“アイドル戦国時代”というフレーズがメディアを賑わせ始めた2010年に、日本初の「アイドルに特化した大規模同時多発的音楽フェス」としてスタートした『TOKYO IDOL FESTIVAL』(以下TIF)が10周年を迎え、8月2日~4日にわたり今年も東京・お台場エリアで開催される。当初は50組前後のアイドルグループが出演。来場者数も6000人ほどだったが、アイドルシーンの拡大と足並みを揃えるように年々勢いを増し、近年では200組以上のアイドルが全国から揃い、8万人超を動員する巨大フェスへと成長した。17年より総合プロデューサーを務める菊竹龍氏は、TIFとアイドルシーンの歩みを「業界にとってもファンにとっても、総じて明るい10年だったのでは」と振り返る。

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◆多様化しファン層に変化 “ファンとの距離”が近くなったことで問題も

「近年サブカルとしての見方が強かったアイドルシーンも、この10年で一気にメインカルチャーとして浸透しました。アイドルを超えて人気を博するスターが登場し、一方で全国各地を盛り上げるご当地アイドルも続々と誕生。さらに日本のアイドルカルチャーは海外にまで波及しています。TIFの来場者も近年は10~20代のオシャレな若者が増え、外国人の姿も目立つようになりました」

 菊竹氏が「総じて」と付けたように、シーンが成長したこの10年はポジティブな出来事ばかりではなかった。なかでも深刻だったのが、アイドルが狙われる事件が頻発したことだ。TIFもまた、この10年の間に安全確保についてさまざまなアップデートに取り組んできた。初期のTIFはアイドルが楽屋からステージまで徒歩移動するアットホームさも魅力の1つだったが、現在は出演者全員のバス移動を徹底。またファンとの物理的な距離が近くなる会場には金属探知機を導入し、会場には警備員を多数配置している。

「その上で今年のTIFは、『やっぱりこの10年楽しかったよね』と思ってもらえるフェスを目指して、これまでの10年のアイドル史のキラキラした側面を振り返りつつ、これから先の10年の明るいアイドルシーンも提示できるような特別企画を多数盛り込んでいます。コンセプトは『時を越えたアイドルフェス 2010→2019→』です」

 平成後期の芸能界を彩った“アイドル戦国時代”だが、昨年はその節目とも言える年だった。活動歴が長く、ファンも多く掴んでいる中堅アイドルの解散が相次いだのだ。しかも、その多くが大手事務所の手掛けてきたアイドルグループだった。

「TIFとしても、これからどうなるのだろう?と少なからず危機感を覚えました。ところが、その後アイドルシーンが収束していったかというと、むしろこれまで以上に多くのアイドルが生まれているように感じます。そんな運営の多くが小規模事務所で、“学生社長”も少なくありません。若い社長たちはフットワークが軽く、また大手と比べ決定速度も早いため続々と新しく、面白い施策を繰り出してきます」

◆ブレークにはアイドルだけでなく、運営側のセンスも求められる

 なかには数ヶ月で“店じまい”するケースも少なくない。アイドルのサイクルがかつて以上に早くなった今、生き残っていけるのはどんなアイドルグループなのだろうか。

「アイドル自身の資質と同じくらい、重要なのが事務所サイドの戦略性だと思います。目の前のことしか見えず、その日暮らしのマネジメントをしていても、なかなかブレイクには結びつかない。常にその先の施策を考えられるプロデュース能力が運営側になければ、息が長く応援されるアイドルは作れないと思います」

 その中でも菊竹氏が「この展開はカッコいい!!」と挙げるのが、BiSやBiSH、GANG PARADEなどを手掛ける気鋭のプロダクション・WACKの渡辺淳之介社長の手腕だ。

「BiSHが初めて『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出たときには、“異色アイドル”の登場が大きな話題になりました。ところがそれで終わりじゃなかった。BiSHのアクトが終わった後のCMで、横浜アリーナでのワンマンライブ決定の情報が初解禁されたんです。タモリさんとのトークでは一切その話題に触れずに。おそらく出演を見越してCM枠を押さえたんだと思いますが、その演出がめちゃくちゃビビッドだったんですよ」

 フジテレビ社員でもある菊竹氏だが、「今どき、ただテレビに出たからと言って、世界が大きく変わるわけではない」と言う。

「重要なのは、テレビ出演をいかに次の展開につなげるかを考えられる運営のセンスだと思います。その点で言えばTIFも同じです。有難いことですが、近年は方々から『TIFに出たい』と言われるんですが、TIFに出たからといってそのアイドルがブレイクに直結するとは限らない。だけどTIF出演をステップに次の展開を明確に描いているのなら、ぜひTIFを利用してほしいですね」

 平成の終わりと共に幕を閉じたとも言えるアイドル戦国時代。しかし、「時代の変わり目にはスターが生まれる」と菊竹氏は断言する。“次の10年”を見据えた今年のTIFで、次世代のシーンをけん引するアイドルを目撃できることに期待したい。

文/児玉澄子

●菊竹龍(きくたけ りょう)
1984年、東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、07年にフジテレビジョンへ入局。営業、番組制作を経て事業へ。2017年より4代目TIF総合プロデューサーに就任し、18年にはタイ・バンコクで『TOKYO IDOL FESTIVAL in BANGKOK COMIC CON』(4月27日~29日)を開催。同イベント初となる海外進出を果たした。