1958年に国産プラモデルが誕生してから60余年。今なお多くの模型ファンの心を掴み続けている。今回紹介するのは、「F1」マシンのガレージキットに魅せられたアドック氏(@adock_mfp)。精巧さを追求したガレージキットの醍醐味、そしてモデラーに求められる“覚悟”とは。

【写真】6万円の「ガレキ」は細部の緻密さがヤバイ!最高峰のF1マシンをプラモで再現

■実際に見ることも触ることも難しい「F1」マシンをこの手で再現したい

――普段はどんなキットを制作されていますか?

【アドック】「F1」マシン以外は、カーモデル(乗用車)、バイク、キャラクター(ガンプラ)、飛行機、たまにジオラマなんかも制作します。わりと守備範囲は広い方です。逆に言えば船関係は作りません。

――幅広いジャンルですね。プラモデルにハマったきっかけのキットは?

【アドック】外国製のカーモデルだったと思います。何のパーツなのか分からず説明書通りに塗装すると、それがバッテリーだという事に気が付きました。ただのプラスチック片が、切り離し接着し塗装をすることで色々な物に変化する。もともとの手先の器用さも手伝って「これは面白い!」と。それ以来リアルな塗装にハマりました。

――「F1」マシンを制作された理由を教えてください。

【アドック】モータースポーツの最高峰「F1」。そこで使用されるマシンはやはり最高峰の車と言えます。一般人では実際に見ることも触ることも、ましてや運転することなど中々難しい「F1」ですが、模型作りというプロセスの中でなら、パーツ毎のフォルムや内部構造を細部まで把握しながら、心ゆくまで楽しめます。もちろん、子どもの頃から「F1」が好きだったという単純明快な理由もあります。

――「F1」への思い入れをもう少し教えてください。

【アドック】1980~1990年代、アイルトン・セナとホンダの黄金期、おそらく「F1」が最も盛り上がっていた時代が好きです。当時、鈴鹿サーキットにもよく足を運びましたし、世界中で開催されたレースでテレビ中継されたものは、ほとんど見ています。

――おっしゃる通り、本キットの緻密なディテールは一般的なプラモデルとは違うように見えます。

【アドック】このキットはいわゆるプラモデルとは違いガレージキット(金型を使わず、シリコンにレジンキャストという合成樹脂を流し込んで型取りした模型)と呼ばれるモノです。通常サイズが1/20なのに対して1/12とビックスケール(全長約40cm)で、パーツ数も多く精密設計されています。組み立ても誰でも簡単に出来るというわけではなく、模型制作の技術が必要です。組み立てる側の技量と覚悟(価格面でも!)を考えると、“模型界の最高峰”と呼べるかもしれません。

――ちなみに価格は?

【アドック】本キットはガレージキットメーカー、モデルファクリーヒロのメタル&レジン標準フルディテールキットで、価格は60,000円以上(苦笑)。エンジンのパイピングは資料を参考に更にディテールアップして実車のイメージに近づけました。価格面、技術面ともに挑戦意欲を掻き立てられるキットです。

■失敗の恐怖心を克服できたのは、“心が折れる”くらい失敗したから

――アドックさんの得意な技術は何ですか?

【アドック】得意というか、大好きな作業が2つあります。1つ目は「F1」シャーシ内部の「パイピング(配線)」です。「F1」エンジンなどはPC制御なので、それらの大量の配線をどれだけリアルに見せられるか。マニュアルには大まかな配置しか書いていないので、実際の資料写真を見ながらアレンジしました。このキットは基本ベースがその様に出来ているのでリアルに仕上げることが出来ました。

――ではもう1つの作業は?

【アドック】「研ぎ出し」という表面を磨く技術です。カウルパーツ表面をクリアー塗装し、その塗膜上のツブツブをスポンジヤスリなどで研いで消す作業です。必ずしもやらなければならないというものではありませんが、自ら磨き上げたブレのない鏡面を仕上げる作業は癖になります。

――本キットもツルッツルですね。こうした技術を習得するための秘訣は?

【アドック】“好きこそ物の上手なれ”ということわざ通り、そのものを好きになる。楽しみながら作業をすることが大事だと思います。「研ぎ出し」に関しては、クリアー層だけでなくデカールや下地まで削ってしまう失敗を何度も経験し心が折れそうになることもありました。でも、この反復で上達したとも言えます。もちろん今でも失敗はしますが、“失敗後のリカバリー技術”も上達したので、失敗への恐怖心はもうありません(笑)。

――プラモ技術の腕を上げる方法はありますか?

【アドック】他の方の作例をできるかぎり沢山見る。そして、可能なら疑問質問を直接聞くことです。直接見ることでしか分からない発見や驚きがまだまだあって、その度にモチベーションが上がります。プラモデル作りは個人で楽しむ趣味なので自己完結してしまいがちですが、各地で開催される模型展示会に積極的に参加・見学すると良いと思います。

――最後に、アドックさんにとってプラモデルとは?

【アドック】自分らしさを表現し、その作品を見て共感してくれる人と分かち合える、コミュニケーションツールのようなモノだと思います。ライフワークだと思ってやっているので、手足が動くうちなら後期高齢者になっても多分作っているんじゃないかなと(笑)。