『冨嶽三十六景』や『千絵の海』など現代まで愛される作品を残した日本を代表する浮世絵師・葛飾北斎を題材にした映画『HOKUSAI』の製作が決まり、生誕260周年となる2020年初夏に公開される。北斎を演じるのは柳楽優弥と田中泯。売れない絵師として葛藤の中で筆をとり続けた青年期の北斎を柳楽、芸術家としての情熱を失うことなく孤独に自らの画才を磨き続けた老年期の北斎を田中が演じる。

【画像】葛飾北斎が描いた代表作『冨嶽三十六景』から『神奈川沖浪裏』

 20年春の新パスポート、24年度から使用される新千円札の図案にも使用され、ゴッホ、モネ、ドガなど世界的アーティストにも影響を与え、西洋近代絵画の源流にもなったと言われる北斎。平均寿命40歳と言われた時代に91歳という長寿人生を送り、代表作『冨嶽三十六景』は72歳のときに描いた。生涯3万点以上の作品を描いたと言われるも、彼の人生についての資料は少なく、様々な逸話も生まれている。

 同作は、史実をもとに独自の視点と解釈によって生まれた新たな北斎の物語で、『探偵はBARにいる』や『相棒』シリーズなどを手がける橋本一氏がメガホンを取る。さらに、青年期の北斎を見出した蔦屋重三郎を阿部寛、老年期の北斎とパートナーを組み、未完の長編合巻『偐紫田舎源氏』などの代表作がある柳亭種彦を瑛太、北斎がライバル視した女性美を追求した美人画の大家・喜多川歌麿を玉木宏が演じるなど、主役級キャストが集結した。

 橋本監督は「葛飾北斎という人物をどう描く。世に残された作品を見て観て診て魅て、想像たくましく9割創造1割事実、なれど10割真実を目指し、撮影開始」と発想を膨らませて挑んだことを明かす。「梅雨の京都、1ヶ月半の撮影中、当代一級の出演者陣のチカラを借りての、精一杯の人間絵巻。出来上がるのは、青春活劇か、江戸群像劇か、性と暴力の寓話か、老と妄想の夢幻劇か。そのいずれもが正体にして正体にあらずの摩訶不思議な作品に仕上がれば本望」と語っている。

■キャストコメント全文

・柳楽優弥(葛飾北斎・青年期/壮年期)
僕が演じさせていただいた若い頃の北斎は、あまり情報もなく、謎に包まれていたので、初めはどの様に演じるべきかとても迷いました。様々な資料を読んだり、監督と相談していく中で、逆に知られていないからこそ、僕たちで「北斎像」を作り上げていこうと現場に臨ませていただけたことは、とても楽しくやりがいを感じました。絵を描くことが本当に好きで、数々の壁にぶち当たりながらも徹底的に追求する「好きこそものの上手なれ」ということわざを体現したような世界的スターである北斎さえも、売れない時期や苦しい時代があったということを知れてうれしかったですし、夢を感じました。世界中にいる北斎の熱狂的なファンの方達にもぜひ観ていただきたいです。

・田中泯(葛飾北斎・老年期/晩年期)
葛飾北斎はもともと大好きでしたが、役の年頃が、ちょうど今私自身が差し掛かっている年齢でもあり、とんでもないタイミングでこの様なお話が来たな、とご縁を感じました。大勢の人の前で北斎になることができる、というチャンスをいただけたことは本当に幸せなことだと思います。おそらく僕が日常的にやろうとしてもたどり着かない“ある高み”へ引っ張り上げてもらえる、架空からまるで現実の時間のように変わっていく、起こらないことを起こしていくということが、この映画の持つ力なのだと思います。僕は、彼のような才能をこれっぽっちも持っていない人間ですが、ある種の世の中に対する、耐えられないものをずっと持ち続けて生きていることにはすごく共感しました。映画に出てくる北斎のいくつもの重要な言葉がわかると、彼が、単に絵だけで評価されているわけではないということがわかると思います。

・阿部寛(蔦屋重三郎)
僕は、若き日の葛飾北斎を見つけ、才能を見抜きそして育てた、蔦屋重三郎という役をやらせていただきました。今でいうプロデューサーであり、北斎や歌麿、写楽など様々な才能を集めて、自身の手で育てていくという先見の明を持ち、絶えず新しいことを作り出していった人物です。おもしろい役でした。果たしてこの人物をどうやって演じようかと、色々と調べましたが、最終的には、現場で実際に柳楽くんたちと対峙することによって作っていきました。北斎を演じた柳楽くんは、動物的というか反射神経というか、彼ならではのお芝居で、“思いのほか柔らかく、思いのほか強く”こういう感じで来るだろうという予測を大体外してきたので、一緒にやっていて楽しかったです。それぞれの絵師たちの生き様、そして僕の演じた蔦屋重三郎の生き様をぜひ見てほしいと思います。

・瑛太(柳亭種彦)
時代背景問わず、今の日本でも芸術的な事に身を置く人間として何を覚悟して人前に立つのか、田中泯さん演じる、葛飾北斎から教わりました。共演は出来ませんでしたが、柳楽優弥くんの葛飾北斎も心から楽しみにしています。

・玉木宏(喜多川歌麿)
喜多川歌麿という人物を、絵師ということを大前提にしながらも、ちょっとしたエロティシズムというか、どこかちょっと危うい感じになればと思い、いかにキャラクターのインパクトや作品のメッセージを残すか考え、演じさせていただきました。絵師たちと蔦屋重三郎との関係は、僕らの仕事とも通ずるものがあるように思います。プロデューサー的な存在が蔦屋重三郎で、僕らはアーティスト。皆それぞれに新しい芽が出てくるとそこに対して嫉妬心が生まれたり、プライドや孤独を感じながら自分と向き合っていく。それは現代にも通ずる、この作品の面白さであると思います。登場する浮世絵やセットも色彩豊かで、心に残る、心に響く、日本ならではの作品になっていると思います。