AKB48発足以来、グループの衣装製作・スタイリング・ヘアメイクを手掛けてきたオサレカンパニー。そのスタッフは大規模なコンサート、劇場公演、番組収録などにヘアメイクとして帯同するだけではなく、時にアイドルの精神的なケアを担うこともある。アイドルにとって“もっとも距離の近い存在”として、メンバーから信頼を得ている、チーフヘアメイクアーティストの鈴木弘子さんに、アイドルメイクをする上でのこだわりや、メンバーたちとの接し方などを語ってもらった。

【写真】テクニックすごすぎ! オサレカンパニーの”アイドルメイク” プロセス

■10秒もない“スーパー早替え”のヘアメイクも「私たちがやらなければ誰がやる!」

ーーAKB48グループのヘアメイクをご担当されてどれくらいになりますか?
【鈴木弘子】今年で6年目になります。前職は美容師としてサロンで働いており、そこで声を掛けていただいてオサレカンパニーに入社しました。

ーーメイクはどうやって学んだのでしょうか?
【鈴木弘子】専門学校でも習いましたし、サロンでも少しやっていましたが、本格的にヘアメイクとして活動を始めたのは、オサレカンパニーに入社してからなので社内研修などで勉強しました。それと日常的な仕事から吸収していきましたね。

――これまでAKB48グループの仕事のなかで、一番印象に残っている仕事は?
【鈴木弘子】今でも毎日が新鮮で印象深い仕事が多いのですが、やはりメンバーさんの卒業公演は毎回とても印象に残っています。「最後だからこうしたい」という思いをすべて叶えてあげたいけど、ヘアメイクの時間が10秒もなく(笑)、そういう“スーパー早替え”は特にやりがいもありますし、印象に残っていますね。最近だと、指原莉乃さんの卒業公演。当日は今までの感謝の気持ちも込めて「私たちがやらなければ誰がやる!」という使命感に燃えていました。

ーーAKB48グループには、セルフプロデュース能力が高いメンバーも多いですよね。求められるレベルも、高そうだなと。メンバーのニーズにはすべて応えるんでしょうか。
【鈴木弘子】基本すべて応えます。でも女の子なので、その日によって気分で変わることもあります。そんなときは、その子がもう少しテンションを上げたいというなら、「アップにしてみたら?」と提案したり、ツインテールにして雰囲気を変えたり、メンバーと相談しながらヘアとメイクを変えて「これもいいね」というスタイルの幅を広げていく感じです。落ち込んでいる子がいたら、ステージに出られるまで気持ちを持っていく。ヘアメイクはメンバーさんとの距離が特に近いので、支えになるのなら少しでも力になりたいと考えています。

■「髪型だけは絶対に崩さない」アイドルとしての“美しさ”にこだわる

ーーステージに立つメンバーのヘアメイクを見ると、崩れないということには相当こだわっていらっしゃるんだろうなと思います。
【鈴木弘子】汗が流れて多少メイクが崩れるのは、その子の“一生懸命さ”が伝わりますし、汗で火照った顔も素敵ですよね。でもそれにあわせて髪が乱れたら、衣装ともあわなくなり、シルエットとして美しさに欠けるんです。だからこそ、髪型だけは絶対に崩さない。例えば、ただの巻き髪にしても、逆毛を立てたり、スプレーで固めたり、色々なところに細工が入っています。決してテレビには映らないですけど、そのテクニックに関してオサレカンパニーの社員は相当な手練れだと思います(笑)。

ーー新人の方にまずメイクでどんなことを教えるんですか?
【鈴木弘子】新しいメンバーさんは最初にプロフィール写真を撮影するのですが、メイク慣れしていない時期なので、スキンケアから教えていきます。撮影が始まる1時間前に現場に入ってもらい、使う順番やアイテムなどを説明させていただいています。まずは研究生公演に向けて、徐々にステップアップしていくようにしています。

――研究生のヘアメイク、具体的にどう違うんでしょうか。
【鈴木弘子】最初、研究生さんはストレートの髪型が多いので、ストレートを活かしたスタイルがベースになります。ストレートベースの下ろし髪、ポニーテール、ツインテールだけでいかにかわいく見せるかが大事になります。

――最初の頃メイクの知識がなかった子も、数年後には見違えるようになっていたりするわけですね。
【鈴木弘子】メンバーさんの成長を見届けるというのも、この仕事の醍醐味ですね。研究生さんは個性を出す前段階としてヘアメイクの基礎をしっかり教え、選抜メンバーさんは個性を尊重しながら見せ方をサポートしていく、そんなスタンスでお手伝いさせていただいています。

■メンバーに母性のような愛情注ぐ、「彼女たちの存在がやりがいです」

ーーこれだけたくさんのメンバーがいると、自分のこだわりをきちんと持っている子も多そうですね。
【鈴木弘子】AKB48グループのメンバーさんは個性が輝いている方ばかりで、プロ意識もすごく高いので、一人ひとりにあわせたへアメイクを常に意識しています。彼女たちが万全な状態でパフォーマンスできるよう、できる限りのことをしています。

――メンバーの好みと実際に似合うものが一致しないこともあると思うんですが、そういうときはどうするんですか?
【鈴木弘子】そういう場合は相手を尊重しつつ、「この色を足してあげるともっと似合うよ?」と、よりかわいくなるための提案をします。私たちの提案を受け入れてくれるのも、普段から信頼関係を築いているからこそだと思っています。

ーー信頼関係を作るために実行していることはありますか?
【鈴木弘子】頻繁にメンバーさんに接していると、お互いの性格がわかってくるので、普段から何気ないコミュニケーションを取ることが大事だと思います。メイク中はたわいもない世間話をしています。会話の中でその子がどんなものが好きで、どういうことをしているのか、何気なく話してくれた内容でも、覚えて次ぎ会う時にもお話ししたり、好みがあればそれをさり気なく反映しておくようにしています。そういう積み重ねが、信頼関係に繋がっていくのかもしれないです。その全ては前職の美容師時代に培ったものが生きているのかもしれないですね。

ーー今回お話を聞いて、みなさんが愛情を持ってメンバー一人ひとりと向き合っていることが非常に伝わりました。
【鈴木弘子】愛情はすごくあります。もう母性に近いかも。みなさん我が子のようにかわいいです(笑)。メンバーさんがステージで活躍する姿を見るのが何よりうれしいですし、やりがいです。
(文:佐久間裕子)