大手事務所所属のメジャー系から、ご当地系、地下系まで、毎年数えきれないほど誕生しているガールズグループ。そんな飽和状態において、志半ばで消えていくグループも多いなか、今年6月で活動10年目に入った、“渋谷系ガールズロックユニット”のCANDY GO!GO!。アイドルとしてスタートし、一度はメジャーに進出するも、現在はインディーズに戻った彼女たちが生き残ってこられた理由は「アイドルを辞めたこと」。

【写真】CANDY GO!GO!、5年前のデビューイベントの様子

 過度な接触商法の自主規制や、メンバーを会社の社員にして月の稼働日数などを設定するなど、アーティストにも働き方改革の考えを導入している。独自の道を歩む彼女たちのプロデューサーであり、所属事務所ONEtoONE Agencyの社長でもある岡部武志氏に、ガールズグループにおける“働き方改革”について聞いた。

■夢に見たメジャーデビュー!…だが、その先には何も無かった

 CANDY GO!GO!!は、2010年の活動当初こそ秋葉原が中心だったが、元バンドマンの岡部氏が作る楽曲のベースがロックであり、またメンバーの多くがロックテイストな趣向であったため、アイドルの可愛らしさとロックのカッコよさをミックスした“アイドロック”という独自の音楽ジャンルを確立。

“渋谷系ガールズロックアイドル”のコンセプトで集客を増やし、恵比寿リキッドルーム、赤坂BLITZでワンマンができるまでになると、2016年についにメジャーデビューを果たした。このまま一気にスターダムに!…と思われたが、このメジャー進出がグループ最大の危機を迎えるきっかけとなってしまった。

「メジャーになったことで、レコード会社から“1年に〇万枚”というノルマを課せられたんですね。これが簡単ではなかった。当時、1ヶ月に50ステージぐらいこなして、CDを売るためにがんばって、みんな限界を超えていました。それでもムリできたのは、“その先”があると信じていたから。“がんばったら、多くのメディアにも出られるようになってメジャーな活動ができる”と、メンバー、スタッフ、そして私自身も思っていたんです。でも、現実はそうではなかった。それがわかったときに、(精神的な)糸が切れてしまって…」

 がんばっても、メジャーデビューの前と何も状況が変わらない。過密スケジュールとノルマに追われて疲弊していくだけ…。将来のビジョンが見えなくなり、すべての活動に悪影響をもたらす。また、多くのメンバーの脱退も重なって、ライブで800人以上あった集客が、メンバー脱退後には3分の1になり、残ったメンバーやファンの不満、失望感が爆発してしまったという。

「このままではダメだと思って、残ったメンバーの進言により、今の状況や不満、不安な部分を、“休みがまったくない”というような細かいことまで、正直に全部打ち明けてもらいました。それに対して1つひとつ、僕の考えを話したり、納得いくまで話し合いました」

■過度な“接触商法”を自主規制。メンバーを“社員”とし社会保険も

 腹を割って洗いざらい話し合ったおかげで、わだかまりも溶け、風通しが良くなったという。結果、メジャーからインディーズに戻ることを決め、CANDY GO!GO!においては、接触系中心といわれる、現在のアイドルビジネスの継続より、長く音楽アーティストとして活動を続けていくことを前提としたモデルケースへの取り組みに方針転換をした。

 そして、一番の“働き方改革”は、(岡部氏事務所への所属者に限り)メンバーを業務委託の形から“雇用”の形態にしたこと。社会保険も適用されるし、グループを卒業した場合は失業保険も受給される。

「給料については、ライブの物販で売り上げに基付いた歩合と、各イベントの場合は出演料です。毎回、各人に今までの実績を踏まえた目標を提示して、グループのSNSで、常に中間報告を開示、徹底をしています。正規メンバーは、他のアルバイトはしていません。というか、アルバイトをしないでも生活できるようにならないと、研修生から正式メンバーに昇格できないんですよ」

 CANDY GO!GO!自体が、事務所の“第1営業部”のようなもの、と岡部氏は言う。年月単位での目標&実施予定をメンバーに提示し、スタッフを交えた会議や分析も定期的に行っているそう。その背景には、「グループやこの仕事を辞めたとしても、彼女たちが社会人としてやっていけるようにしたい」という岡部氏の思いがある。このような“働き方改革”後、現在、集客やメディア露出も増えてきており、新たな取り組みが成果として見え始めている。

■おカネよりも心の安定を重視

 もう1つ特徴的なのは、ひと月の稼働日数を20日と定めたこと。今年4月から一部施行されている働き方改革関連法案でも長時間労働の解消が謳われているが、タレントが実践しているのは、かなりのレアケースといえよう。

「おカネよりも心の安定を優先させることにしました。稼働日のうち、CDショップのインストアイベントなどは、正直、収入にはならないんですが、それでも決めた稼働日数は守っています」

 このような改革の甲斐あって、グループ崩壊の危機から抜け出したCANDY GO!GO!!だが、年頃の女子が何人も集まれば、感情的な衝突などがあっても不思議ではない。その辺りの心配は‥?

「その点は大丈夫だと思います。年上のメンバーたちは、集客が800人から激減したどん底を経験してるんで、謙虚なんですよ。それと、専用の稽古場を作ったことも大きいです。“自分たちの居場所がある”ことが大切で、何かあればそこに集まって話し合うことができますから」

■接触系重視とライブ重視、ガールズグループは二極化

 アイドルを辞めたと宣言したことで、それまでのアイドルファンは離れていった。生バンドをバックにした形式で行うこともあるライブでは、何本ものペンライトを振ったり、ヲタ芸したり、という光景は全く見られない。しかし、世間ではまだまだ“ガールズロック”よりも“アイドル”の枠で語られることも多く、現在は、そんな見方との戦いでもある。そして、男性以外にも“ガールクラッシュ”な存在として、女子のファンも増やしていきたいそう。

「お父さんと娘さんで来てくれたりもするんですよ。でも、女の子だけで来るのはまだハードルが高そうです。だから、機会があったら、女子限定ライブとかもやってみたいですね」

“メジャー”に行くことが1つのステータスであり、接触イベント中心のビジネスから、グループもファンも方向性が多様化し始めたと感じるが、今後、ガールズグループ界は、どのようになっていくのだろうか。

「握手会などの接触系ビジネスは現状維持で、今後もなくならないと思いますし、それはそれでスタンスが特化していて良いと思います。一方で、私たちのように、アイドルに限定をせず、長期的な視野で、ライブアーティストとして、活動の幅をひろげていくスタンス。大きく二極化していくと思います」
(取材・文/鳥居美保 構成/ジグザグ)