「黄金の3年」。参院選(6月22日公示―7月10日投開票)が近づくにつれ、政界でよく使われるようになった言葉だ。衆院選は昨秋だったから、岸田文雄首相が解散しなければ2025年秋までない。次期参院選も25年夏だ。まるまる3年も大きな国政選挙がないため、岸田首相が今度の参院選に勝てば、自身がやりたい政策を存分にできる。「黄金」と呼ぶゆえんだ。

 確かに、このままなら自民党の勝利は固いように見える。15日に閉会した通常国会の最終盤で、立憲民主党は泉健太代表の最終判断で内閣不信任決議案を衆院に提出したが、日本維新の会と国民民主党は否決に回り、野党の分断ぶりを際立たせた。参院選の勝敗の鍵を握る32の1人区で、与野党の事実上の一騎打ちに持ち込めたのは11にとどまるなど、共闘も十分に実現できなかった。

 内閣支持率は60%前後と高く、自民党の支持率も40%台を維持する。かつて同党の青木幹雄元参院議員会長は、「選挙に勝つには二つの合計で50以上が必要だ」と説いたが、岸田政権は100を超えている。「青木率」に基づくなら、黄金の3年は目前だ。

 ▽岸田首相も故事に習うか

 ところが、永田町の読みはもっと先を行く。「黄金の3年などあり得ない」(自民党関係者)という。岸田首相は「1、2年で解散する」というのだ。

 過去をひもとくと、01年参院選に圧勝した当時の小泉純一郎首相は、3年後の衆院任期満了を待たず、03年に解散した。04年参院選で先の青木氏は、それこそ「勝てば黄金の3年が来る」と訴えたが、小泉氏は翌年に再び解散した。安倍晋三元首相もそうだ。12年末に政権奪取し、13年参院選で大勝したのもつかの間、わずか1年余り後に衆院解散に踏み切った。

 小泉、安倍両氏は「早期解散・勝利」の図式で政治力を蓄え、党総裁選も乗り切って長期政権につなげた。人事を断行し、霞ケ関も入れ替えて政権基盤を固めていった。岸田首相も長期政権を目指すなら、この故事に習うという見立てだ。

 23年には一世一代のG7広島サミットがあり、24年秋には党総裁選が待っている。ならば一連の政治日程を絡めて、自身に最も有利な解散時期を探るだろうし、今回の参院選後の人事でも、そこまでを見据えた必勝の布陣を練るだろう。

 政権の軸はどうするのか。安倍氏には配慮を続けるのか。菅義偉前首相は取り込むのか。林芳正外相や茂木敏充党幹事長ら「ポスト岸田」候補の処遇はどうするのか。

 4月以降、首相は党内実力者らとの会食を繰り返し、安倍、菅両氏もそれぞれが会合を重ねてきた。既に党内駆け引きは始まっているのだ。

 ▽実は選挙戦の課題は山積み

 ここで改めて気付くのは野党の存在感の薄さだ。怖さを感じさせないからこそ、政権内では早くも、参院選後の布陣や政局が関心事となる。

 だが、参院選で問われるべきことは多い。新型コロナウイルス対策や物価高対策はもちろん、経済政策や財政再建はどうするのか。ウクライナ危機や、中国・北朝鮮の脅威を受けた日本の外交・安全保障政策の在り方、少子高齢化、都市と地方の格差、原発問題も大きな課題だ。

 しかし、野党は迫力を欠き、争点もぼやけがち。このままなら、有権者不在の参院選になりかねない。考えようによっては、選挙は有権者が政党や政治家を鍛える、数少ない機会だ。日本の未来にとって、こんな状況がいいわけがない。現状を変えたいなら、政治が面白くないと考えるなら、投票に行くしかない。(共同通信編集委員=内田恭司)