よしながふみ氏の漫画(講談社『モーニング』連載中)をドラマ化した『きのう何食べた?』(テレビ東京系)で、ダブル主演の西島秀俊と内野聖陽が、『第16回コンフィデスアワード・ドラマ賞』で主演男優賞を受賞した。クールだけど、心に秘めた思いを持っている筧史朗役(通称シロさん)を演じた西島が、出演にあたり「プレッシャーを感じた」と言う本作の裏側、恋人役の内野とのやり取りについて語った。

【写真】2人のこだわり感じる食卓シーン

◆原作の大ファンだけに、嬉しさよりもプレッシャーの方が大きかった

――主演男優賞を受賞しましたが、まずは率直な気持ちをお聞かせ下さい。
【西島】 原作の大ファンでしたので、出演のお話をいただいき、とても嬉しかったです。それと同時に、プレッシャーもありました。オンエア中にはたくさんの方に、「毎週、楽しみにしています」という声をいただき、感謝の言葉もありません。内野さんのすばらしい演技に引っ張られ、こうして賞をいただくことができました。この作品の一員に加われたことを嬉しく思っています。

――原作漫画の大ファンとのことですが、この役のオファーが来た時に、最初に思ったのは嬉しさですか? それとも、プレッシャーですか?
【西島】 原作がとても素晴らしい大人気の作品ですので、プレッシャーの方が大きかったです。

――西島さんが演じた筧史朗(通称シロさん)は、これまで演じてきたどの役ともひと味違う人物です。
【西島】 そうですね。今まで演じたことのない役です。

――日常のリアリティが細かく描かれていました。シロさんとケンジという同性カップルを演じる難しさや、本作ならではの役への向き合い方について教えて下さい。
【西島】 何かを強調したり、おもしろおかしく演じることはやめましょうということが、内野さんと監督との共通認識でした。好き合う2人が、日常を大切に生きている。時にはぶつかることもあるし、本気でケンカして仲直りをする。それを真剣に演じました。その2人の日常が、結果的に視聴者の皆さんに楽しんでいただき、共感していただけたのだと思っています。

――内野さんが演じたケンジはいわゆる“オネエ”キャラで一見わかりやすいタイプ。一方のシロさんはクールだけど、心に秘めた思いを持っている。分かりづらいからこその難しさはありましたか?
【西島】 一見わかりやすいタイプですが、内野さんの演じたケンジも、とても難しい役です。内野さんは、“やりすぎていないか?”ということを、監督やスタッフと常に話し合っていました。一方の僕が演じたシロさんは、珍しいタイプだったと思っています。服装や好きなアイドル、話し方が特殊なタイプではないけれど、ケンジとは違った難しさがありました。

◆今までにないくらい内野さんとは、役について話し合った

――内野さんとの2人のシーンは、演技について話し合いながら進めていったのでしょうか?
【西島】 こんなに話し合った現場はないくらいです。原作や役について、2人がどのように暮らしているのか、漫画原作を実写化したらどうなるのかを、本番が終わり控室に戻っても、ずっと話し合っていました。

――1話でハーゲンダッツを食べるシーンや最終話ラストの会話など、アドリブが多かったと聞きました。共演者や監督との話し合いのなかで、アドリブが増えていったのでしょうか?
【西島】 1話の撮影が終わり、編集した監督に、「アドリブの演技がとても素敵だったので、カットをした後もカメラを回します」と言われました。でも、本番で内野さんがいきなり突拍子もないアドリブを入れることもなかったです。テストの段階で内野さんがアドリブを入れ、それに僕が受け応える。そして本番で精度を高めていくという感じでした。

――観ている側としては、西島さんが素で笑っているようにも感じましたが、それも作り込まれた演技だったのでしょうか?
【西島】 そうですね。

――西島さんとシロさん、似ている部分はありますか?
【西島】 それはもちろんあると思いますし、全くかけ離れてはいないです。ただ、普段から自分に近い人物ということを意識して演じてはいません。もし、素で笑っているように観えたのなら、自然と自分に近いものを感じていたのかもしれないですね。

――ドラマがスタートしてすぐに人気を得ました。この作品は、特に事件が起きるわけでもなく、2人の日常を淡々と描き、そこに食がある。これだけの人気を得た理由はどこにあると思いますか?
【西島】 厳しい世の中で、なんでもない日常を丁寧に生きる。ご飯を作って一緒に食べる温かい食卓は、安全な場所であり、2人の心の繋がりを感じる場所でもある。その心の繋がりを、自分が思っている以上に相手が思ってくれている、そういうことを食卓で改めて確認する。その守られた場所を皆さんが求めているのかなと思いました。日常のなんでもないことを大切にすることで、混沌とした世界を乗り切ろうという思いがあるのかもしれません。個人的には、そう思っています。

◆今は、ケンジに会えない寂しさもある

――ちなみに、西島さんは料理をしますか?
【西島】 このドラマに出演するまでは、まったくといっていいほど料理をしていませんでした。でも出演するにあたり、ドラマで披露したレシピに挑戦しました。最近では、たまに料理します。

――内野さんに手料理を食べてもらいましたか?
【西島】 まだないです(笑)。撮影中に内野さんもレシピについて熱心に聞いていましたし、実際に作ってみたようです。

――内野さんに料理を作ってあげたくなりましたか?
【西島】 いや~難しいなあ~。美味しそうに食べてくれるといいですけど……。

――『きのう何食べた?』を通して内野さんとの絆が深まりましたか?
【西島】 内野さんとは、今回が初めての共演でしたが、やっぱりすごい人だと実感しました。今頃、ケンジのことを忘れて、次の舞台に全力投球していると思います。でも、僕だけ取り残されて、ケンジに会いたい、でも会えないと思っています(笑)。内野さんは、本番前にスイッチを入れ、集中して役になり切るタイプで、全シーンそうでした。でも、控室に戻るといつもの内野さんがいる。ケンジではないんです。そのギャップに驚き、すごい才能だと感じました。今は、カメラの前でのケンジはいないので、会えない寂しさもあります。

――相手を思う気持ちを口に出すところは、役柄とは逆ですね。
【西島】 そうですね(笑)。シロさんは言葉に出すタイプではないけれど、シロさんの方がケンジのことを大切に思っています。内野さんには、「また共演したいね」と言っていただけて、嬉しかったです。ケンジにも会いたいですし、他の役でもご一緒できたらいいなと思っています。

――では、その内野さんにメッセージをお願いします。
【西島】 本番ですべてをかけるその姿に、毎日感動していました。ドラマで共演でき、本当に幸せな時間を過ごせました。今回、主演男優賞をいただけたのも、内野さんのおかげだと思っています。ありがとうございました。

――続編を望む声も多いようです。最後に、ドラマファンの皆さんにメッセージをお願いします。
【西島】 番組を応援していただき、ありがとうございます。素晴らしい原作を実写化するためには、どのようにしたら良いのかを、スタッフとキャスト全員で真剣に考え、向き合いました。撮影期間が短く、スタッフの方も大変だったと思います。でも、そういった姿をキャストには見せず、演技に集中できるようにリラックスした空間を作ってくれました。その結果、たくさんの方からの良い反響に繋がったと思っています。もちろん、「続編を」と言っていただけると、こんなにも嬉しいことはありません。僕たちも報われるし、もしかしたらそういう機会が生まれるかもしれません。僕もケンジに会いたいですし(笑)、それに向かってがんばれたらと思っています。