東京都杉並区がインターネットを利用して始めた美術館「スギナミ・ウェブ・ミュージアム」に、世界的な版画家、棟方志功の作品が加わった。同区によると、棟方作品をバーチャルの美術館で展示するのは初めての試みだ。閲覧無料、9月30日まで。

 棟方は戦時中に疎開した富山県南砺市から1951年に同区に移り、75年に72歳で亡くなるまで居を構えた。孫で、棟方研究家でもある石井頼子さん(64)が展示を監修。「棟方志功2021プロローグ」と題し、代表作や油絵、挿絵など約180点を四つの“展示室”に分けて紹介している。

 同ミュージアムは、実際に美術館を訪れているかのような感覚を味わえるパノラマ画面を使用する。スクロールしながら展示品を見て回り、見たい作品をクリックすれば拡大表示される。

 サイトの制作と運営にあたるNPO法人TFF(同区)によると、新型コロナウイルス禍の中で自宅で落ち着いて鑑賞できると人気を集めており、欧州からも閲覧されているという。

 展示作は1万点を超える作品から、石井さんとTFFのスタッフが選んだ。棟方の名を世界に広めた代表作「二菩薩釈迦十大弟子」には、解説動画も付く。謡曲「善知鳥」を題材に全31点から成る「善知鳥版画巻」や、展覧会ではあまり公開されたことがない「ホイットマン詩集抜粋の柵」も。

 「初めて接する人が興味を持ちやすいラインアップにした」と石井さん。棟方には泥くさい固定的なイメージが出来上がってしまっていたといい「作品を純粋に味わうきっかけにしてほしい」と話している。