俳優のムロツヨシと古田新太がダブル主演を務めるテレビ東京系ドラマ24『Iターン』(毎週金曜 深0:12※テレビ大阪のみ翌週月曜 深0:12)。本作で、崖っぷちサラリーマン、狛江光雄を熱演しているムロに話を聞いた。

【画像】『Iターン』第3話の場面写真

 ドラマ『Iターン』とは?

 『侠飯』『すじぼり』などの作品が、多数映像化されている小説家・福澤徹三氏の同名小説が原作。中堅広告代理店・宣告社に勤める狛江光雄(ムロ)は、些細な事で上司の怒りを買い、左遷同然の人事で日本最果ての街“阿修羅市”へ単身赴任。着任早々にまさかのミスを起こし、それが原因で、ヤクザの「岩切組」の親分・岩切猛(古田)の「舎弟」になってしまう。家族のために働くサラリーマンの人生が一転、借金を抱え、広告マンとヤクザの危険な二重生活を送る羽目に。不幸の無限ループに陥った男の物語。

――狛江は、家のローンに、娘の進学…リストラされるわけにはいかない、と家族のために頑張ってはいますが、上司には媚びへつらって、自分のほうが立場が上だと思うと、横柄に接する、一緒に働きたくないタイプのサラリーマンですよね?

【ムロ】人は誰しも悪いくせみたいなものを持っていると思うんです。家族や部下の前ではかっこつけたい、大きなこと言ってみたい、そういうのの度が過ぎてしまうのが狛江。だから会社からも、家族からも見放されるんだ、ということに彼自身が気づく日が来るのかどうか…。そこまでイヤな奴じゃない、ってことはわかっているんですが、僕自身、視聴者に嫌悪感を与えようと思って、演じました。その方が、狛江が岩切に殴られた時、スカッとしてもらえるでしょう(笑)。役作りは、僕の中にあるイヤな部分をただ出せばよかった(爆笑)。

――古田さんに殴られるシーンで、殴るふりではなく、ガチで殴ってください、とムロさんから提案したそうですが。

【ムロ】そうですね。視聴者も見たいと思ったし、各話に1回、古田さんに殴られる狛江・ムロのシーンを作ってください、というお願いをしました。

――それはまた、どういう意図?

【ムロ】視聴者の方が、劇中の狛江と、俳優ムロツヨシのイメージが重なると、思われたのならたぶんその通りだと思うんです。子どもの頃から振り回されてきた人生でしたし、深刻なものではなかったですけど、いじめられたこともあったし、それを笑い飛ばしていたら、「あいつはいじってもいいんだ」というところまで行き着いて、そういう居場所もありだと、ありがたくちょうだいすることにしました。20代の駆け出しの頃はそこまで思い切ることはできなかったけど、30代後半になって出演した舞台で僕がよくぶたれるシーンがあって、お客さんも笑ってくれて。それを見た古田さんが、「普通あんなに年上の男が年下のお前を殴っていたら痛々しくて笑えないはずなのにお前は笑える。お前は殴られて笑われる、その才能はあるな」と、ほめてもらったことがあったので、今回、それを最大限生かそうと思いました。

――痛くなかったですか?

【ムロ】アハハッ! 全然大丈夫でした。うまいんですよ、叩き方が。いい音が出ているのに、そんなに痛くない。叩く時に、躊躇がないから。こっちも助かります。

――岩切組と対立する竜崎組の組長・竜崎剣司役の田中圭さんも、冷徹なインテリヤクザぷりが面白いですよね。

【ムロ】そうですね。田中圭くんも、久しぶりにエッジの鋭い役を演じて、すごく楽しそうでした。せりふをゆっくりためながら言ったり、にらみつけたり。『おっさんずラブ』や『あなたの番です』とは違う田中圭くんが観られるのも、見どころです。

――ドラマ24枠の作品で主演は初めてとのことですが…

【ムロ】自称ですけれども、ドラマ24俳優といっても過言ではないくらい、縁があると思っているんです。僕が初めて連続ドラマにレギュラー出演させていただいたのが、ドラマ24が始まって2作目の『2ndハウス』(2006年)という作品で。そこから『Xenos(クセノス)』(07年)があって「勇者ヨシヒコ」シリーズ(11年、12年、16年)があって、『アオイホノオ』(14年)にも出演させていただいて。いろいろ経験させてもらった場所で、主演として呼んでもらえたことが、すごく意味があると思っています。

――第1話のど頭から、逆立ちして村下孝蔵さんの「初恋」を歌っていたのが、インパクトがあって、謎なんですが…。

【ムロ】狛江が好きな歌が「初恋」という設定みたいです(笑)。僕もなんで歌うんだろうって思いました。監督(内田英治氏。脚本も担当)に聞いたら、「思いついたから」ですって。「逆立ちさせて歌わせたら面白いんじゃないか」って。なぜ、「初恋」なのかといったら、監督が好きな歌らしいです。古田さんもドンピシャだって。サビのところのテンポをとるのがけっこう難しかったんですよ。

――物語の鍵を握る曲なのでしょうか?

【ムロ】ん~、どうでしょう。その謎の答えは、出てくるような気もするし、全話観てもわからないかもしれない(笑)。

――今後の見どころは?

【ムロ】岩切と竜崎との妙な三角関係の中で、狛江は自分自身と向き合わざるを得なくなって、少しずつ変わっていく。狛江みたいな男でも変われるんだ、というメッセージがあると思うんです。さらに、狛江がヤクザにただ振り回されるだけかと思ったら、中盤以降、岩切と狛江の関係性が濃くなって、不思議なバディものの様相を呈していく。岩切が人情に厚く仲間を絶対に裏切らない一方で、裏切り者には容赦がない昔気質のヤクザという設定が利いてくるんです。でも、まぁ、古田さんや僕よりも、田中圭くんの新しい魅力を楽しんでもらえたら、いいな、と思います。