有識者と視聴者が共に支持する“質の高いドラマ”を表彰する『コンフィデンスアワード・ドラマ賞』が、19年4月クール放送の主なドラマを対象に行った、第16回の結果を発表した。この4月クールは、現代社会の多様化を描くドラマが多数放送されたが、それらの作品は視聴者から反響を呼び、同賞の結果にも反映された。

【受賞者フォト】ケンジ役・内野聖陽が選ぶお気に入りの1枚、トロフィーを手に笑顔の西島秀俊など

◆「作品賞」は『きのう何食べた?』、西島秀俊&内野聖陽は「主演男優賞」を受賞

 “最も質の高い作品”として「作品賞」に選ばれたのは、テレビ東京系のドラマ24『きのう何食べた?』。よしながふみ氏の同名人気漫画が原作の本作は、2LDKの部屋で2人暮らしをする男性カップルのシロさん(西島秀俊)とケンジ(内野聖陽)のほろ苦くも温かい毎日。そして、月2万5000円のなかでやりくりされる日々の食卓を描いた物語。

 主演の西島秀俊、内野聖陽というキャスティングをはじめ、心の機微を丁寧に描いた安達奈緒子氏の脚本、映画監督の中江和仁氏らによる演出、愛情が伝わってきそうな素朴でおいしそうな料理の数々、作品に寄り添った主題歌や劇伴など、人気原作のディテールへのこだわりが心温まる同作の世界観を見事に再現した。

 描かれたのは男性カップルの日常や苦悩だが、生き方が多様化する現代において、さまざまな部分で彼らの状況や心情とシンクロした人が多かったのだろう。週刊エンタテインメントビジネス誌『コンフィデンス』のドラマ満足度調査「オリコン ドラマバリュー」では、100Pt満点中初回86Ptでスタートし、2話目以降は90Pt台をキープ。最終回では、自己最高の97Ptを記録し、初めから終わりまで一貫して高い満足度を得ていた。

 シロさんとケンジを魅力たっぷりに演じ、多くの視聴者に「何げない日常の中にある幸せ」への気付きを与えた主演の西島、内野は「主演男優賞」を受賞した。

◆ねじくれた青春群像劇『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』が最多3部門

 ゲイの高校生の苦悩を描いた、NHK総合のよるドラ『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』も高評価を集め、主人公の安藤純を演じた金子大地が「新人賞」、ボーイズラブ(BL)にハマる“腐女子”の女子高生・三浦紗枝役の藤野涼子が「助演女優賞」、そして浅原ナオト氏の原作を脚色した三浦直之氏が「脚本賞」を受賞した。

 本作は、自身がゲイであることをひた隠しに生きる純と、紗枝が繰り広げる純粋でねじくれた青春群像劇。その一方で、既婚の年上男性と交際しながらも「異性を愛し、子どもを作って、家庭を築く」という“普通の幸せ”への憧れを抱く純の様子から、“普通とは何か”を見つめ直す物語でもあった。土曜23:30の放送で視聴率はさほど高くはなかったものの、みずみずしくリアリティたっぷりに描かれたストーリーは、SNS等で幅広い層から支持された。

◆“働く意味”を問いかけた『わたし、定時で帰ります。』は、吉高由里子&向井理がW受賞

 働き方改革の時代に求められる“ワークライフ・バランス”を描いた、火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)は、主人公・東山結衣役の吉高由里子が「主演女優賞」、結衣の元婚約者で職場の上司でもある種田晃太郎を好演した向井理が「助演男優賞」を受賞した。

 吉高が演じた結衣は、「残業ゼロ」をモットーに、プライベートを充実させ普通の感覚を大切にするOL。一見、ハツラツとしたキャリアウーマン像が連想されるが、描かれたのは過重労働にトラウマを抱え自身も働くことの意味を探す主人公の姿だった。対する向井が演じた種田は、仕事ができて周囲からも絶大な信頼を得る一方、集中しすぎると周りが見えなくなる“ワーカーホリック体質”な男性。このほか、さまざまな境遇のキャラクターが登場し、自分にとって働くとはどういうことか、本当の幸せはなんなのかを、視聴者に問いかけた。「ここで帰ったら負けなの」「自分を大切に、仕事しよう」「(仕事が好きって)そんなに悪いことなのかな?」など、毎話のように登場した“名言”も話題になった。

 今回、受賞した3作は、ともに現代社会の多様化にスポットを当てたもの。しかし、本質の部分では、「幸せって何か」「普通って何か」といった、誰にとっても身近で普遍的なテーマを描いている。4月期は平成から令和へ時代をまたぐクールとなったことも重なり、多くの人が漠然と抱える問いや悩みに寄り添う作品が、視聴者の心をより捉えていたのかもしれない。