1980年代~90年代に2度のブームを巻き起こし、累計販売台数1億8000万台以上を誇る、株式会社タミヤから発売されている「ミニ四駆」。レース同様に、マシンの見た目を競う企画「コンクールデレガンス」(以下コンデレ)も大きな盛り上がりを見せている。今回は、ミニ四駆本体だけでなく、地面や雑草、ミニ四駆に絡みつく蔦までも緻密に作り込んだミニ四駆ジオラマ『鉄屑の春』をご紹介。あえて“フェイク感”を残したと語る制作者のカミナガさんに、ミニ四駆の原体験からコンデレ作品への想いなどを聞いた。

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■コンデレ作品を通じて、ストーリー性やメッセージ性を表現したい

――「ミニ四駆」との出会いを聞かせてください。

小学1年生の頃、おもちゃ屋さんで父親に「ホーネットJr.」を買ってもらい、一緒に組み立てたのが最初の出会いです。私にとって初めてのプラモデルがミニ四駆でした。その後、『ダッシュ!四駆郎』のアニメが始まり、劇中のマシンを買っては外で走らせて、すぐにボロボロにしていた思い出があります。大人になってからは、職場の後輩と少年時代の遊びについて話していた際に、ミニ四駆の話題になり当時の改造方法やパーツについて話が盛り上がり、そのまま一緒に買いに行きました。

――コンデレ制作を始めたきっかけは何ですか?

長年使用せずに保管してきたキットを眺めていて、使用しないともったいないと思い、自宅鑑賞目的で制作しましたが、公式大会参加記念にコンデレに出したのが始まりです。

――コンデレ制作に関して、どんな方から影響を受けましたか?

身近な方の影響がとても大きいです。制作過程や実物を見せて頂くことで、学んだことがとても多いです。中でも、コンデレ制作者のコアラプターさんの発想力や、表現力にはいつも驚かされます。単に「カッコイイ!」とか「美しい!」だけでなく、必ず作品にはどこかポップな要素を盛り込んでいて、そのセンスは羨望に堪えません。また、コンデレ入賞経験のある同じくコンデレ制作者のtenjyuさんは、自分が納得するまでとことん作品と向き合う方で、制作に対する真摯な姿勢にとても感銘を受けました。

――これまでのコンデレ制作で、自身が成長出来たようなターニングポイントとなった一台はなんですか?

『鉄屑の春』です。“走”が前提となるミニ四駆を使って“静”を表現するために、様々な技法に挑戦し、技術面で成長したと思います。

――コンデレ作品を制作するのにかかる時間はどれくらいですか?

制作期間は概ね2週間です。公式大会が近づくと、なぜか急に作りたくなるんです。そのため制作期間中は寝る間も惜しんで作っております(笑)。

――コンデレ制作者として心がけていることは何でしょうか?

恥ずかしながら、作品には、それを通じて表現したい“本質”を持たせています。そうする事で、作品にストーリー性やメッセージ性という深みを出すことが出来ると信じています。

■色褪せ感を出すため、6つの同系色でグラデーション処理

――自身のコンデレマシンでお気に入りを教えて下さい。

思い入れがあるのは、「ホットショットJr.」を元に制作したコンデレマシンです。私は幼少期にラジコンを買って貰えなかったため、ミニ四駆を外で走らせることで擬似体験をしていたんだと思います。荒れた路面を走破する様を見ながら、脳内ではラジコンであると自己暗示をかけるように(笑)。その様子を作品にした訳ですが、作っていく過程で幼い時分のワクワク感や純粋に「走るおもちゃ」に夢中だった遠い記憶に触れることができました。

――地面や木までミニ四駆作品の一部に取り込んだ、ジオラマタイプのコンデレ作品『鉄屑の春』を作る際に難しかったところはなんですか?

情景作りですね。ジオラマ制作は初めてで、全てが手探りでした。その上、可能な限り自作したいというこだわりもあって、主役である車体よりも時間がかかってしまいました。

――『鉄屑の春』を作る際に一番気をつけたところは何ですか?

全体の統一感です。ミニ四駆を主役としつつも、情景に馴染ませることを意識しました。

――『鉄屑の春』のこだわりを教えて下さい。

リアルを追求した様に思われがちですが、演出のためにあえて“フェイク感”を残した部分があります。自然に出来た錆やツタ植物を観察すると、実に様々で、中には人工的にも思えるものが存在します。それに気付いたとき、“フェイク感”を残すことで車体の質感が出てくると感じました。一方で車体の塗装にはこだわりました。とても伝わりづらいとは思いますが、陽射しや雨垂れによる色褪せ感を出すため、同系色で6色塗り重ねています。また、陽射しの方向や車体の奥行きを考慮して、上から下へ、手前から奥へグラデーションをつけました。

――自身のコンデレ作品で他の人には負けないという“強み”は何でしょうか。

他に素晴らしい作品が多い中で、なかなか自信を持つことが出来ませんが、強いて挙げるならディテールでしょうか。例えば『鉄屑の春』では、タイヤにパンク加工を施したり、蔦の葉を1枚1枚曲げ癖を付けてから手貼りするなど、細かい部分にこそ表情を付ける意識をしています。

――今後、どういったコンセプトでコンデレ作品を作っていきたいですか?

実車系ボディのミニ四駆が豊富になってきたので、それらをコミカルに作り替えたら面白いのかなと考えています。

――ご自身にとって「ミニ四駆」とは何でしょうか?

いくつになっても遊べる知育玩具だと思います。レースにおいても、コンデレにおいても考える力がとても養われ、発見や閃きが絶えません。また、大会やSNSを通じ、年齢や性別、職業や国籍さえも飛び越えて様々な方と出会う機会を与えてくれる魔法のおもちゃだと思います。