子と女子の扱い。今の学校って昔よりも驚くほど意識改革されています。そういった部分も、記録的な意味で残しておきたいですね」