自民党の安倍晋三元首相は、日銀による市場を通じた国債の買い入れを巡り「日銀は政府の子会社だ」と発言した。立憲民主党など野党は日銀の独立性、中立性の観点から問題視し、追及を強める構え。識者から批判が出る可能性もある。政府、自民党は夏の参院選が迫る中、具体的な論評を避け、事態の早期沈静化を図りたい考えだ。

 安倍氏の発言は9日、大分市での会合で飛び出した。「1千兆円ある(政府の)借金の半分は、日銀が買っている」と説明。「日銀は政府の子会社だ。60年の(返済)満期が来たら借り換えても構わない。心配する必要はない」と主張した。

 安倍政権が進めた「アベノミクス」以降の経済政策を巡っては、日銀による大量の国債買い入れに依存して国の借金を膨らませる手法に対し、財政規律を重視する識者が批判してきた。安倍氏の発言は、政府が日銀を従属させる関係を積極的に唱えたもので、財政の信認を揺るがしかねないとの懸念が強まりそうだ。

 立民の西村智奈美幹事長は10日の記者会見で「アベノミクスと称して異次元の金融緩和を主導した結果、今の財政、経済状況がある」と指摘。「とうとう本音が出た」とも語り、国会などの場でただす意向を示した。

 松野博一官房長官は会見で「日銀法上、日銀の通貨、金融の調節における自主性は尊重されなければならないとされている。政府としては法律の規定通りと認識している」と述べるにとどめた。

 自民党の茂木敏充幹事長は会見で、発言は承知していないとした上で「金融政策は日銀の自主性、独立性に委ねられる」と強調。同時に「政府、与党としても、あるべき経済の姿の議論は必要ではないか」と語った。

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 日銀の国債買い入れを巡る安倍晋三元首相の発言要旨は次の通り。

 日本人は真面目だから、経済対策を実施すると「日本はたくさん借金しているが大丈夫か」と心配する人がいる。政府の財政を家計に例える人がいるが、大きな違いが一つある。政府は日銀と共にお金を発行できることだ。家計でそれを行ったら偽札になる。

 1千兆円ある(政府の)借金の半分は、日銀が買っている。日銀は政府の子会社だ。60年の(返済)満期が来たら借り換えても構わない。何回だって借り換えていい。

 世界中の中央銀行と政府の関係はそうなっている。心配する必要はない。日本の国債は今でも信認されている。金利を低い状況に保てている。自信を持ってもらって構わない。